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城崩す城戦

「アッハッハッハッハ!!」


 信長が爆笑してた。鎧をガチャガチャ鳴らして笑っている。場所は越前国合波の白髭神社だ。


「ウッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」


 信長の前には甲斐八升にベロベロされてる勝三がいた。


「殿、その。水浴びだけして来て良いですかねコレ。神社ベトベトなっちゃうんで」


 右目を閉じた勝三は左半身ベッタベタのベッチャベチャにされながら言う。そんな訳で半刻(約一時間)後に評定を開く社殿へと向かった。信長の率いる本隊に合流するまでの前線の状況を事細かに報告する為に。


「端的に言えば敵の挟撃を警戒して退いたのですが燧ヶ城の状況を見るに朝倉方も撤退の補助が目的だったようで」


「うぅむ。相手方に立って考えれば確かに真柄勢を孤立させる選択は無い。それこそ全軍を用いてでも救うだろう事は頷ける話です」


 柴田権六勝家が勝三を見ながら言えば皆が頷いた。岸勘解由信周は勝三が話し終えた事に気づき一つ疑問が浮かぶ。


「少々宜しいか。敵はその後どうして後退したままなので?今庄を拠点にされる状況に甘んじるとも思えん」


 その問いに勝三は物見の報告を思い起こし。


「日野川の奥、湯尾の八乙女山の麓に陣取って動きません。物見によれば湯尾に入る道は日野川を渡る必要が有ります。十中八九は戻り難い場所に我等を釣り出しての決戦の構えかと」


 全員が顔を顰めた。軍略の初歩を知る者であれば地勢として非常に面倒な状況である事は自明の理だったからだ。湯尾は平地が狭く大軍の利を活かすのが難しい上、また敵地に近く万端にして万全の備えをしている。


 それは当然の事であるが故に織田家にとり死地である事は疑いようも無い。孫子の兵法書にも行きは良い良い帰りはダルいみたいな場所に安易に行くと死ぬ。逆に敵をそういう場所に誘い込んでブチ喰らわせば敵ボロクソにできるでって書いてるから。


「だがまぁ、やる事は変わらんな」


 信長が畳まれた地図を眺めていった。地形上しゃーない事なのだが越前への道はゴリ押すしか無いのだ。それこそ朝倉家の兵力が減っていなければ信長も強いて戦おうとは思わない地勢。攻撃側は防衛側の三倍の兵力が必要と言うが攻撃側は攻める地点を選ぶ事ができる何て事も無いのだ越前攻めは。だからこそ朝倉方の兵力が少ない今、多少の無理をしてでも攻め潰す必要がある。


