憎悪
「ごほっ、ごほっ」
粉塵でのどが痛い。
「うう、ぐうっ・・・」
周りからうめき声が聞こえる。
オレはかすむ目を開けて周りを見渡す。
「こ・・・これが・・東・・・・京?」
オレが見たのは瓦礫の山と、それに横たわる無残な死体の世界だった。
「コイツが・・・コイツがっ!!」
そう叫ぼうとしたものの、それは声にならなかった。
オレは恐怖と憎しみが入り混じったまなざしで、ドラゴンをにらんだ。
あいつは、それを気にも留めない様子で受け止めた。
ドラゴンは太陽を背にしていたから、そのシルエットは大きく、偉大で、より邪悪に見えた。
オレはアイツに何か言ってやりたかったけど・・・ちくしょうっ!
もう・・・意識が・・・・・
そうしてオレは再び目を閉じた。
「ガラガラガラ・・・」
俺は目を覚ました。騒々しい朝だ。
「さっきから医療用のキャスターとかがたくさん通ってるな。」
俺の周りには怪我人がたくさん寝かされている。
「緊急の路上医療ステーションってとこか・・・。」
「あれ?パソコンは?」
そういえば持っていたはずのパソコンが無くなっている。そこら辺の研修医に聞いてみるか。
「っーーーーー!!!」
立とうとした瞬間後頭部に激痛が走る。まだ十分に回復してね-な。
やっとの事で立ち上がり、研修医の元へ駆け寄る。
「すみません。オレのパソコ・・・」
「はいはい、仕事途中だから邪魔しないでくれ、って君怪我してるじゃないか!」
ダメだ取り合ってくれない。いいさ自分で見つけるから。
「君、待ちなさい。」
うるさいなあ。と思って、俺は全力DASHした。
「あっ!待ちなさい!!」
俺に追いつけるわけ無いだろ!陸上の全国大会に出てるんだからw
―――頭が痛むけど何とか、ハア、ふりきったぜ、ハア
「あっ雅!!」
オレの視線の先には雅弘がいた。そして驚くべき事に奴の腕の中にはオレのパソコンが!!
って言うかオレアイツらの事忘れてたな・・・。
「おっ、尚人じゃんか。」
じゃんか。って結構かるいな。
「ああ、おまえは大丈夫か?」
「俺はいいんだけど、あとの三人が見つからなくてさ。あっ、これおまえんだろ。」
「おおっありがとう。でも三人が心配だな。」
「まあ、うまくやっていけるだろ。もう子供じゃないんだし。」
俺達まだ子供だよな と思いつつ一応相槌を打っておいた。
「皆さんおはよう御座います。朝のニュースの時間です。」
突然、街角に巨大な飛行型モニターからニュースが流れ始めた。
俺達はこんな状態だってのに、なんで同じ東京でテレビなんかやってられるんだよ。ちっ
「昨日、東京上空に未確認生物が飛来し、街は多大なる損害を受けました。」
そんな言葉で片付けていいのかよ、この実態を。
モニターには悲しそうな作り顔(オレにそう見えるだけだ)を浮かべる内閣総理大臣、飯沼 得一が
うつっている。
ふん、いい気なもんだな。あいつには何の被害も無いってワケだ。同じ東京でも。
テレビでは昨日の戦死者をテロップで流している。
「あんなに死んだのか・・・。」
雅弘が沈鬱な面持ちでつぶやく。
「以上の方のご冥福をお祈りいたします。」
アナウンサーはそういい終えると、すぐに笑顔に切り替え別の話題にうつった。
「あのアナウンサーって結構かわいいよな。な?」
ほんとに雅は・・・
「そんな事より俺、引っかかるんだよな。」
「なにが?」
「もしかしたらだよ?もしかしたらだけど」
「なんなんだよ!」
「あの戦死者のテロップの中に”塩谷 順平”っていたろ?」
「それがどうし・・・ああっ! ま・・まさか・・・・」
海辺w