人と話す時は手短に要件を目立たせて話したほうが良いと思うけど大体グダグダんなる。ほんとグッダグダなる
「えぇ……?」
勝三はビックリしていた。意訳すっとオレの家あげるよって言われたから。していたが、その見開いた目は段々と遠くを見つめ出す。
「ああ、こりゃあ失礼を。えらい早う言うてしまいましたわ。いやぁよく怒られるんじゃけども、如何も浮ついとりますもんで。んでまぁ御存じん通り播磨ぁ初め各所も俺みてぇに浮ついとりますわ。手紙見るに毛利さんトコも坊主に扇動されてんのや将軍を担ぎ上げようってな連中を抑えるのに必死みてぇで。ウチっトコの殿さんの同輩じゃった浦上ってのの下に宇喜多ってのが居るんじゃけどアレも如何も権威ってモンを嘱望しとります。とどのつまりはこの前の公方様の手紙を大義に動こうっちゅう訳で。逆に赤松の他ットコの殿さん何かは手紙を受けて立ちはしたんじゃが及び腰ですけぇ凡そこっち側じゃわ。まぁ恥ずかしながらボチボチと同調せんのもおりますんで播磨平定に腰据えて貰おうっちゅう話です」
身振り手振りな早口だが矢鱈と頭に留まる言葉。小寺官兵衛祐隆のそれの通り播磨と備前備中美作はクソめんどい。先ず細々した勢力がアホいてアホ争ってるからアホ面倒。
しかも下剋上よろしく主君より家臣が強いなんてのもザラでギャグみてぇな状況だ。しかも何処も大国を後ろ盾としてる分、信長が継いだばかりの頃の尾張よりダルい感じになっていた。意訳すると色々ゴチャゴチャとしか言えないので出来る限り端折る。
先ず播磨は赤松氏が守護だ。でも赤松氏は中央のアレコレとか色々あってザコになりクソほど播磨はバラけた。特にデカいのを上げれば同族の別所氏と宇野氏に守護代の浦上氏とかである。その上で更に赤松氏自体も三つほどに分かれ、それなりの勢力を残す置塩赤松家も小寺家のおかげで存続していた。
尚その小寺家は赤松家の一つ置塩赤松家を傀儡としている訳だが小寺家は黒田家で何とか保ってる状況だ。
そして播磨から西へ備前の説明となるが此処は浦上氏と言うのが勢力を誇る。んで、備前で勢力を誇るが浦上家は播磨守護代で赤松家の家臣と言う立場の家だった。赤松家の弱体化後に播磨から備前へと勢力を伸ばしたのだが家督争い等があり兄を担ぐ播磨と弟を担ぐ備前で分離し色々あって播磨の方は色々あって潰された。一応は小寺家との婚姻をして残ってはいたが播磨浦上は赤松家の刺客、続いて備前浦上家の刺客により断絶している。
そんで話を戻し備前浦上家は毛利家と友好を結んだ家臣である宇喜多家の伸長に圧倒されていた。そこで浦上家は織田家と足利家の力で勢力を戻そうとし上洛の機会に接触。後は備中美作に宇喜多ブッコロの三村氏がいて毛利家が宇喜多を取り込みてぇから落ち着けってしてる。
播磨備前備中美作クソ大雑把見辛い図
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーー浦浦ー菅菅ー菅菅宇ーーーーーーー
ーー浦浦浦菅菅菅菅菅宇宇宇宇宇ー別ーーー
ー村浦浦浦後後後後菅宇宇宇宇赤別別別ーー
ー村村浦備備後後備備宇宇宇赤赤別別別別ー
ー村村村備備備備備備赤赤赤赤赤別別別別別
ー清清備備備備備備備赤赤赤赤赤赤別別別別
ー清清ーーーーーー備赤赤赤赤赤別別別別ー
ーーーー児児児ーーーーーーーーーーー別ー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◉親織田優勢◎反織田優勢◯中立〓親毛利
