表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/164

ごーしょー巻き巻きごーしょー巻き巻き囲って脅して......ッベ、コレ、マジヤッベ......

ポイント、ブクマ有難う御座います。


ひっさびさにランキング歴史カテゴリーで五位以内に入る奇跡が起きました。マジかって感じです。重ねて御礼申し上げます。


暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。

 真新しくも殺風景な一室に数多くの人々が集っていた。殺気立って相対する彼等の中心にいるのは二人の男。毅然かつ憮然とした二十代程の外見を持つ若年と、顔を真っ赤に染め上げた三十代程の外見を持つ中年だった。


 口を開いたのは若人。


「若輩ゆえに殊更に勤めて心情抑えるように努めますが多少は許されよ」


 言葉とは裏腹、口から淡々と垂れ流れる怒りは漂う紫炎の様。


「先ず持って言わせて頂くが大樹と呼ばれる様な御方が恥知らずな小細工を弄している時点で驚天動地というもの。その内容が女を使って方々にコソコソと我等の悪評を垂れ流すような女々しい行いとは言葉もありません」


 若人の瞳から轟々と燃え吹き上がる憤怒。


「そも貴方は取次役の自覚はあるのですか。父としても臣としても斯様に状況が最悪になるまで躾もせず放置するのは如何な事なのです。美作守、ご覧の通り此方としても斯様にコケにされれば家臣の抑えがききませぬ。大樹が為にこそ落とし前を付けて頂けねば我等としても引くに引けませんぞ」


 誰も止められない。


「……ッな、な、な、ッフゥゥゥゥなる程。ッスゥゥ……では何と言上仕るべきかな義重殿ッ!!」

「声を荒げ為さるな美作守殿。それに同じ公方様の臣下として言わせてもらうが人の諱を軽々と口に出されるのも如何なものかと思いますぞ。貴方程の役職にある方が御立場も考えず左様な次第では、貴方を任じた主人の品性と知性までもが疑われましょう」


 対極の怒り方、両方とも激昂も激昂してこれ以上ない程に血が頭へと昂り思考回路が四散していた。このままなら物理的に血管までも四散する事だろう。


 一見、憤怒に口を滑らせ淡々と怒りを発するのが三好左京大輔義重。叔父の養子となり三好家惣領を継いだ齢十六(15)にして余りにも大人びた風貌を持ち、実父である名前読めねぇよ個人的TOP3に入る武将十河一存に似て屈強たる体躯を持つ青年だ。


 ……初見時は「トウカワカズゾン?いや絶対違うな」って呟きました。ええ。一益と存じ上げるが頭に浮かんだから。


「ッ!ッ!ック!小童がァッ!!」


 怒り相応に、既に自身がどうしようも無く激昂している事以外は全く把握できていない言語。そう、言葉が詰まり喋れなくなる程に怒り散らかっている壮年の男が幕臣の進士美作守晴舎。


 この細身の男は公方の近習、そこまでは良いが同族から九郎賢光と言う三好修理大輔長慶の暗殺実行犯を出している。だと言うのに未だ幕府の中枢にある上に三好家の取次役という、公方と足利家の仲を取り持つ仕事を任された人物だ。


 尚、九郎賢光は三好修理大輔長慶との和睦派だったのだが、何故か実行犯として暗殺を失敗し自害している。加えて言えば進士美作守晴舎は大の三好嫌いで有名だった。


 まぁどう考えても暗殺の指示者だよねっていう輩である。それを思い出して当初は冷静に詫びだけ受け取り、己と家臣の怒りを収めようとしていた三好左京大輔義重は抑え効かずに。


「小童、ですか。そう言えば御義父上様を暗殺しようとした何処ぞの阿呆がいたそうですな。元服もまだで御座いましたが話を聞いてその杜撰ぶりに見下げ果てたものです。何でも実行者は公方様の近習の縁者でしたか?個人の怨恨という事で殺されかけた筈の御義父上様が執り成したのでしたな」


 青筋を額に咲かせていく進士美作守晴舎の顔に、三好左京大輔義重は開き切った瞳孔を向け固定する。平時ならば母譲りの顔だが怒りによって父譲りの威圧的な顔が開きかけた進士美作守晴舎の口を噤ませ。


「小僧故、存じ上げませぬが恥知らずにも存命との事。はてさて腹でも切った方が面目も立つでしょうに。如何様なツラか見てみたいものだ」


 ズッと進士美作守晴舎から視線を逸らさぬままにじり寄り。


「亡き御義父上様、実父、叔父上様方を侮辱した躾のなっていない阿呆供の首を責任者(公方)の謝罪と共に寄越せ。それで許してやるが全て揃えるまで此処から誰一人として出さんぞ」


