思惑
一連の騒動から一週間。首都東京は、驚くべきスピードで復興を遂げていた。
それは、学校でも同じことだった。
「もう復旧したのかよー。」
「速すぎじゃねー?」
「ちくしょー。まだゲーム終わってなかったのに。」
区立渋谷第8中学校の4年生は、この復旧を喜んではいないらしい。
一方仲良し五人組は尚人のクラス(4年3組)でTalkingしていた。
「俺のクラスは欠席ナシだった。」
「俺と剛希のクラスも同じく。」
そう翔太がいうと、最後に良平が言った。
「実は・・・俺のクラスでは高橋と、桐山が欠席してるんだ。」
「それ本当か?」
「ああ。高橋絵里は単なる風邪だって言ってたけど、桐山里美は家族全員が行方不明になっちまったらしい。」
「いつの事だよ?」
翔太が聞く。
「3日前だって噂だ。その日を境にあいつの家と連絡が取れなくなったらしい。」
最後に俺が口を開く。
「4年3組でもいるんだ。欠席者。」
「誰?」
「山口瞳と山本博史。両方とも原因不明の失踪をしている。」
「お前はどう思ってんだ?」
俺は剛希に答える。
「きっと関係あるんだと思う。一連の騒動と何か繋がってるんだ。」
「根拠は?」とは聞いてこなかった。きっとみんなもそう感じているんだろう。
「どんな関係だろう。」
「調べるしかないっしょ。」
「おし。やってみっか。」
雅弘の単純明快かつ、最高の提案に異議を唱えるものはいなかった。
「ここだな。」
「間違いない。表札が 桐山 だ。」
「ピーンポーン。」
「馬鹿。いないんだから出るわけなかろうが。」
「分かってるけど、一応エチケットだよ。」
「あっそ。」
というわけで俺達は桐山里美宅へやってきた。
「さーてどうしたもんか。」
「近所の方に聞き込みだ。30分後にここに集合!」
「はははー!俺の情報網をなめんなー!!」
そういいつつ翔太は去っていった。その後他のメンバーも個々に解散していった。
「遅いなー。情報網マンは。」
いつの間にそんなあだ名になったのか。
情報網マン以外の4人は待ちくたびれていた。
「悪い悪い。」
「遅すぎ。20分オーバーだぞ。」
「ところで君達の成果は?」
情報網マンが自信満々に言うと、誰も何も言えなくなってしまった。
「ははーん。たいした情報ナシか?」
「そういうお前はどうなんだよ。」
「聞いて驚くな。」
その後の翔太の話は心底驚かされるものだった。なんと政府の貨物車が桐山家を連れ去ったというのだ。
「なぜだ?なぜ連れ去る必要があるんだ?」
尚人の頭にある考えが浮かんだ。しかし口に出さなかった。それはあまりにも馬鹿げていて、残酷な話だったから。
「ロシアへの貢物か?」
意外にも良平がその言葉を発した。みんなの顔が青ざめていく。
「だとしたら、日本が不利な条件ばかりだよな。ロシアから何の見返りがあるってんだ?」
「社会的な立場とか。」
俺の言葉にみんなうなずく。
「一体何人が奴隷になるんだ?」
「分からない。だけど、捕まらないように逃げなきゃならない。」
「いつまで?」
「とりあえずロシア軍が攻め込んでくる日まで。それまでに奴隷を用意しなくちゃならないはずだから。」
「10月3日だ。」
俺の情報から計算した日数を告げる。
「ってことはあと11日間は政府の人間との鬼ごっこだな。」
雅弘がにやりと笑う
「鬼ごっこ・・・ふっ、確かにな。」
そうだ。これは鬼ごっこだ。俺達の運命がかかった恐怖のデスマッチの幕開けだ。
その日の夕焼けは俺達にとって果てしなさをよりいっそう強く感じさせた。
リアル鬼〇っこ ぽくなってしまいました。
この後の展開はまったく違うストーリーですのでご安心を。