「朝倉家が決戦を望むなら良い事だ。此方も敵対戦力の無力化は急務だからな。加賀の一揆も平らげねばならん」


 信長は勝三から受け取った地図を菅屋九右衛門長頼に広げさせ指示を下した。


 湯尾周辺

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 山ー◯◯◯1山◯ーーーーーーー山山ーーー

 ◯◯ー山山山◯ーー山山山山ーーーーーーー

 山山山山山ー◯ー山山山山山山山山山山山山

 山山山山ーー◯ーー山山山山山山山山山山山

 山山山ーーーー◯ー山山山山山山山山山山山

 山山山ーーーーー◯ー山山山山山山山山山山

 山山山ーーーーー◯ーー山山山山山山山山山

 山山山ーーーーー◯ー山山2山山山山山山山

 山山山ーーーーー◯ー山山山山山3山山山山

 山山山ーーーーー◯ーーーー山山山山山山山

 山4山ーーーーーー◯◯◯ーー山山山山山山

 山山山ーーーーーーーーー◯◯ーーーー山山

 山山山ーーーーーーーーーーー◯◯◯ーーー

 山山ーー山山山ーーーーーーーーーー◯ーー

 ーーー山山山山=山山山山山山山ーーー◯ー

 ー山山山山山山5山山山山山山山ー◯ー◯◯

 山山山山山山山=山◯◯◯山山山ー◯ーーー

 山山山山山山山ー◯ーー◯◯◯◯◯ーーー山

 山山山山山山山ー◯山ーーーーーーーー山山

 山山山山山山山ー◯ー山山山山山山山山山山

 山山山山山山山ーー◯ーー山山山山山山山山

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 ・=湯尾峠・◯日野川と支流

 1茶臼山城・23杣山城西御殿曲輪

 4北柚尾城・5柚尾城


 湯尾峠を封鎖する柚尾城へ西美濃四人衆。日野川に沿う形で柴田権六勝家と岸勘解由信周を先鋒に湯尾に入っていった。本軍が柚尾城城攻めであり日野川沿いは迂回軍である。


 殿軍を担った内藤勢と兵の少ない木下勢は本陣に控えた。勝三は本陣前の最終防衛線である。その本人は普通に本備えの陣中に呼ばれてるけど。


 勝三と信長の視線の先では峰の上に築かれた城に向かって続々と軍勢が進んでいる。真っ直ぐ進んで東へ登って切り返し西へ登っては東へ切り返す。最後に北へ真っ直ぐ曲輪を左右にした道を行くのだ。


「戦ってる間ずっと思ってたんですけどホント城硬めすぎでしょ。大概が堅城すぎるんですけど」


 物資や周辺国人への対応に忙しい信長の目の代わりとして戦況を見る二人の将。


 その一人たる勝三が並ぶ櫓を見て改めて言った。峠道を挟む二つの曲輪には丸太と板で作られた井楼櫓が並んでいる。その其々に置き楯が並んでいた。そうやって防御力を上げ障壁の裏から敵兵が炮烙や石や岩を落とす。


 一緒に戦況を見る為に並んでいた池田勝三郎恒興もうわぁ……って顔で見てた。


「まぁ守る上での定石だからな。コッチも地勢の所為で力押しか手が無いから余計にだろう。アレに突っ込んでく卜全殿の気骨はとんでもないな。岩とか落とし過ぎだろ」


 それだけ朝倉家の士気が高く投石や矢弾が止まる所を知らないのだ。いやマジで普通にバタバタ兵が薙ぎ倒されていってる。攻城とはそういう物だが朝倉家の迎撃は非常に苛烈な物。


 が、進軍は止まらない。


 確かに城は硬く迎撃は苛烈だが圧倒的な数で進む。不利ではあるが竹束で身を守り鉄砲を撃ち返しながら前へ前へ。経路を限定される中で攻撃の手を緩める事を強要した強引な前進。