 進士美作守晴舎が立ち上がる。


「公方様の謝罪!?訴えが有るとは聞いたがよりにもよって御所巻きか!!巫山戯るなよ悍ましき簒奪者ッ!!!」

「巫山戯続けたのは貴様らだろう!!」


 何方も忿怒迸らせて言う。そら長年の害意に晒され続けた挙句に亡き敬うべき先代達をコケにされた三好家と、幕府の立て直しを考え権力を欲する公方のために忠と心血を捧ぐ男の争いだ。


 始末に負えない。


 いや、本当にガチで。


 そして黙し睨み合う二人の間に無音の忿怒という紫電迸る。


 少なくとも都の上層部から見て権力の為に筋目だの何だのと諸々を気にする余裕が無い公方に対して筋を通してるのは三好家だ。進士美作守晴舎が何を言ったとしても幕府込みで恥にしかならない。だが故に謝罪など出来よう筈も無い。


 心情では無く幕府の存続、その価値たる権威さえ捨てる事になるからだ。


 だが対して三好左京大輔義重は激怒した家臣と己を鎮める最後通牒、謝罪が無ければ断固として引けない。


「さぁ公方様に申し伝えられい!!」


 三好左京大輔義重が屈強な体躯に並々ならぬ激情を添えて発せば部屋一つが鳴動する。進士美作守晴舎は顔面を屈辱と恥辱に激昂して紅蓮真紅と赤々に染めて立ち上がり乱暴な足音を立てて退室した。


 三好家の家臣団がその様に憤る。


 彼等と思いを同じくしながらも三好左京大輔義重は、何とか彼等を宥めて少々の時を過ごし将軍の御前に呼ばれたのだった。


 剛強たる体躯と英邁なる相貌を合わせた岩成主税助友通に用意させた、憤りと逼迫ぶりを知らせる為に武装させた近侍を引き連れ進んでいく。更には敢えて評定の間に入るだけゾロゾロと礼節の一切を無視して公方の前にドカリと腰を下ろしてみせる。


 相対する室町幕府十三代征夷大将軍、足利従三位中将義輝はいつもの如く左右に臣下を侍らせ白く整った顔立ちに黒い感情を浮かべていた。


「さて、やはり御所巻きか。清水寺への参詣の序でに訴訟を伝えると聞いていたが、まぁ大仰ぶりに察していたわ」


 将軍がうすら笑み口を開く。不愉快な程に至極畢竟に耳心地が良く、しかし落ちて地底に着いた心を諾々と溢れさせた様な声で。


「席を外しているが美作守(進士晴舎)から大まかな話は聞いた。世間話をする間でもない、単刀直入に言うが訴訟の全てを断る」


 三好家の全員から怒気が炸裂した。それは抑えて尚も漏れた残滓の様な物だったが、火薬庫の周りで花火をしてしまった事を今更ながら命の危機と共に察した幕府の全員が思わず太刀を強く握る。


 三好左京大輔義重は気にも止めず。


「公方様には納得頂けない様だ。まぁ、誰に生かされているかも分からず散々に我等をコケにしてきた貴方に期待などしていない。父上様や叔父上様方の悪評を垂らした程度と考え、我等の思いを理解する気も無いのは想定している。一度、頭を冷やしていただこう」


 畿内という天下を収める武家の棟梁とは言え若年たる男の言葉に幕府側の全員が身じろぎ一つ出来ない。


 当然だ。


 何か音を立てようものなら三好家の家臣が何をするか分かったものではない。岩成主税助友通などは逆巻く眉と髭を怒髪天と共に揺蕩わせながら、目を剥き血涙を滴らせ白い鋼の様な歯を噛み締め火山の様に体躯を鳴動させている。


 公方も、その臣下も何も出来なかった。


 だが冷静に考えればこれは余りに不味い状況だった。見た目は確りして見えるが三好左京大輔義重は若いのである。それは年齢としてもそうであるし主君という立場とても余りにも若い。そしてそんな彼を補佐するべき者達が怒りによって状況判断を誤っていたのである。