◉別=別所家・将軍云々で微妙に内乱中
◉赤=赤松家・ほぼ小寺家で黒田家
◎宇=宇野家・毛利派と織田派で割れ気味
〓備=備前浦上家・宇喜田家VS浦上
◯児=高畠家・毛利と宇喜多イヤアアアア
◯後=後藤家・三村コッチ来んな
◯菅=菅家党・グチャグチャ
〓浦=三浦家・美作侵攻中
〓村=三村家・毛利庇護下だけど宇喜多殺す
〓清=清水家・マジで毛利に従う
スッゲェ雑に言うと嫌いなアイツが毛利を頼るなら織田に、織田を頼るなら毛利にってノリだ。そんなアレコレがゴチャゴチャした状況を必死こいて理解した勝三は頷いて。
「取り敢えず反織田の連中を虱潰しにブン殴って行けば良いですね」
まぁ戦国時代の真理をほざいた。
「え、ああ、はい。有り体に言っちまえば取り敢えず大掛かりになるんは別所家の内乱じゃろうかな?そこから宇野の内乱を抑えれば話は早いですわ。それを見りゃ他の小粒は織田様に付くじゃろうし」
余りにもあんまりな言葉に小寺官兵衛祐隆は、いやまぁそうなんですけど的な頷きを返しながら答えた。
「それで私達の陣所として姫路の城を貸してもらえると」
「ええと、はい。そう言う事んなります」
「感謝します官兵衛殿。では西国平定の先方として明日にでも堺へ向かいましょう。一先ずは石山から進んで栄賀城を殲滅しましょうか」
栄賀城は播磨は飾磨郡にある三木掃部助通秋の城だ。此処は赤松家の領域内だが熱心な一向宗で石山をブン取った織田への敵対を鮮明にしている。勝三は丁度良い事に海側にあるんで大砲ブッパなしたろって思った。
まぁ微妙に姫路城が近いし敵水軍なんて潰すに限るから。早い話が飴と鞭ってなアレでビビらせればビビらせただけ後が楽になる。味方へは甘い甘い飴を心掛け敵には鞭と言う名前の撃滅をくれてやるのだ。
まぁ、勝三の現状を纏めよう。
最初の獲物が決定した。
殿の敵は殴る。
以上。
「では官兵衛殿、石山で評定を行います。その時は頼りにさせて頂きますよ」
「任せて下さい」
さて、という訳で石山本願寺改め大坂城。とは言えあんまりコッチは手入れされてない。何故ならそんな暇が無いからだ。
勝三はそんな寺寺しい城で山陰侵攻軍総大将として大広間を借り受け評定を開く。
此処で西国平定の嚆矢たる山陽侵攻軍の主力構成員達が初の顔合わせとなる。まぁ勝三は顔見知りばっかだけ伝令役が知らないと不味いから、うん。
山陽勢分限帳は以下の通り。
総大将
内藤備前守長忠
副将
篠田右近大夫正次
監軍
斎藤治部大輔龍興
岸勘解由信周
尾張与力衆
林新次郎通政
中川八郎右衛門尉重政
湯浅甚助直宗
近江与力衆
宮部善祥坊継潤
堀遠江守秀村
樋口三郎左衛門直房
本願寺衆
下間刑部卿頼廉
水軍衆
織田市之助信成
新庄新三郎直頼
播磨衆
赤松兵部少輔義祐
宇野蔵人光景
別所小三郎長治
小寺加賀守政職
小寺官兵衛祐隆
て感じだ。尚、播磨衆は小寺官兵衛祐隆しか来れてない。その辺はバチボコ不安定だからしゃーないのだ。
兎も角も織田家で戦に関する者なら知らぬ者は居ない歴戦の将達が集っていた。
「鯨の衣上げウメェー!!そうだ後で鯨塚にお詣り行きません?」
で、飯食ってた。存分に口へ米と鯨肉を放り込む勝三に斎藤治部大輔龍興がよく喰うもんだ呆れながら。
「大鬼オメー。総大将が気の抜ける様な事を言うんじゃねぇよ。まぁ戦勝祈願は分かるがよ」
