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各個撃破の初戦

感想、ポイント、ブクマ、誤字報告、有難う御座います。


暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。

 弘治二(1556)年八月。雨天の中にありながら清洲城は騒然としていた。領地の防衛の為に建てられた名塚砦に駐屯していた佐久間両名から敵の進軍を知らされた故である。


 評定も行わず砦へ向かう為に甲冑を纏った信長の元に三人の男が面会を求めてきた。信長は逸る気持ちを抑える為にも家臣の戦準備が終わるまでの煩わしい時間の無聊を潰すにも丁度良いと許す。


「殿、俺に先手を任せてくれゴッヴォォアッ!!?」


 甲冑を着てのスライディング入室土下座前田又左衛門利家の頭に、追いかけて来た佐脇藤左衛門の拳骨が落ちた。


 拳骨をもらって顔面をバスケットボールの様にワンバンして土下寝状態で。


「御願するますッ!!」


 必死に言う前田又左衛門利家の横で拳から血を垂らす藤左衛門と切羽詰まった養子の佐脇藤八郎良之も崩れ落ちるように地に頭を叩きつけ。


「どうか我等も先陣にして頂きたく」


「御願い致します殿!!」


 林秀貞の与力だった前田又左衛門利家と佐脇藤八郎良之の父が裏切った為に三人は挽回の機会を得ようとしていた。


 前田又左衛門利家、佐脇藤八郎良之、佐脇藤左衛門の三人を見て信長は勤めて言う。


孫助(佐々成経)の指揮下に入れ」


 三人が感謝と共に顔を上げれば、しかし氷も凍らせる様な信長の顔。そんな無常の顔の内から漏れ出すは評する言葉も無い程の怒気と疑心だ。


「しかし、何があっても手柄を立てろ。悪いが今の俺には一切の余裕が無いぞ」


 三人は礼の言葉も発せない程に身を震わせながらも納得する。信長でなければ手討ちにされていてもおかしくない状況なのは理解していたのだから。


 そして何より裏切り者の身内を許すなどと言う寛大さに畏怖さえしていた。


「我等、三名。必ずや手柄を立てまする!!」


 佐脇藤左衛門の言葉に続いて深く頭を下げた。


 その後、岩倉と美濃の備えとして岩室長門守重休と長谷川橋介、山口飛騨守を置いて名塚に出陣。織田勝左衛門秀忠と名を変えた勝介も少しでも兵数を増やす為に付いていく。


 名塚に着けばハ字髭の佐久間右衛門尉信盛と忿怒顔の佐久間大学允重盛が出迎える。


 佐久間右衛門尉信盛が驚きと共に口を開いた。


「殿、此の雨の中いらっしゃって下さいましたか。帰りました物見から聞きました所、守山から柴田権六(勝家)を大将とした千、那古野から林美作守(通具)七百が接近中との報告を受けました、ええ」


 続いて佐久間大学允重盛が。


「殿の兵は如何程でしょうか?」


「七百程だ。何せ美濃と岩倉に備えたからな」


 二人の佐久間は目を見開く。少数だろうとは思っていなかったが千を切るとは思っていなかったのだ。


「案ずるな。俺は即座に西に向かう。両名は林の軍を砦に引きつけてくれ。その間に俺は勝家の軍を打破る」


「ふむ。千七百と七百ならば苦戦致しましょうが千と七百、七百と七百ならば五分に凡そ御座いますな、ええ」


 佐久間右衛門尉信盛が此の火急の状況下で、即座に判断し選択した信長に感嘆して言えば、佐久間大学允重盛は深く頷いて。


「なれば砦は私一人で十二分。一人でも将兵が必要な筈、右衛門尉(佐久間信盛)は殿の助力を」


「うむ。微力ながら手勢を率い助力致しましょう、ええ」


「感謝する、行くぞ!!」


 そう言うと佐久間右衛門尉信盛の五十を加え信長は即座に東に向かった。


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 1清洲城2那古野城

 A守山城B那古野城C末森


 佐々孫助成経を侍大将に速戦をなす為に四百を前軍として、残りの三百を後軍として信長自身が率いる。前軍は佐久間右衛門尉信盛隊百、中央に佐々孫助成経隊百五十、左翼が内藤勝三長忠隊百の編成だった。美濃と岩倉に備える為に始めて勝三が百以上の兵を率いる事となったのだ。


