表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/160

言ったもんねぇ

感想、ブクマ、ポイント、いいね、誤字報告ありがとう御座います。


暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。


PS.国名はマジで間違えました。たぶん訂正できてると思います

「いえ〜い」


「出た。勝三の奇声。いや気持ちは分かるけども」


 内藤家は全体的にクソ燥いでた。西国が一段落したので信長から骨休めをする様にと、まぁとどのつまり休暇を貰ったのだ。内藤家の管轄下は安定しているし長宗我部家は降伏したしお疲れさん的なアレだった。岩室家、丹羽家、内藤家に対する計らいである。


 だから勝三は入れ替わりで自身や家臣の家族を呼んで津山城で美作の三つの温泉に浸かることにしたのだ。


 まぁその辺はアレ。端折る。


 久々に一族揃って温泉入って飯食った。


 以上。


 で、問題はコッチ。


 内藤家の当主は勝三で内向きの事は妻に任せるのは当然だった。しかし拠点が多く織田家及び朝廷とのパイプ役の織田秀子、絹産業のアレコレと近江今浜城で内向きの差配を行う有馬幸。こうなってくると内藤家の嫁さん達も非常に忙しくそもそも身重だしで勝三の母たる竹が動いたのだ。


 土田御前と縁があるからある意味スゲェ楽だし。


「おお!遂に鬼夜叉の許嫁が決まったんですか母上!!」


「ええ。鶴姫様を嫁がせようと思っていると」


「鶴姫様ですか。正直、御実子はもう無理だと思ってましたよ。何せもう御屋形様ですから」


「いやそれは姫様方が納得しません。何せ鬼夜叉も貴方みたいにおんぶをせがまれますからねぇ。血かもしれません」


「えぇ……大丈夫なんです?それ。いや俺が言えた事じゃ無いんですが」


「まぁ貴方の時と同じですよ。験担ぎです。験担ぎ」


「験担ぎの姫担ぎですか……」


「上手い事を言いますね」


「これはほぼ決定と考えても?」


「そう伝えられています。鬼夜叉にも伝えておいて欲しいと」


「織田家の姫様なら大体知り合いですし鬼夜叉も喜びますよ」


 てな訳で斎服山城で評定を開いて勝三は親族家臣達の前で母と並んで温泉帰りの息子と相対し。


「鬼夜叉、婚姻の話が決まったぞ」


「え?」


「相手は鶴姫様な」


「え?」


「ほぼ決定な」


 たぶん四半刻(約30分)くらいゴムを知らなかった雷能力者みてーな顔から復活した鬼夜叉丸は嬉しそうだが戸惑いの強い顔で。


「え、あ。ちょ覚悟が。父上、俺って未だ齢十なんですが。それに主家の御方は畏れ多いですよ。いや鶴姫様の事は好きですけど」


「うわ、こいつハッキリ言いやがった。やるな鬼夜叉。マジか」


 やっと復活したかって顔だった絹千代がちょっと吃驚しながら言う。既に淀姫と婚約してるから余裕がある。その横で頷くのは勝三の母たる勇魚だ。


「勝三よりハッキリ言う分腹が座ってますね」


 んで昔の息子を思い出して言う。


「母上。鬼夜叉が気まずそうです。事実を言わないで下さい」


 一番気まずそうな勝三が言う。


「いや息子を盾にしちゃダメでしょ勝三」


 まぁ与三の言葉の通りだ。


 オカンと息子は勿論だけどほぼほぼ微妙な顔で勝三を見てる。特に勝三の婚姻の時を覚えてる遠慮の無い与三とか半眼っぷりが凄い。勇魚も息子の成長を喜ぶと言えば聞こえは良いが内容が微妙すぎる。マジで秀子と幸以外は凄い微妙な顔。


 勝三はそういう空気ガン無視で。


「鬼夜叉。また石山に戻ったら顔を出しておくと良い。あと手紙とかな。忙しかったりしたってのはあるけど俺はそういう風に気を遣えなかったから」


 割とマジで大事な事を忠告した。


 まぁこう言うのはアレ、先達として自分のやらかしをしたの者に味わって欲しく無いって意図。と、心情的な物で加えて言えば嫁さんは気にして無いが勝三が気にしてる程度の事を伝えただけ。しかし同時に主家の姫を娶るのだから夫婦円満でいて貰わないとマジで困る。