「あ、拙いです勝三郎(池田恒興)様」


「マズい、か?」


 織田勢が坂を登り切ったと同時に勝三の唐突な言葉。


「真柄殿が来ます。誰か御屋形様の伝達を!戦況が動くぞ!!」


「そんなバカ、な!?」


 確かに真柄十郎左衛門直隆は強いが姿も見えていない。流石に判断が早すぎると少々の呆れさえ抱いた。しかし言っている途中で池田勝三郎恒興も違和感を覚る。


 視界に入るのは二つの曲輪の合間へ続く道から兵が溢れ出た。


 遠くに在って良く見える余りに鮮烈な赤い竜巻。それが晴れると一人の武将が吹き飛んで来て立ち上がる。彼を追って現れたのは大太刀担ぐ紅の大武者が一振り。


「そんな、バカな……」


 池田勝三郎恒興は全く逆の感情で全く同じ台詞を吐く。その言葉を引き出した男は亡骸に一礼し悠々と城に戻っていった。そして前線から伝令が駆けてくる。


 それに気付いた二人は天幕内に共に駆け込んだ。ほんの少し遅れて先程の伝令が駆け込んで来た。戦場から目を離していた者も凡そ状況を察する。


「急報ッ!!氏家卜全様御討死の由!!」


 騒ついた。戦場に在って静かに閉目閉口していた信長も驚愕に目と口を開く。思わず立ち上がり。


「それは本当か!!?」


 信長の問いが全ての将兵の心情をそのまま代弁していた。


 伝令は呼吸一つ。


「は、先陣が敵の逆撃により崩壊。その友軍を救う為に殿を務め討ち取られた由に御座います。氏家勢は多数の将を討たれ壊滅の由」


「そこまで尽くしたか……らしい事だ」


 信長が発した呟きは氏家貫心斎卜全と彼の気骨に感じ入る様に。だが本質として惜しい事だと、そう思う。


 氏家貫心斎卜全は西美濃三人衆の中で最大の勢力を誇り最も信長に協力的な男だ。心情としても戦力としても非常に強力で頼りになる家臣だったのである。今でこそ重臣と言う程度だが美濃を得た当初で言えば東濃の要と言って相応しい男と言うべき者だった。


 坂井右近将監尚政、森三左衛門可成、氏家貫心斎卜全。信長の頼りにする家臣達。彼等を正々堂々討ち倒したからこそ思う。


「真柄殿は、花実兼備の武将だな」


 それは感嘆と共に信長が代表して発した賛辞である。


「正に」


 幾度と戦った勝三が染み染みと頷いた。


「頼むぞ勝三」


「おまかせを」


 勝三が短く頷き立ち上がった。武士の感性として仇ではあるが敵ながら天晴れとしか言えない好敵手。先の世界の記憶はあれど勝三はやはりこの時代の武士だった。


 オラ、ワクワクすっぞ!って感じ。らしい物言いをすれば武術を糧にする者として強者には敬意を。そう言う事。


 と言うか勝三も良い加減に前線で戦う立場では居られない事を自覚していた。時代的にゼロには成り得ないが立場として当然だ。だから越前攻略を前に勝三は一層の戦意を激らせ濛々と気炎をあげてみせる。


 ……まぁ信長とか蒲生家の息子さんとか森家の武蔵クンとか立場とかガン無視で前線出るヤベェの居るけど。


「コイツ何で湯気出てんの?」


勝三郎(池田恒興)、何を言ってる。勝三だぞ?」


「……あ、しまった納得しかけた。三郎様、勘弁してくださいよ。湯気は出ませんって普通」


「それは……確かに。勝三だったら何でも有り得ると思ってしまっているな……。俺ちょっと大丈夫かな?」


「うーん……」


 池田勝三郎恒興と信長が何か言ってるが勝三は気にせず。


「じゃあ、ちょっと城落として来ます」


 そう言って黒金のブツを担いだ。池田勝三郎恒興がふと違和感を覚えて問う。グニィって首を傾げてから。


「アレ?勝三、お前の金砕棒ってそんなんだったか。もっと細くて長かったような?」


「あ、コレ大筒です。試作の抱え大筒。何と驚きの五百斤(約300㌕)という軽さ。私の満貫成就の一歩を知らせる書状と共に来た幸運の一門です」


「……なんかよく分からないがソレ人として抱えちゃダメだろお前。何と驚きなのはお前の膂力だよ。それ抱えって付けない、普通の大筒だろ担ぐなよ人として」


 池田勝三郎恒興は譜代の家臣としては稀有な事に常識人だった。まぁそれはさておきである。四人衆が帰還すると間髪入れず織田家は柚尾城攻略軍を出す。


 最先陣は勝三率いる内藤家の三千だ。




「織田の軍勢は質も数も異常に過ぎる」


 柚尾城で真柄勢の誰かが言った言葉だが其れは越前の武家が悉くの総意だ。彼等の眼下には英雄を一人失った筈の敵が新たな軍勢を差し向けている。背を預けた友軍は死力を尽くしているが敵の迂回軍に押されっぱなしの状況。