 前軍が稲生村の手前で物見を出し陣を整えていると敵軍が現れ一直線に突っ込んで来た。行軍が想定以上に早い。


「かかれッ!!!」


 敵軍の中央先鋒から雷鳴の如き掛け声が轟いた。


 前軍の騒がしさに気付き伝令に接敵を伝えられた信長は声を張る。


「良いか、孫助(佐々成経)が応戦している間に陣を整えろ!」


 信長が怒号じみた声で号令を下す。しかし前軍中央が大きく乱れて旗が揺れる。信長が訝しむと伝令が転がり込んで来た。


「で、伝令、佐々孫助様、山田治部左衛門様、御討死!!」


 騒つく。小豆坂七本槍の一槍たる佐々孫助成経が一瞬で討ち取られた衝撃に尾張最精鋭と言うべき信長の本備が浮き足立った。


 バラバラに散っていく前軍中央を食いちぎって騎馬隊が突っ込んでくる。丸に二つ雁金の兜飾りをつけた頭形兜、巨大な薙刀を握り血と傷の重なる仏胴の当世具足を纏う。


「かかれッ!!!」


 猛将、柴田権六勝家であった。霹靂とも錯覚する様な一喝がまたも轟けば雷神の如き形相の猛将が兵を屠って突き進む。




「殿を御守りせよ!!」


 織田勝左衛門(内藤勝介秀忠)が進み出て吼えれば織田造酒丞信房、森三左衛門可成の部隊が左右から信長本体を守るべく立ち塞がった。


 一方、中央を抉られた前軍の左右は全く逆の動きをした。


「さぁさ、落ち着け皆の者。死にたく無ければ良く良く締まれ!」


 佐久間信盛隊は倍する津々木蔵人隊を抑えて側面から迫る敵を受け流す。


 一方で勝三隊。


 曇天を支える様に振り上げられた黒塊、金砕棒が落ちて敵先鋒の将が頭を胴に埋めた。


 慄く敵を砕きながら勝三は大黒を進ませ不退を体現して息を吸う。


「恐れるな!!死にたく無ければ俺に続け!!」


 青山与三吉次と岩越二郎高綱()を左右に控えさせて、味方が混乱する前に前に守山勢を瓦割りの如く砕いて進む。唯でさえ巨大な体の勝三が巨大な力を振り回し巨大な声で敵へ向かえば軍という多数の人間の先鋒としてこの上ない。


 その勢いのみで敵軍の心に亀裂が入る。その勢いのみで友軍の心が燃え盛る。勝三から始まった其れは山火事の様に広がり燃やし尽くして広がっていった。


「ええい落ち着け!敵中央は崩れたのだぞ!!」


 勝三と相対していた軍の総大将は角田新五であった。頭形兜と腹巻具足を纏い中巻野太刀を握って兵を統制しようと声を張る。


「クソッ孫十郎(謹慎オジサン)めが兵を出せば数で圧倒出来たものを!!」


 倍する兵であってもド真ん中を抉られバリバリに押されてるのであんま変わんない。ただ采配するのが孫十郎信次(謹慎オジサン)ならもう少しいい勝負が出来たかもしれなかった。


「クソッ退けば殺すぞ!!」


 喧騒はすぐ其処、無自覚な焦燥が思考を止める。離散する兵、それを止めるべき者さえ及び腰。


「新五様、敵が!!」


 従者の言葉に雨か汗かびしょ濡れの顔に恐怖と驚愕を添えて見上げれば自分目掛けて大男が金砕棒を頭上で振り回しながら突っ込んで来る。


 雷鳴、黒一色の鬼の陰に浮かぶ眼光。


 ゾッとした。


 一振りで三人五人が死ぬ。


 それは冗談の様な、悪夢の様な、眼前で起こる現実だ。


 曇天の下、黒雲を集めた様な金砕棒を軽々振る大鬼。


 赫灼と輝く双眸が確かな殺意と共に己を射貫く。


「ヒッヒ」


 口は笑みの様に引き攣り、目からは留まることの出来なかった涙が溢れる恐怖を示す様に溢れ出す。


 中巻野太刀を馬上で構えるも震える刃の切っ先が勝敗を既に知らしめていた。


 自分の前に並ぶ紙のように薄く感じる家臣の壁が金砕棒によって骸に変わり、大鬼とそれに続く鬼供が現れる。


 気炎を滾らせ歩止めぬ百鬼夜行。


 気付けば眼前。


 見下す大鬼。


 迫る金砕棒。


 吹き飛ぶ体。


 声さえ出せず。


「新五さヴァ!!」


「オノレェッ、オノレェッ!!」


「おひギィッ!?」


 側にいた近衆が遠くで鈍い音と共に散っていく。


 諾々と口から溢れる血と激痛。


 力入らぬヘシ折れた腕と肋。


 雨が断たれて見上げれば。


「新五。ならコレが喜蔵(織田秀俊)様の仇か」


 巨大な悪鬼が憤怒の形相で金砕棒を振り上げる。


「や、やめ——」




 勝三は潰れた体から首を捥ぎ取ると立ち上がる。


「皆、聞け!!この首一つで恩賞は頂ける。他の首は打捨て津々木の側面を討つ!!続け!!」


 そのころ本陣は勝家隊に押されまくっていた。漸く長柄組を率いて勝家を下馬させ何とか乱戦で収めたのは母方の祖父土田下総守政久の派遣していた大原隊だった。だが大原隊も勝家の前に遂に崩れ、森三左衛門と織田造酒丞が乱戦の中で得物を握り奮戦する。織田勝左衛門(内藤勝介)が信長を背に敵を斬り伏せ。


「権六殿の隊の息切れも近い。殿、見れば権六殿直下の兵でない左右が付いてこれず孤立しています!あと一踏ん張り此処で気張れば勝てますぞ!!」


「で、あるカァッ!!」


 信長が薙刀で敵の腕を斬り飛ばしながら答える。織田勝左衛門(内藤勝介)は敵の首に太刀を捻じ込み槍を奪ってその首に捩じ込み。


「土田勢は権六殿相手に見事に御座いましたぞ!!」


「爺様には礼を、大原には良く報いねばな!!」


 そんな言葉を交わして二人は黙々と敵を屠る。


 突き刺し。


 斬り伏せる。


 方や兵は居らずも不倒の軍、方や勇猛なれど大将の居らぬ軍。次第に勝家の軍が逃散していき信長の元に兵が集まる。


 更に。


「殿、申し訳御座いません!!」


「なんと此の状況で手勢を維持なされたか!!」


 勝三と佐久間右衛門尉信盛が戻ってくる。


「権六の兵供!今なら追わんぞ!!!」


 戻って来た将兵を背に信長が吼えれば柴田軍が引いた。柴田権六勝家の部隊は未だ戦えたが、それ以外の角田隊と津々木隊が壊滅したのだ。


 勝家達が消えると信長は立ち上がる。


「次は林だ!!!!!」


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