 諄い話もう恋愛という感情的な話だけでなく政治的にもクソ大事な事でもあった。この辺に関しては当人の仲と言うか信長の家族と勝三の家族仲が良いとは言えだ。鬼夜叉丸は絹千代に視線を向け。


「なぁ絹。淀様に何か送ったりしてる?絹織物とかか?」


「ウチの場合は最初はそれでしょ。凄い喜ばれると思うけど贈り物は特別な時だけにしときなよ。基本的には父上が言うみたいに手紙を常に送るぐらいで良いと思う。受け売りだけど年中贈り物なんてしてたら色々困るよ」


 息子達で何か話し出した。戦国時代でもマセてんなって内容だけど婚約者の相手が相手だししゃーない。尚、鬼夜叉丸に関して言えば勝三と同じで勝三以上の義務が色々と発生する。ボカさず言っちゃうと主家との婚姻だけで済む訳がねぇ。だって次期当主だもん。


「あと鬼夜叉も絹千代も覚悟しといてくれ。大変だと思うがお前達には如何しても苦労をかける。俺もそのあたりの機微は疎いが力になるから」


 だからこそ勝三の忠告の言葉に二人が首を傾げた。


「俺は凄く運が良かったが側室って大変だぞ。そんで二人には十中八九側室を娶ってもらう事になる。色々と聞いといたから後で読んどけ」


 これは内藤家としても延いては織田家としても必要な事だ。近江様に六角家や京極家と言う分かりやすい協力者のいない備前播磨の有力者との婚姻は地固めとして取らざるおえない。勝三とて余り教えてやれる事は無いが無いよりはマジマシ。


「浦上家に年頃の娘でも居れば即娶る事になってたろうけど今なら未だ時間がある」


「待って父上。鬼夜叉は分かるけど俺も?そう言う話はあったけど庶流だよ?」


 そう問うたのは絹千代だった。


「絹千代も直ぐって訳じゃないけど有るぞ。鬼夜叉は備前の有力者や公家なんかが狙ってるらしい。するとたぶん織田家中の同輩の娘をって事が有り得る」


 内藤家くらいになると主家、公家、地元有力者、隣接領主、同僚家臣、与力家臣など縁を結ぶべきで結ばなければならない相手は多いのだ。そも時代的な価値観と現実的実情は勝三の時点で大概だったが本人がどうこうって話じゃねーのだ此処まで来ると。


 例えば主家との縁組は内藤家の次代の保証で有るし、公家ならば朝廷と主家の繋ぎと言う役を確定させるし、地元や隣接領主などは地固めとして語るまでも無い。


 羅列した利益は極一部だ。利益と言うと場合によっては悪く聞こえるかもしれないが、それは公共利益と言うべき代物で、統治者となればその身内までもが時代的には考慮すべき事。


 マジで言い方はアレだが甘い恋愛がしたけりゃ愛人でも作って盛ってろって時代なのだ。日本は勿論だが一夫一妻のキリスト教を信じてるフランスだって公妾とかって制度があるしイギリスのヘンリー8世の婚姻関係とか調べたらワロテまう(笑うしか無い)で十六世紀結婚観。


「それなら父上。丹羽様みたいにはしないんですか?備前播磨から迎えればいいでしょう」


「何言ってんの絹千代おまえ」


 初めて勝三が息子にえぇ……って顔した。十歳の息子にだ。


 丹羽五郎左衛門長秀は敦賀の事などで朝倉家の家臣だった者の娘を側室に迎えている。無論だが勝三にも似た様な話はあったのだが二人で十分ってか一杯一杯だった。つーか時代的ってか母子の安全的に自身の半分少々の年齢の子を嫁さんとしては見れない。


 尚、クソ下世話な話をすると嫁さん達は夜の事を考え若干受け入れたい模様。


「良いか絹千代、鬼夜叉も聞いといてくれ。寧ろ今一部の備前播磨、特に播磨の国人と密接になりすぎると織田家主導の状況が崩れかねない。また備前や美作に関しては宇喜多や毛利家を刺激しすぎるんだ。何より俺にそんな甲斐性は無い」