 正直マジで勘弁してほしい。


 何か流れで朝倉家最強の戦力と化した真柄衆でさえそう考える状況だ。だが少なくとも複数の折れぬ男が居るのは確かだった。その筆頭たる真柄十郎左衛門直隆が立ち上がる。


「うわ。内藤家かよ敵」


 これも兵の言葉。悠然たる真柄十郎左衛門直隆が足早に動くと有れば即ち敵は好敵手。答えは出ている。


三郎次郎(小林吉隆)殿、弓鉄砲の備えは!!」


「万端で御座います真柄様!!」


 湯尾峠を挟む東の曲輪を守備するのは真柄勢と小林勢。本曲輪の城主は河合安芸守吉統が務めていた。そして北の麓に魚住備後守景固が湯尾全体の総大将として布陣し退路を守り戦っている。


 真柄十郎左衛門直隆は越前の為に最良の負け戦を目指して戦う。この物言いは多少の語弊を抱くかもしれないが戦略的に敗北を認めねばならない現状では仕方のない事だ。だが同時にだからこそ心置きなくその武を振るえるだりう。


 故にもう既に大太刀は抜身となり陽光を持って銀と二条の赤が睥睨する。だがそれ以外の全てが平静を見せて凪いだ空気を錯覚させていた。しかし外に漏れず内で爆発を繰り返す戦意は今にも八切れそうだった。


「さぁ敵も攻撃を始めるぞ!!我等も弓鉄砲構え!!礫は絶やすなよ!!」


 投射武器を持つ者達を指揮する小林三郎次郎吉隆の声が聞こえる。東の曲輪は本曲輪より幅があり登ってくる敵を正面から攻撃できるようになっていた。また敵は東に向かって登り東曲輪の石垣に突き当たって北に向かって進まなければならない。


 とどのつまり重い武具に盾を担いで坂を登って来た敵が壁に突き当たり隊列を乱して回れ右をする場所。敵をメッチャ殺せる最初の殺し間だ。


 が、内藤家は鍛錬モンスターしかいねぇ。丸太ダッシュを基本とした鍛錬をする変態だ。礫や矢の範囲では置き楯でテストゥドの様な隊形を取り強引に進む。


「よし火蓋を切、ええ?!」


 小林三郎次郎吉隆は驚愕した。敵が銃の射程に入った途端、場所で言えば本曲輪の麓に入って超ダッシュ。寸詰まりな竹束を掲げてマジのダッシュ。


「アレ?」


 そして小林三郎次郎吉隆は気付いた。気付いて号令さえ忘れて思わず目を擦る。そして困惑そのままに。


「何で?」


 と呟いた。


 目の前の光景はこうだ。


 敵の大将っぽいのが亀の様な隊形から一人で離脱し竹束を突き出しクソデカ抱え大筒を担いで爆走迫ってくる。


「よ、よく分からんが撃て!!!大手柄だぞコレは!!!!!」


 ドドーンと一斉射。白い硝煙が壁に沿って連なる。そのまんまに弾丸は勝三目がけて一直線に。


 ガンと合わさり並ぶ竹束と鉄塊。鉛玉の悉くが其れ落ちる。走る勝三は止まらない。


「え?ちょ、は?ふ、防ぎ矢!!早く!!」


 よく対応したものだ。小林三郎次郎吉隆は。いやマジで。突拍子なさすぎな状況なのに。


 敵大将、普通じゃないもん。普通やっても死ぬもん。普通にアホだもん。


 が、時折いるのだ。到底不可能な無茶苦茶やってケロッとしてるヤベェのが。不条理とも言える異常者が。


 勝三が竹束を振り回す。矢が当然の様に落ちた。そして砲口が正面を向く。


 たった一門のたった一発。埋め尽くす轟音と白煙。城壁の一部が吹っ飛んだ。


「イッテェェェェェ?!」


 アホみてぇに勝三も吹っ飛んだ。このアホ火薬の量を勝手に増やしたのである。アホだから。


 いや城壁が高くてしゃーない部分はあったけど単純に倍にしやがった。


 こんな代物でする事でも試作品でやる事でも大将がやる事でもねーって正直。


「ゴフゥ……!!」


 ゴロゴロと駆け上がった坂を転がり落ちて本備えの竹束の壁にぶつかる勝三。初のダメージは敵からの攻撃ではなく自爆である。ベチャってなってる勝三が竹束と置き楯の内側に引き摺り込まれた。


