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第1話:マスター、配信する

「――今日も冒険者ゼロか……」




 Fランクダンジョンのマスターである如月奏(きさらぎかなた)は空中に浮かび上がったモニターを見て、ため息を吐いていた。




「残りDPも10……。何か手を打たないとまずいよね……」




 ダンジョンは冒険者が来てくれないと成り立たない。

 その理由はダンジョン内で生活をするためには、DP(ダンジョンポイント)を稼がないといけないことにあった。


 何をするにもDPが消費される。

 日常品を出すことから、ダンジョンを強化することまで……。


 そして、DPを取得する方法は主に冒険者に依存していた。



●ダンジョンに入った冒険者数(一人あたり1DP)

●冒険者の滞在時間(レベル×時間×1DP)

●冒険者を倒す(レベル×10DP)

●金と交換する(200円で1DP)



 ダンジョンマスターが金を得る方法は、基本的に倒した冒険者の装備売却費用だった。

 つまり、冒険者が来てくれないと話にもならないのだ。




「何とかする方法はないかな……」




 でも、思いつくことは全て行っていた。



 ダンジョン前で呼び込み → そもそも、人が来なくて撃沈。

 町へ呼び込み → Fランクといった瞬間に聞いてくれる人がいなくて撃沈。



 結果は全てにおいて惨敗。



 一体他のダンジョンではどうしているのだろう……、と調べてみる。

 すると、Sランクダンジョン攻略配信、というものが始まるところだった。




「ダンジョン配信か……」




 現代にダンジョンが現れ、人々が魔法やスキルを使えるようになってから早百年。

 ダンジョンは冒険者が一攫千金を狙う場所であるとともに、人々の娯楽施設としても広まっていった。


 そして、今では配信のためにダンジョンに潜る、配信系冒険者がいるほどだった。

 その広告収益や投げ銭は時として、ダンジョン攻略での収入を上回る、といわれるほど。




「確かにダンジョンマスターをやりながらでも配信は行える……。それにマスターで配信をしてる人って少なくないかな?」




 モニターを新しく出して、『ダンジョンマスター 配信者』で検索してみる。

 すると、検索にヒットした人物は一人だけ。

 その人物もほとんど配信を行っていないようだった。



 生存を賭けて勝負するにはここしかない。




「でも、人前に出ないといけないのか……」




 お世辞にも僕は人付き合いが得意ではない。

 知らない人を前にすると、緊張して言葉が出なくなるほどだった。



 でも、配信だとあくまでも向かい合っているのはカメラ。


 ……いや、ダンジョンスキルを使えば、カメラすら必要ない。

 ダンジョン内だと、好きなところを録画配信できるという、ダンジョンマスターの特権。

 これを利用して、配信動画を作れば――。




「……いけるかもしれない。失敗してもDPは減らないし――」




 覚悟を決めると両手を握りしめて気合いを入れる。



 少しでも収入の足しになってくれたら……。

 あわよくば冒険者が来てくれるようになったら……。




◇◇◇




 配信の準備はつつがなく進んでいた。

 まずは魔物一匹すらいなかったダンジョンには、スライムを召喚しておいた。




―――――――――――――――――――――

レベル:1 種族:スライム(ランク:F)

HP:5/5 MP:0/0

筋力:1 耐久:1 魔力:1 精神:1 速度:1

スキル:なし

経験値:1 お金:100円

―――――――――――――――――――――




 召喚時にモニターに現れたステータスはこんな感じだった。


 初心者冒険者でも一撃で倒せるレベル……。

 しかし、なんといっても召喚DPが格安。


 全て込み込みでなんと、消費DPが1で済んでしまうのだ。

 弱小ダンジョンの頼れる味方。

 ある程度、魔物の数がいないとやはりダンジョンとして映えないので、DPが少ないマスターはこうやって、スライムを召喚して、頭数を増やすのだった。


 もちろん、スライムで冒険者討伐なんてことは絶対にできない。

 だから、本当に数稼ぎでしかなかったのだ。




「魔物がいて、配信準備もできて……、これで大丈夫だよね?」




 僕自身も服装をそれらしい格好にしている。

 普段着の上から黒のコート。武器は木の杖。




―――――――――――――――――――――

如月奏(きさらぎかなた)

レベル:1 性別:男 職業:ダンジョンマスター(ランク:F)

HP:10/10 MP:20/20

筋力:1 耐久:1 魔力:3 精神:2 速度:2

スキル:【ダンジョンステータス(レベル:1)】【ダンジョン創造(レベル:1)】【ダンジョン把握(レベル:1)】【初級魔法(レベル:1)】

所持金:0円 所持DP:9

―――――――――――――――――――――




 僕自身のステータスもスライムのそれとほとんど大差なかった。

 ダンジョンマスターとしては最弱、といっても過言ではないだろう。


 違う点といえば、初級の魔法が使えること。

 あとはマスタースキルが使える程度だった。




「とにかく準備は整ったよね。よし、配信を始めよう」




 もう一度大きく深呼吸をすると、ダンジョン紹介の配信を始めていた。




◇◇◇




「つ、疲れた……」




 配信を終えた僕は、迷うことなくベッドに飛び込んでいた。


 このまま、眠りについてしまいたい欲望に駆られる。

 でも、辛うじて踏みとどまっていた。




「視聴者はどうなってるかな……?」




 仰向けになり、空中に浮かぶモニターを操作して、配信の視聴者を見る。



 視聴者数:1



 うん、最初はこんなものだよね?



 収益化ができるようになるにはお気に入り数と視聴時間、という制約がある。

 先は長いけどまだまだ頑張ろう!


 大きくあくびをすると、モニターを消してそのまま眠りについていた。


 だからこそ僕は気づかなかった。

 深夜にちょっとずつ動画は拡散されていき、朝にはとんでもない視聴者数になっていることを――。

【作者からのお願いになります】


本作をお読みいただきありがとうございます。


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『黒衣の聖騎士〜邪神の加護を受けし少年、聖女の騎士となる〜』

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