 勝三は凄いキリっとした顔で言った。何言ってんだコイツと皆が思う。こんな感じで大事な話を交えつつ内藤家の休暇は終わる。


 天正三(1575)()月。斎服山城には珍しいお客さんが来ていた。


 客人は五名である。


勘九郎(織田信忠)の嫡男と主上の息女の婚姻を見据えた下地が必要でな。官位や姓名を頂いた家なら公家の拒否感も少ない。まぁ建前上の話だがな。まぁてな訳で公家と婚姻結んでくれ。御子息じゃなくて勝三殿がな」


 そう言ったのは客人一号。


 ニヤニヤ津田(織田)大隈守信広。


 勝三はポカンとした後に己の小指を自身の耳に深々と突っ込んでグリグリした後に。


「…………はい?」


 凄い困惑顔で発した。


「山科様の末娘にございます」


 扇で顔を隠した客人二号。


 ニッコリ権中納言飛鳥井雅春。


「何故…………?」


 勝三は視線を向ける。客人三号、四号、五号へと。厳密に言うと織田秀子(正室)内藤鬼夜叉丸(嫡男)内藤絹千代(庶長子)へ。


「義父上様も義母上様も幸殿()賛成しています。なかなかに愛らしい方ですよ。お相手の方は」


 嫁さんが言った。側女増やせ、と。据え膳作ったったぞ、と。


 勝三は訳がわからない。


 息子達がしれっと。


「御屋形様の馬廻ですし鶴様以外の相手する余裕ないんで数年後とかにして下さいって言ったらこうなりました」


「確かに朝廷との繋がりは大事ですけど俺は庶子なんで。だから父上で良くない?って思いました」


 息子達が言う。十歳児に嫁二人持つのは無理だから父上よろしくと。勝三はせやねって白目になった。


 何と言うか。凄いアレな勝三を残して男衆が退室する。何でって思ってると秀子がズイっと勝三に寄って来た。勝三は首を傾げながら何時も通り受け入れ体制。秀子は何時も通りに膝の上に収まる。何この惚気。


 切り替えマジ早くね?


「旦那様」


 秀子が勝三を下から見上げる。


「はい」


「もう少し小まめに発散して頂かないと私達は翌日に響きます。御相手は嬉しいのですけどもう二人だけでは金砕棒は支えられません。足腰立たなくなるのは、その、ちょっと……」


 あの、何を話てんだろうコレ。いやナニの話だけど。勝三デカいからデカいし。


 まぁマジで下世話な話をするがアレなのだ。現代的倫理観が残ってる勝三は身持ちがカテナチオ(鉄城門)。故に出張とかあると如何したって溜まりすぎる。


 ただでさえ昼の戦も夜の戦も万人敵で加減されても一騎打ちはキツいのに、だ。


 勝三も秀子も幸も相思相愛である。だが、それはそれとして受け止めきれないのだ。余りにも強力な金砕棒を。


 ……何でこの空気で下ネタ?


「それに公家との繋がりを深くするのは妙手です。三好家に霜台(松永久秀)様がいらっしゃった事で三好家は将軍家に疎まれて尚も強い影響力を保持出来た。鷹司家の復興などを含めて御屋形様が思案なされている一助になれるかと」


「つっても山科家なんて所がウチと縁組を結ぶ事を良しとしたんですかね?いや確かに若様の御嫡子が主上の御息女を迎える為に必要なのは分かりますが」


 勝三の疑問は余りにも尤もな意見である。山科家は羽林(家格四位)藤原北家(藤原房前子孫)四条流(四条家関係)にして笙と装束を家職とする内々(天皇側近)の家。理解の薄い勝三でも主上の側近ってだけで何か凄そうだ。


 ただ公家と武家の婚姻は意外とある。鎌倉幕府の将軍家に朝廷の姫君がみてぇなのから始まり室町幕府将軍家もそうだ。身分的に下げ近々で言えば先ほどの松永家やら朽木家などが該当する。ただ例を挙げたのは正妻だ。


 そんな訳でこの時代に武家と公家が繋がることはあっても正室か継室が基本だし家格と言う考えからして、わざわざ一家臣の側室に娘を放り込んでまで公家が武家と繋がりを持ちたがるとは思えなかった。