「ウチの殿ってこんな馬鹿だったっけ?」


「大砲が出来て燥いでんだこのバカ殿」


「青山様も稲田様も心底御怒りだな」


「お二人で済むかね今回のは?」


 ずりずりずりーって両肩引っ張られて奥へ奥へ引きずられる勝三の左右から兵の声。勝三は今アレなのだ。テンションやべーのだ。


 試作の抱え大筒と共に耐火煉瓦(になったら良いなぁ)の制作が始動したから。勝三が出陣した時に漸く水車と臼を使った材料の粉砕が始まってたくらい。要は版築と石鹸を作るノリで煉瓦を作り始めたとの書状の所為。


 主君の為にと無い頭捻った帆船は叶った。しかも瑕疵が無いとは言わないが凡そ完璧に、言い換えれば下手に期待以上の成就してしまったのだ。じゃあ後はこの煉瓦が使えて大砲作れば織田家最強で全部安泰じゃね?って下手な事を考えたのである。


 だからまぁ、一つ一つ連ねて言おう。


 一つ、今目の前に眼前に本気も本気をぶつけられる最高にして最強の好敵手がいる。


 一つ、今己の後ろに兄とも言うべき親愛と忠誠の一切に不足ない主人がいる。


 一つ、織田家と内藤家を護る未来を尚一層深められる書状がある。


 故にマジめっちゃテンション上がってた。


「内藤殿は随分と愉しんでおられるな」


 銃声と呵成、それと伝令の報告。真柄十郎左衛門直隆は愉快そうに笑って言った。ここまでくれば戦いを楽しむくらいの感覚さえもある。


 ズンと立つ。ただそれだけ。だが山が揺れ天を突かんばかり。


 真柄十郎左衛門直隆が城壁に沿って門へ向かえば銃声と弓弦の合唱が後を追う。それを聴きながら真柄十郎左衛門直隆は南北を貫く通路へ繋がる門の前に。櫓から壁から弓鉄砲に岩礫が通路を進むだろう好敵手へ向かって叩きつけられる。


「さて」


 真柄衆の得物はこんな場所で振るう物では無いが、こんな場所でさえ振るえない様な柔な鍛え方はしていない。


「来たな。勝三殿を出迎えよう」


 ドッと火薬が叫んでボッと門が丸く膨張して響く。


 門が泣く。泣いて割れては六角の金砕棒が伸びた。


「お待たせ致しました真柄殿」


 大筒は足元。金砕棒を戻して仁王立つ勝三。顔は笑み。


「オラアアアアアアアアアアアアアア!!」


「フヌアアアアアアアアアアアアアア!!」


 次の瞬間には勝三と真柄十郎左衛門直隆が得物を交差させていた。もう完全に怪獣映画みたいになってる。暴れに暴れて周囲が砕けていく。二人の踏み込みで地が沈み得物が当たって門と壁が砕けていく。どちらかが叩きつけられれば壁も地面も何もかも蜘蛛の巣状の罅が入る。人が二人争うだけだが城そのものが支えられない。


 周りの誰もが近付けずにいた。近づける訳が無いのだ。城と言う拠点で長大な得物が振り回されてるから。両軍の兵さえ邪魔になり巻き込まれる為に奇妙な停滞が起きている。


 そっからまた二刻(四時間)ぐらい戦ってた。その合間に河合安芸守吉統の籠る本丸まで与三が入り込んだがしかし落城には及ばず日が暮れる。二人は未だ相争うが周りが疲労困憊だ。


「やっぱ()ッよ」


 勝三は本陣に戻る道中呟く。だが朝倉家は柚尾城を放棄した。城ボッロボロだし背後取られそうだから。


 織田家が前進する前に朝倉家は湯尾各所から後退。日野の平野まで下りその日野ヶ原にて体制を立て直して布陣した。しかし海路を元六角家家臣団が進んだ事で更に撤退。


 村国山の麓で双方が最後の決戦の構えであった。

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