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出会

暗闇の中に俺はいる。


ここには光がなければ時間も無い。


全ては、「無」に帰していくのか。  それともここから始まるのか。


俺の周りで、泡が現れ始めた。 出来ては消えていく。 「無」に帰していく。


俺は死んだのか。






そのとき、無数の泡がいっせいに膨張し大爆発を起こした。

ものすごい光が視界を奪う。なのに音が無い。爆風も無い。

空気が無いのか、それは不思議な体験だった。


爆発した高温の球は急速に膨張をはじめた。



空間が生まれ、チリが出来始め、星が生まれた。


銀河が、そして太陽が、そして母なる地球が生まれた。



地球に雨が降り、海が出来て、植物が誕生した。


海の中にひっそりと生命が誕生した。


長いときが流れ、人間が誕生した。




俺の頭の中に大容量の記憶が洪水のように流れてくる。

そして、東京である少年が生を受けたところでそれは終わった。

この赤ん坊は一体誰だ?







目を開けるとそこは簡易医療ステーションの療養カプセルの中だった。

黄色い液体の中に俺は浮かんでいた。


「目がさめたのね」


療養液が排出されて、カプセルが開き見知らぬ少女が声をかけてきた。

少女は、背中まである長いまっすぐな黒髪に大きな黒い目をしていた。

白いワンピースにつばの大きい白い帽子と言う野原の少女のような格好をしていた。


「あ、あの、あなたは・・・」


言いかけてビックリした。

いきなり少女の大きな瞳がさらに見開かれ、漆黒だった瞳が真っ白に色あせてしまったのだ。

まるでフリーズしたかのようにまったく動かなくなった。

その刹那――――――


「くっ・・・!!」


頭が割れるほど痛くなった。そして、先ほどのように大容量の記憶が流れ込んできた。

ある少女の人生の記憶が。



――――― しばしの空白の時間が終わった。

少女と俺は同時に口を動かしていた。


「サラ。」

「尚人さん。」


「えっ?」

「なんだそれ?」


反応まで同じタイミングだった。


「何で私の名前を知ってるの?」


サラが俺をまじまじと見つめてきた。 しっかり見るとかなりの美少女だった。


「いや、その、信じて貰えないかも知れないけど君の過去が見えたんだ。」


「ふーん。そっか。」


以外にもサラの反応はそっけなかった。


「えっ? 信じてくれるの? っていうか、尚人って何?」


「尚人さんは過去が見えるらしいけど、私にはね、未来が見えるの。未来で誰かがあなたの事をそう呼んでいたの。」


「あっそっかあ。」


今度は俺がそっけなく答えた。

ところが、疑問がひとつ浮かんだ。


「待って、じゃあそれが俺の名前ってこと?」


「あなたは自分の名前も知らないの?」


「いや、俺に関する過去の記憶が全部消し去られているんだよ。」


「そうなんだ。なんか似てるよね。 過去が見えるのに記憶が無いあなたと、未来が見えるのにそう遠くない間に人生が終わる私。」


「えっ!?」


耳を疑った。

サラは自分が死ぬという事をあっさりと言ってのけたのだ。


「・・・・怖くないの?」


「うん。 でもちょっと後悔はあるかな。まだまだやってみたい事たくさんあったし。」


サラの深い瞳が、少し陰った。

どうにかしてこのを安心させてやりたいと思った。


「同じじゃないよ・・・」


「え?」


「過去は、過ぎ去ってしまった過去は取り戻せないけど、未来は変えられる!!!」


「本当?」


真剣なまなざしだった。

多少ギくっとしたが、サラを不安にさせてはいけないと思った。


「当たり前だろ。」


サラの顔がぱあっと明るくなった。  よかった。

だが、すぐに顔を赤らめて下を向いてしまった。

どうしたのだろう。何か木に触る事でもしたかなと思っていたら。




「うわっ!!!!!!」




裸だったの忘れてた・・・・・・・。



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