 いや確かに此の状況になったのは幕府の責任だ。偉大な先代が五人が亡くなり切羽詰まった三好家に対して今まで通りに此れ幸いと手を出した結果である。


 しかし三好家とて武家の棟梁たる公方を感情に任せて害し兼ねないこの状況に至ると言うのに、誰一人として最悪への準備をせずにいるのは控えめに言ってヤバい。ちなみに最悪とは剣豪将軍を殺して阿波公方を擁立出来なかった場合である。


 いや、言い換えれば三好家は暴発すれば将軍を殺す所まで来ていた。


 そこに唐突、襖が開かれる。


 現れたのは赤ら顔で抜身の脇差を握り白装束を纏った進士美作守晴舎。


「公方様!!此の晴舎ッ、三好の痴れ狗畜生めをのさばらせる事を許した罪。此の命を持って償わせて頂く!!」


 そう言うと脇差の柄と刃を力強く握り腹に突き刺し十自腹に切って、己の腹から溢れた臓腑を引っ掴み三好左京大輔義重目掛けて投げ付けた。


 ベチャと音を立てて落ちる腑。


 辟易と溜息。三好左京大輔義重にとっては何ら意味の無い決意、言ってしまえば唯の汚物に他ならない代物をチラリと見て茶番に口閉する。


「無念だッ!!代々足利家の御恩に奉公敵わぬ己が無能さが!!」


 そう言うと崩れ落ち事切れる。彼は京を公方の領地にしたかった。それは室町幕府の成立時から付き纏った将軍の脆弱な権力を補強する事で、室町幕府を立て直し足利と言う家を強固にする為に。


 謂わば中央集権を目指した最も足利従三位中将義輝の思惑に近い考えを持つ臣下だったのだ。だがその忠を持つ故にこそ視界が狭まり暴走した。


 いや敢えて言おう。


 幕府にトドメをさしたのだ。


 三好左京大輔義重は膝の先に落ちた臓物をもう一度穢らわしげに見て、己を落ち着ける為に大きく大きく大きく深呼吸を。


 目の前にあって尚も感情の沸き立ちに忘却していた腑が発する血肉の不快な臭い。それが肺に溜まるが掌を爪が切る程に拳を握り血が滴る程に力を込めて感情を捻じ伏せる。


 だが岩成主税助友通が漏れただけの、しかし激烈な忿怒を迸らせて立ち上がった。


「申次が腹を切って死んだならば交渉さえもする気が無いと言う事!!此の私を引き立てて下さった彼の御方への侮辱を取り消す積もりさえないと言う事だなァッ!!!」


 怒号上げた本人は微動だにしていないが思わず幕府の者達が刀を抜く。しかし岩成主税助友通の眼光が威貫いて身を竦めた。


「抜いたな?」


 一言、三好側の近習達が笑み浮かべて抜刀。


「た、たた大樹を守れッ!!!!」


 公方の近習の一人が耐えきれず切りかかったが難なく三好家側の一人が首を落とす。


「公方が我等を討とうとした!!」

「公方様を守れ!!」

「もう我慢ならんぞ!!」

「逆賊供が!!」

「皆殺しだ!!」

「で、であえーーー!!」

「積年の恨みじゃぁ!!」


 剣戟が交差し幕臣が倒れ逝く中、将軍が近衆と共に奥へ逃げていく。それを眺めていた三好左京大輔義重は大きく吐息漏らして太刀を握り立ち上がった。


 とても年相応の、感情を抑える事を放棄した顔がそこに。


「……もう知るか!!今迄の鬱憤含めて皆殺しにしてやんよ!!!」


 その言葉を切っ掛けに剣戟と銃声が御所の其処彼処に広がり始めた。一方で足利従三位中将義輝は護衛を引き連れ屋敷の中央まで下がり、逃走は不可能であると確認をすると薙刀を持って来させた。


「皆ついて参れ!!」


 奥の間より出て三好兵達を見つける。


「ウオオオオオオオオ!!」


 一閃。周囲の近侍が続く。それぞれが三好兵を斬り殺し門に向かって歩みを進めた。


 日頃の鍛錬の賜物か三好家の兵の何人かを討ち取っている。室内での護衛を見越して太刀しか持っていない三好家の兵を一方的に斬っていく。


 だがガと音を立てて庭の木に刃が詰まった。


 好機と見て三好兵が切り掛かってくる。


「糸千代、薙刀をよこせ!!」


「は、はは!」


 己の武器を差し出した小姓から引っ手繰るように受け取り、そのまま振るって敵の首を刎ねる。


 続けて五、六人を相手に大立ち回り。正直言って将軍じゃなくて武将か剣豪にでもなれれば良かったように思う。


 それこそ彼の為にも、彼の周りの為にも。


「どうだ糸千代!……糸千代?」


 薙刀を渡した小姓は太刀を握って敵兵と刺し違えていた。


 気付けば公方は一人。


 だが笑う。


「摂津糸千代丸、大義!!」


 そう言って十三の年月の少年の瞼を閉じさせて薙刀を強く握る。評定の間から来た道を戻り屋敷の中を笑みを浮かべて進み、十人程を蹴散らしていく。その顔は自ら武器を振るい戦える事に歓喜している顔だった。