その対面で篠田右近大夫正次が鯨汁を口から離して染み染み。
「久々に食べたなぁ鯨。最近は都に出ずっぱりだったから尾張を思い出す。そう言えば御屋形様も禁裏に鯨を送っていたな」
「ですが取れるのは冬から春じゃ?」
林新次郎通政が普通にツッコんだ。
まぁアレよ。親睦会よ正味。ぶっちゃけ勝三が航路の安全確保、それ以外は明確な反織田の勢力ボコして終わりだ。舐めちゃいないが本番は備前の宇喜田家である。何せ一番勢力あっから。
それに比べれば播磨は対尼子の際に多少の関わりがあるし都とのつながりも濃い国人が多い。勢力はそれなりだが個々が分裂内乱な状況だし何より守護の赤松家を立てときゃ間違いねぇから楽だった。
この辺、勝三の記憶だと織田家は浦上家を立てて播磨とかの朱印状渡しちゃって話がややこしくなった。実際、当初は赤松家が足利家と織田家の両方と誼を通じてい事、また宇喜田家を攻撃する大義名分に丁度良い事などを理由に同じ流れになるところだったのだ。だが即位礼で各地から使者を呼んだ事で方針転換を計られた。
何せ畿内諸人や織田家が何れほどオイオイ将軍テメーコラってなっても畿内を出た他所での権威の健在っぷりが想定以上だったのだ。
まぁ、だいたい何処も彼処も将軍家の威光を大義にしてたんだから当然である。各地の使者や当主から足利家に認められていた事柄に関しての問い合わせが頻発した。こうなっては手っ取り早い手法で行くと余計に面倒になり得る。
浦上家が備前まで勢力伸ばしたんで如何しても前提説明が長くなるが、そんな訳で。
「んじゃ、適当に備前浦上は止めとくんで右近大夫は姫路をお願いします」
「橋頭堡の保持が目的ですね?」
「はい。ですが、それと同時に林殿には別所家へ救援に行って頂き反乱分子の撃滅を願います。海路は有りますけど荒れると面倒なんで陸路の確保は重要ですから」
「承知した」
「八郎右衛門尉殿は浦上家の援護をお願いします。宇喜田は暗殺を多用するそうなので御留意を」
「任された。気を付けておこう」
てな感じで一行は播磨へ向かった。
……まぁ一行つっても船に限りがあるんで段階的な上、陸路と海路に分かれてだけど。
さて、面倒な話は終わりである。
勝三は潮風を切り進む船の上にいた。淡路島水軍の船団も含め大船以上に限定して二十隻ばかりの艦隊の先頭を進む。乗り込んだ旗艦は和泉国で一隻だけ造った船体長十七間の三国船だ。それに続くのは伊勢から回された一角船達と帆を広げた淡路島水軍の関船。
瀬戸内は情報の伝達が早い。故に、その三好家が全てを用いて造った船と織田家の力を象徴する船が従来強力無比であった関船を先導する姿は直ぐ様各地に伝わる。だからこそ迎撃は早いかと思ったらそんなもんは全然無かった。
つーかもうメッチャ英賀城が見える。
何故なら毛利家は九州行ってっからコッチに対処する余裕が無い。酷く端折って言うと織田家に東を任せたんで西に力を割いた。んで入れ込み過ぎてるのだ。そんな訳で織田家との敵対も徹底的に避けており備前を緩衝地帯にする事で同意していた。
「皆、気を抜くな!!瀬戸内の水軍衆が使う炮烙は十五間は飛ぶぞ!!」
て事で船頭の新庄新三郎直頼が声を張った。今回は弓と狭間筒が大量に乗せている。炮烙を投げる者を狙撃する為にだ。
まぁその敵船ねぇけど。
勝三は播磨灘を眺めて船の数があまりにも少ない事に気付く。石山本願寺での戦いに英賀城も水軍を派兵していたのである。
