前略・道標
鉱歴882年12月25日。
世界の約2割を消滅させる大事故が発生した。
原因は未だ判明せず、ただの一瞬のうちに西域都市・キウトを中心に西域都市は陸地をも消失。
故にその詳細な規模さえ、事故より4年が経った今も把握しきれていない。
——歴史上それを、『キウト事故』と称す。
キウトを含む西域都市の消滅は世界の均衡を大きく歪ませた。世界人口の大幅な減少は元より、西域都市そのものが無くなったことにより権力のバランスは崩れ、都市間の争いは絶えなくなった。
そして今日、鉱歴888年12月25をもってキウト事故関連の大規模な調査は打ち切られた。世界はもはや、“そんな事”をしている場合では無くなった。事故以来続いた世界中の争いにより、更に世界人口は減少。
『このままでは人類が滅びる』、と世の知識人は総じて述べた。結果として各都市間で停戦協定が結ばれ、世界は上辺だけとはいえ、再び均衡を保つ事となった。
そしてこの争いの原因とも言えるケウト事故に対しては、世界共通の『不可侵領域』となり、謎は謎のまま闇に葬られる事となったのだ。
「——君はそれでも、この世界の真実を知りたいと思うのかい?」
そう、闇の中に消えた筈なのだ。