推測
9月16日 午後3時
五人はすでに合流していた。
(因みに前回ラストの言葉は翔太のものである。真の黒幕とかではないので、ご心配なくw)
はっきりいって、俺と雅弘はドキドキしていた。
良平の父親について、どう話せばよいのか分からなかったのである。
「・・・やっぱり言ったほうがいいのかな・・・」
「・・・そんなのあたりまえだろ・・・」
「・・・でも、言いにくいな・・・」
二人がこそこそ話していると
「どうしたんだよ?」
案の定翔太が問い掛けてきた。
「えっ!? な、なんでもないよ?」
まずい! 緊張のあまり声が裏返っちまった!
「あー分かった!お前らかくしごとしてるな?」
「なにい?俺らに隠し事とはいい度胸じゃねえか」
翔太と良平がふざけた調子で畳み掛けてくる。
「・・・そうだな。」
「隠し事なんて無いほうがいいよな。」
「よしっ!じゃあ今日の5時、駅前のホムメに集合!!」
俺は思いっきり良く、さらにできるだけ元気に言った。
ホムメというのは「ホームメイドハンバーガー」の略である。
その渋谷駅前店に五人は集結していた。
「じゃあ・・・」
ごくん。とツバを飲み込む音がするような気がした。
「良平落ち着いて聞いてくれ・・・」
「えっ!? 俺!?」
良平は面食らった様子で俺を見ている。
「お前の親父さんな・・・戦死したらしい。」
しばしの沈黙が続いた。誰もが俺の言葉を信じられない、という顔をしている。
その様子を見た周りの客も、少しざわついた。
「・・・・・・そっ・・・か・・・。」
良平は平然を装って言う。
でも顔はもうぐしゃぐしゃだ。 俺も・・・もうだめだ。
俺達は中学生なのに、みんなして泣いている。情けない。
良平が涙を服の袖でぬぐって言う。
「でも、いいんだ。父さんいつ死ぬか分からないってさんざん聞かされてたし。」
「すまん。」
「なんで尚人が謝るんだよ。」
「・・・」
俺は何も言う事が出来なかった。
「きっと親父さん名誉ある戦死だったぞ。」
雅弘が若干不謹慎な事を言う。 こいつも泣いてるぞ。不良のクセに。
「ありがとう。」
良平の目は涙で光っているが、顔は驚くほど穏やかだった。
みんなが少し落ち着いてそれぞれのメニューをオーダーし始めたとき。
「こんなときに悪いけど、みんなに言っておきたい事がもうひとつある。」
俺はそう言った。
「なんだ?」
「ああ。じつは昨日のドラゴンはロシアからの宣戦布告かもしれない。」
「センセンフコクって戦争やるぞーっていう?」
「そうだ。」
「根拠は?」
剛希が短くも正確な質問をしてくる。
「まず1つ目。2136年にむすばれた協定は?」
「2136(兄さんむっつり)日米経済相互補助協定!」
翔太が陽気に言う。無論、むっつりなんて言葉が表すようにこの覚え方は俺達のオリジナルである。
「よし。そして、いま米露間が第二次冷戦下である事も知っているな?」
「ああ。」
「ロシア帝国は配下にヨーロッパ連合を従えている。」
「へえ。」
へえ。じゃねえ。このまえ歴史でやったろうが!!
「対するアメリカは日本や中国、インドと同盟を組んでいる。」
「つまり日本をロシアの舎弟にしようってんだな?」
ふむ。舎弟とは実に不良らしい考えだ。
「でもそんなおおっぴらに戦争は起こせないんじゃないのか?」
剛希はさすがに頭がいい。
「ああ。きっとロシアは国連を脱退するだろうな。」
「ロシアには国連軍とやりあうだけの戦力があるのか?」
「ロシアの配下にある国々は国連を脱退するだろう。そして、残った国々はほとんどアメリカ側ってわけだ。」
「そういうことか。」
剛希も納得したようだ。
「事実上はアメリカとロシアの全面戦争になるってワケか。」
「そういうことだ。」
「じゃあ、ここも相当危ないんじゃないのか?」
今まで黙っていた良平が言う。
俺は彼にうなずき言った。
「そこが、問題なんだ。」