「どうやら泉灘での戦いで播磨の水軍が潰れたのは本当らしいな。平三郎殿や若狭守殿の言う通りだ。左近亮の言っていた縄張りも間違い無しか」
横に並んだ阿波水軍の関船に事前の打ち合わせ通り干潮を知らせる旗が昇ってるのを確認して。
「開戦だ!!鏑弓と旗を!!」
和船は即時撤退や船を使う必要が無ければ浜さえ有り干潮と言う条件さえ揃えば揚陸が可能である。和船より頑丈に作られ重くなってる分条件が厳しくなるが一角船にせよ三国船にせよ船体が和船なのはそう言った理由だった。だってそうしねぇと嵐の時とかワンチャン沈むから。
何故こんな補足を今更入れたか。今回の作戦が思いっ切り城に乗り込む作戦だからだ。一角船より頑丈な三国船で川を登り城に向かって砲撃。その間に関船で田井ヶ浜から英賀湊に乗り込んで城攻めの流れである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◯◯◯ー◯◯◯ーーーーーーーーーー◯◯◯
ー◯◯◯ーー◯◯◯◯◯ー◯◯◯◯◯◯凸凸
ーー◯◯◯ーーーーー◯◯◯ー◯凸凸◯凸凸
ーー◯◯◯ーーーーーーーーーー◯凸◯◯◯
ーー◯◯◯ーーーーーーーーーーー◯◯凹◯
ーーー◯◯◯ーーーーーーーーーー◯凹凹◯
ーーー◯◯◯ーーーーーーーーーー◯凹◯◯
ーーー◯◯◯ーー英賀湊ーーーーー◯◯ーー
ーーー◯◯◯ーーーーーーー◯◯◯◯ーーー
ーーー◯◯◯ー田井ヶ浜ー◯◯◯◯ーーーー
ーーー◯◯◯ーーーーー◯◯◯◯ーーーーー
ーーー◯◯◯ーーーーーーー◯◯ーーーーー
ーーー◯◯◯ー◯◯◯◯◯◯◯◯ーーーーー
ーー◯◯◯◯ーーーーーー◯◯◯ーーーーー
ー◯◯◯◯◯◯ーーーー◯◯◯ーーーーーー
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◯海川・凹本丸・凸城
水尾川の先にある本丸へ三国船が進む。微風で推力を得る為に全ての帆を完全に広てだ。大筒の早合は左舷に集中させ弓火縄も偏重させていた。
「竹束を準備しろ!!港は無視して俺たちは本丸へ一直線だ!!」
勝三が声を張る。敵船は湊の浜に上げられ櫓代わりになっていた。故に本丸への道を塞ぐ物は無い。
直ぐに石垣と城壁に櫓が見える。
「面ォ舵ィーーーーーーッっぱあい!!」
新庄新三郎直頼の号令に舵をガタンと傾け操帆が合わさり船が船首を捻り波を作る。
「帆を上げろ!!」
続く号令に水夫の雄々しい声、綱が引っ張られ帆が上がっていく。
「竹束前へ!!」
帆の操作が終わると同時に勝三が次の号令を出し大筒の合間に竹束を担いで兵が並ぶ。
「錨ィ落とーーーーーーーーーーせ!!」
今度は新庄新三郎直頼の号令、錨を止めていた綱が落ち船体を急激に止めた。
「ーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
敵城の石垣の上、壁の裏と櫓から声。
「弓鉄砲来るぞ!!楯を上に!!」
勝三が声を張れば合わせたように矢と弾丸が降ってくる。不運な数人が鉛玉をくらい竹束が受け止め楯と船から矢が覆い茂る。
「水夫は安全な所へ!!コッチもお返ししてやれ!!」
上向きの大筒が白煙を吹き壁を砕き、狭間筒が櫓の兵を撃ち抜く。鉄砲は敵の頭を出す事を許さず、矢の雨が敵の壁向こうへ吸い込まれていった。
「竹束を下ろすな!!矢弾は撃ち続けろ!!弓狭間筒は装填を急げ!!」