「ハッハッハッハ!!ハナっからこうしておけば良かった!!」


 斬りかかってくる兵を除けて庭に向かって闊歩する。今までで最も将軍であると言う実感と共に。


 そして——。


「幕臣だ!!撃て!!」


 重なる乾いた硝煙の音。


 一発は薙刀の刃を穿ち、一発は足の肉の中で広がり、一発は臓物を炸裂させ、一発は鍛え上げた腕を捥ぎ、一発は首を貫抜いて。


「チェなんだ一人か。こりゃ無駄撃ちだ」

「頭、んなこたぁ良いから早く」

「そうだ。乱取りするにも貧相すぎる」

「御所って割に取るモンがねぇよな」

「本当、先に行った所で物はあんのか?」

「物取りも出来んなら阿波に帰りてぇよ」

「悪かった悪かった。次だ次」


 五人の鉄砲足軽が揃って「へーい」と言うやる気のない返事を残して笑みを浮かべた亡骸から離れていく。


 その亡骸は全てが終わった後、何とも言えない空気の中で発見された。三好家の面々はその死骸を見て冷水をかけられた様に冷静になる。御所巻きの予定は激情で動いた所為でとんでもない事になってしまったと。


 公方の首の前、葬式の様な空気の中、三好左京大輔義重は呟く。


「……やってしまったぁ。父上ぇ、義父上様ぁ」


 少なくとも天下人の後継も驚天動地の謀反を行なった策謀家も居らず、若い時にありがちな勢いでやらかして頭を抱える若人がそこに居た。


 俗に言う永禄の変である。


 永禄八年五月十九日の事だった。




 で、その頃の尾張。


 ベッッッタァと畳の上で寝そべる信長が冷えた瓜を飲み込み。


「むっちゃ疲れた」


 対して壁から床にかけてノの字になってる勝三、床に張り付く丹羽五郎左衛門長秀、デロっと座ってる岩室長門守重休。


「俺も超疲れました。マジで」

「まぁ城は出来ましたから」

「ああ、これで公方を呼べば文句ない筈だな」


 もう上から下まで信長から下男下女までデローンてしてた。織田家の、本当に尾張と美濃の大半に三河の一部須くを持ってして、馬鹿みたいな勢いで内政をかましたから。


 主目的の稲葉山城大魔改造絢爛豪華計画は勿論として幸いにも周辺の状況的に戦の心配がほぼ無い状況だった事でバチバチに地固を兼ねた開墾や城替え城下の作成をブッチ気張ったのである。特に朝倉家は若狭にかかりきりだし武田家は多少の小競り合いがあった程度でまぁ問題発見の早い事早い事。


 幸か不幸かで言えば完全に幸だが織田家は死屍累々。


 特に佐藤家と岸家は因縁ができてしまったので岸佐渡信周を信長直下にしたり、あわせて日根野家を信長直下の馬廻に編入したりとか死ぬほど気を遣って精神的に来るものがあったよね。


 まぁ、とは言え戦で疲弊した美濃を癒せた事の意義は非常に大きいだろう。特に御伽衆に任じた斎藤治部大輔龍興が淡々と国人の秘密を暴露した事で譲歩を引き出せ、安全圏拡大により木曽川の一切は織田家の差配によるものになった。


 農業では米など基礎的な五穀は当然ながら酒や絹に綿など嗜好品の大増産に至り、商業では近江への道が開き瀬戸焼、関和泉守兼定、反物などなど販路拡充となったのである。


 また美濃攻略に割いていたリソースを勝三の提出した造船に振り分けた。先ず小早と言う小型艦艇で勝三の船を試作検証、可能性を見た滝川彦六郎一益の嘆願で関船規模で一隻の建造が開始されたのだ。


 一本通しの尖った船首に総櫓と言う関船の船体に、バウスプリット(船首から伸びる棒)と帆柱が二本立てられ、三角帆とガフセイル形状のジャンク帆が二つの帆柱に付く。尚、二つの縦帆は帆の手入れをしやすくする為にバミューダ帆装の様に総櫓に直接下ろす。