「非常に乗り気でした。末娘の方は齢二十一(20歳)で婚約さえ無く後が御座いません。美しい方ではあるんですけど」


 時代的に行き遅れだ。身分が高い場合は婚約さえしてないのは稀有だった。


「ええ……何で山科家なんて家の御息女がそんな事になったんです?」


「まぁ将軍家と揉めたりしてたので……」


「あぁー……」


 コレは山科家の家領を剣豪将軍がパクったのが原因である。そのゴタゴタに端を発して娘の輿入れ話が行い難くなったのだ。少なくとも別世界(武家)トップ(棟梁)と揉めた家との繋がりは躊躇に値する。


 そんな訳で山科家の息女はぶっちゃけ時代的に言って行き遅れと言われてもおかしくない状態になった。とどのつまりこんな理由で娘が行かず後家になるとかパパ的に嫌だって時代相応の感覚からの婚姻である。まぁ山科家の感情的な話はこんなもんで区切ってもっと益という話のが大事な訳だが。


「先ず即位に際して献上した黄櫨染御袍の出来に陛下および上皇様は大変御喜びとの事で朝廷は賛同しているそうです」


「……なるほど。それで主上の御考えは?」


「装束の事もそうですが応仁の頃からの問題で家の印刷で様々な文書を残したい、と。特に譲位に付いて細かく記した物を制作したいとの事です。それで嫁がせられる娘を探して居た所、山科家の家職が装束で有識故実にも詳しいからと」


「そう言えば将軍宣下かなんかの時に権大納言(山科言継)様に衣冠束帯の着方を習いました」


「ええ、それで信長様も山科家と共に公家装束の着方の指南書を制作して欲しいと」


 勝三は印刷機って利権持ちだがアレである。説明書作るのが上手いと思われてるし実際上手い。そりゃあ現代知識があるし絵も描けるのだ。


 説明書。要はコレを作るのが上手い勝三に公家と交友を深めてもらい織田家に公家の常識を広めたいのだ。信長は。


「何と言うか、分かりました。息子に示しも付きませんし山科の姫様にも申し訳ないので腹を決めます。そのー秀子殿、抑えられず申し訳ない」


「いえ、私としては翌日が空いてれば歓迎なのですが……」


 話題が転換エグいて。


 ……あとこの人達ぜったい客人退室させてんの忘れてる。


 そして勝三はポツリ。


「公家の姫様への手紙って和歌書かないとダメかな……」


 織田秀子が勝三の対面に移り。


「……聞いておきますね。でも多分必要だと思います。何せ公家の方ですから」


「ですよねぇ、和歌かぁ……。和歌ぁ……?」


 勝三は二、三度頭を掻いてから筆を取りサラサラと山科家へ手紙を認める。


 それには勝三は息子達に言った様に反物と共に手紙を送り一首ぶち込んだ。


 瀬戸波に、見ゆる其処元。角船は、我と思えば、年嵩故に。


 瀬戸波の様に貴方は不安でしょう。ですが私を角船と思って頼ってください。年上だから。(意訳)


 尚、返歌を貰ったが勝三は長岡(細川)兵部大輔藤孝に影武者(代筆)して貰おうと思った。


 つかゴリゴリ武人が真っ当に和歌とか書けるわけねーじゃんって思ってる。


「じゃあ仕事に戻りますか」


「はい」


 勝三の贈り物と手紙は権中納言飛鳥井雅春によって山科家へ届けられた。


 さっき返歌来たつったけどそれは権大納言山科言継の手紙と共にだ。山科家の意向を通達する手紙、婚姻する本人の返書および返歌である。要約すれば了承してくれて嬉しいって内容だった。だいたい五日で来た。メチャ早返信。


 で。


「よろしく頼みます大鬼はん」


 ザ・公家の姫が来た。


 とは言ってもオカメ面って訳じゃではなく立ち居振る舞いっつーか所作が大人しいのである。


 現代的に言うが可愛い系の見た目だがモデルかキャリアウーマンみてーな雰囲気の織田秀子にクールっぽく見える外見でスポーツ女子っぽい雰囲気の有馬幸。


 公家の姫様は完全に深窓の令嬢みてぇな外見だった。それも読書家って感じでメガネ似合うだろうなって感じ。


「此方こそ宜しくお願い致します。稀殿」


 勝三も頭を下げ返す。三十五と二十の結婚である。戦国時代でもどうなんだろうコレとか思いながら。


 尚、勝三の心情はさておき余談だが。


 柴田勝家とお市の方、歳の差二十五。


 伊達政宗と村上姫、歳の差三十程。


 豊臣秀吉と淀殿、歳の差三十五。


 こっから飛んで。


 徳川家康とお六、歳の差五十以上。


 有名どころで側室とかこんな感じで有る。


 なんか十歳くらい戦国時代なら普通じゃねって思ったきたら気を付けてほしい。戦国時代に歳の差婚がままあるのは確かだが話題以上の話を持ってきて錯覚させられてるだけだから。コレぶっちゃけ詐欺じみた手法だからマジで。