甲板の上から水夫は消えて兵達が忙しなく動く。楯の下で大筒の砲身清掃が終わり前に出て子砲が装填された。その後ろでは弓が放たれ装填を終わらせた鉄砲から撃っている。右舷では狭間筒が数人によって装填作業が続けられていく。
「装填、万端です!!」
また砲撃が始まる。信貴山城の様に漆喰が塗られていない城壁は弓と投石を防ぐ為の物で大筒の鉛玉を叩き込めば簡単に砕け散っていく。喧伝狙いではあるが過剰。
そんな猛攻を続ける船の上で勝三は竹束をを支えながら片眉を上げた。本丸は石垣があるが他は盛土の上の城。それらを見て覚えた違和感に気付き。
「竹束の準備少な過ぎねぇか?」
播磨の事は聞いている。しかし如何にも大筒小筒に対する備が少なく感じた。特に大筒に関しては為されるがままだ。
まぁ織田家レベルで大筒使ってるトコ何てねぇから当たり前だけど。例えば国崩しで有名な大友家だって当主の出る全力戦闘でも数門がせいぜいだ。織田家の様に一方面軍で数十門とか正気の沙汰じゃ無いのである。
そりゃ想定との乖離は起きて当然だ。ただまぁ一刻くらいで本丸からの反撃が出来無くなるのはちょっと不憫だと思う。つか一番の理由は前回播磨に進軍した織田家が機動力の為に大筒を装備して無かったからだけし。
とは言え敵の反抗が無くなったのならやるべき事は一つ。敵の兵力と戦意を撃滅する追撃である。
「乗り込むぞ!!梯子を出せ!!弓鉄砲は稲田 大炊助の指示で切込衆の援護を!!」
ただコレはどうなんだろ……。
いや200ちょい年後に西の海で突撃提督がいるけど。
常識的にってか、こう、ダメだと思う。
まぁでも常識をかなぐり捨てたブッ飛んだ行動は敵へ驚愕を与える。その驚愕は正確性を失わせ動揺と称すべき小さな隙を産むのだ。その隙を上手く突く事が出来れば戦の趨勢を掴む事も出来るだろう。
「ギャアアアアう、海から鬼が出たぁ!!ゴフゥ?!」
「む、迎え撃て!む、迎え討つんじゃア!!御仏よ御笑らヴァハァァァア?!」
「か、掃部助様がぶっ飛ばされたァア?!アヴァ?!」
いや、趨勢もクソもねぇなコレ。梯子を登った先で目の前にいた三人。一人を逆モグラ叩きにし、一人をビリヤードの玉にし、一人をブン殴って沈めた勝三は城内に立つ。手直にある瓦を手裏剣の様に飛ばし、城壁の木板をもぎ取って槍の如く投げ。
「総大将は何処だアアアアアア!!!!!」
金砕棒を頭上で振り回して吼えた。
敵兵達は震え上がるが決死の思い。
武器を捨てて空を指差して見せる。
勝三は理解出来ずつい首を傾げた。
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”———」
何か上から声。勝三は首を上げる。燦然と輝く太陽に目を顰めながら。
「あ……」
その太陽を背にした影は人だった。たぶんさっき逆モグラ叩にした人だ。
「———あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!」
勝三の上がっていた顔が落下物……落下人に合わせて上から下へ。
「ベフゥッ??!」
ベチって落ちた。
ピクピクしてる。
息はあるっぽい。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
えっと。さて、どうしようね此の空気。渡辺甚兵衛任の後詰が船から登って来るまで如何しようもなかったねコレね。
まぁ取り敢えず英賀城は落ちた。