 はっきり言って関船の船体にジャンク帆の君沢形と思ってくれれば良い様な代物が出来ていた。


 この船はバウスプリット(船首から伸びる棒)の特徴から一角船と呼ばれる。


 機織があった上に縦帆をジャンク帆にして布を節約したがそれでも必要な布が増え、西洋帆船を参考にした事で当然の如く綱の必要量も和船から考えれば異常なまでに増えた。


 まぁ建造費は爆増である。


 しかし快速航行と長距離航行が可能になった事で指南魚(羅針盤)を持ちいて海の関銭に相当する津料の削減が可能になったのだ。例えば熱田から沿岸沿いを航行し案内料をせびろうと追ってくる海賊をある程度無視して、堺まで直接売買が可能となれば増えた分の費用に目を潰れる程度の利益も出る。


 また志摩水軍との海戦で手漕ぎ船に対して機動力を持って勝利したのも大きい。先に改造していたヨットの様な早船を引き連れ一角船の一番艦たる鬼角丸を旗艦とした船団を作り、先ず通常の早船と関船で敵を釣り上げて新造船艦隊の大鉄砲で一方的に勝利。


 結果、試作一番艦の情報を元に変更点を洗い出し二隻の新造船を作る事が決まったのである。


 そんな様々な仕事を済ませ、やり遂げた感に皆んなデェルォンとした。あと梅雨で鬱陶しいし実際に雨の降りっぷりが凄いし。


 岩室長門守重休がポケーとした顔で。


「そう言えば酒屋の十石入るって樽はどうなりましたか?」

「ああ、鬼樽か。随分と水田も広がったからな。水車に使うと喧伝して木材を集め熱田と津島で用意させたぞ」


 勝三が壁にもたれたノの字のまま顔だけ真顔で。


「え、鬼樽って何ですか?」

「お前の発案だったからな。津島の爺様(土田下総守政久)が隠語として使ってたら定着した」

「俺が関わると全部鬼になる」


 丹羽五郎左衛門長秀が可笑しそうに笑った。


「さて何時迄もダラけてはいられんな」


 信長はそう言って最期のぬるくなった瓜を飲み込む。すると三人が合わせる様に座った。


「さて長門、五郎左。二人には重要な事を任せたい。実は勝三が硝石を作る方法を発見した」


 岩室長門守重休と丹羽五郎左衛門長秀が目を見開いて勝三を見る。余りにも見られるので反応に困った勝三がピースをチョキチョキしながら頷けば二人は信長にも同じ様な顔を向けた。


「驚くのは分かる。魚肥に混ぜる物として集めている蚕肥がそうだ。伊賀守(橋本道一)に加工させた所、四年から五年を目処に非常に良質な硝石が取れることがわかった。領域が尾張のみであれば勝三と伊賀守(橋本道一)で事足りたが美濃が増えた分人手が足りなくなる。そこで美濃の肥奉行を二人に任せたい」


 岩室長門守重休と丹羽五郎左衛門長秀は頷いた。勝三の硝石造りが成功し火薬造りの拡大に着手する腹積もりだ。


「三名に命ずる。美濃の農地を検め絹と共に密かに硝石を作らせろ」


 三人から耳心地いい「はは」という応答が帰る。此の三人は信長にとって親族よりも頼れる者達だ。そんな彼等に絹の大規模な生産で得た金を使って母衣衆を持たせようとしていた。


「さて勝三、お前には井上城城代を解任し正式に領地として与え、小牧山城代ならびに西丹羽郡代を任せる」

「は、はは!」

「五郎左は異母兄上の娘を俺の養女として預ける。猿啄城は任す故、美濃での硝石造りは伊賀守(橋本道一)と勝三に相談の上で取り計らう様に」

「はは」

長門守(岩室重休)は完全に城替えだ。大垣城に入り美濃三人衆を纏め、加え美濃での綿肥の取り纏めを任せる。五郎左(丹羽長秀)と協力して内密に硝石土を集めるのだ。勝三に仔細尽く話を聞くといい」

「承りました」


 五年の月日を掛け織田家の大規模な硝石生産事業が開始されようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] この船はバウスプリット船首から伸びる棒の特徴から一角船と呼ばれる。  また志摩水軍との海戦で手漕ぎ船に対して機動力を持って勝利したのも大きい。先に改造していたヨットの様な早船を引き連…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