 まぁさておきだ。公家の姫様を勝三は迎える事になった結果である。


「山科家の家職の笙ってアレですよね。ふぁ〜ってなる門松みたいな笛」


 勝三が問いかけると深窓の令嬢はハムスターみてーな顔でコクコク頷いた。右手に茶碗を左手に箸を持ってる。頬モゴモゴして飲み込んでから。


「山科家は装束と笙で間違いないです。父上なら個人的に色々と知っとるやろうけど」


 茶碗?麦飯山盛りですが何か?そんな顔してる。


 勝三は笑って己の顳顬をポリポリ掻いて。


「他の家職の相伝に関しては如何ですか?」


「取り急ぎ請われているのは勘解由小路家から宣明暦の取り纏め、それと大宮宮務家の残った書物です。これらは主上も御叡慮の上で特に早急に手をつけて欲しいとの御意向を朝議にて申し上げたとか。大寧寺の変を始め乱世故に絶家となった家も多いですから仕方ないんやけど他の家も家職の取り纏め頼みたいて」


「成る程、公家の方達からの手紙が増えた理由はそれか。朝廷に渡す印刷機はもうそろそろ出来るって話だけど手引書だの挿絵を書く時間はないなぁ……。京の絵描きとか雇うか」


 まぁ当然と言うかそう言う狙いだったと言うか公家との交流(手紙爆撃)が増えた。織田家の政策的な話をすれば備後(直ぐ近く)に将軍が居るのでそれ以上の権威を勝三に紐付けて西国での織田家の正当性をガチにしてやったのだ。毛利家も織田家との衝突を嫌うのと偶に個人的な嫌がらせで不動院一任斎(安国寺瑶甫)恵瓊がやって来て公家と会談する。


 灯台的な改築を受けた乙子城に宮の丸と言う曲輪を作り寝殿造の公家用の館をブッ建てており、斎服山城も鷹取山の方へ曲輪を伸ばし山麓に祇園曲輪を拡張して建設中だ。


 西国の瀬戸内周りは一先ず織田家によって安定するに至った訳だが騒乱の種足り得すぎる将軍が陣取ってる訳だ。しかしその義昭が何か言っても左近衛大将に抜擢された信長の腹心が備中を挟んでとは言え横に居る。しかも重臣の城には公家までちょくちょく来るって状況で将軍の影響力を何れ程に活かせるかって話。


 では公家がなぜ備前まで来るか。それは簡単である。手引書の制作方法と印刷技術を学ぶ為だ。公家って家職守ってナンボみてぇなところあんじゃん。そもそれが飯の種だし覚書という形で次代に残すべきなのだ。だから公家が何人か備前に下向して技術を学ぶ感じ。


「身体は鈍っちまうが、偶には良いなぁこういうのも」


 勝三は今まで怒涛で戦戦戦ァ政ォッ戦ァ!!


 みてーな人生だった。鉄火場じゃ無い時の方が稀有だ。だが讃岐の戦が終わってからは比較的楽だった。


 領内の作事を行い鍛錬、領内を見回り獣と賊を狩り鍛錬、毛利家や近隣の寺社から来た使者と会談して鍛錬、国人の仲裁や仲立ちをして鍛錬、税の確認をして鍛錬、備前焼や備前伝を取引し鍛錬、絹織物の模様(デザイン)を拵え鍛錬、鍛錬。


 要は印刷関係の事を除けば普通にするべき事しかしてないのだ。まぁ、ちょっと気持ち鍛錬お多いけど。


 家族も余裕があればまた呼ぼうなんて考え。


「殿!!」


 賀島弥右衛門長昌が慌てて来た。


「毛利殿より急報が!!!」


 戦国時代に平穏は続かないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何でしょう?祖先に倣って九州からの復活を目指すんでしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