表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/161

当たるも八卦 当たらぬも八卦

ブクマ・ポイント・いいね有難う御座います。


この度、個人的な新記録ブクマ2000に到達しました。


マジかってなりました。マジかってなってスマホガン見しながら


ᕦ( ゜д゜)ᕤッシャオラァやったぜ!!!!!


フゥーーーーーーーーーーーーッ⤴︎⤴︎⤴︎!!!!!!!!


って感じになったのでストック放出して今日から来週の日曜まで一日一話更新します。


暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。

「まぁま雰囲気的にこうなるとは思ったよ。そう言う意味で十二分にやってくれたさ生糞坊主供は。生臭くらいには呼び方を変えてやっても良いかもね」


 呟く様に言ったのは馬上の朝倉左衛門督義景だった。銀箔押二枚折紙頭立兜を被り日野川の流れ出る山間に向かいながらだ。何か猫みてぇな変わり兜は当世具足と共に銀に輝き家臣民草を照らしている。


「では教如殿に撤退を進言致しましょうか」


 朝倉左衛門督義景の背後に侍る一人、鳥居兵庫助景近が問うた。朝倉左衛門督義景はヤレヤレと頷いて。


「そうだねぇ〜せめて一度押し返すくらいには役立って欲しかったけど十分でしょ。あれだけ削れれば戦後に門徒衆が襲い掛かってくる事は無いだろうしね。少なくとも僕らが織田家に負けるまでは動けないと思うよ?」


 朝倉左衛門督義景の思惑は随分と修正を余儀なくされた。降伏が出来なくなった事で戦略目標は越前の堅守から降伏へと変化したのである。筋道としては地形を活かして織田家を跳ね返し朝倉家侮り難しと思わせマシな状況での降伏と言うのがそう。


 だが問題となったのは本願寺と三好家が降伏し幕府も実質的に消滅した事で加賀一向一揆が反朝倉の色を濃くした事だ。元より朝倉の内紛に介入し争い続けた本願寺一揆衆、南方で織田家と北方で本願寺と戦うとなれば燼滅は必至だ。そこに反織田の本願寺残党が現れ其れ等を織田家に降伏と言う既定路線を隠して援助する事で別れた本願寺両方と協力する形を取る事にした。要は親織田派と縁を保ち話を付け話せる状況は残しながら裏では実態としては反織田派と協力体制を取る形。


 利用したのも正しいがそうせざるおえなかった状況。織田家への降伏後を見越し朝倉家としては本願寺の力を削ぐ必要があった。本願寺と呉越同舟して織田家と戦かわなければ織田家に降伏する意味が無い。何故ならば朝倉家の次の敵が消えれば朝倉家や越前国人など不要だからだ。


「では帰国を認めると伝えて参ります」


「すまないけど頼むよ。ああ、食い物は確りとくれてやりなね。略奪なんてされたらかなわないから」


「はは!」


 鳥居兵庫助景近が本願寺の使者の元へ馬を走らせるのを見ながら朝倉左衛門督義景は苦笑いを浮かべた。


「まぁ曹洞宗だけど地獄行きだろうね僕は。阿君と愛王、そして越前の為なら望んで地獄の悪鬼も相手にしようじゃないか。織田家には大鬼も居るし丁度いいよね」


「確かに敵を知るのは肝要。なれば私も共に地獄へ御供仕る故に良く敵を見なければ。おそらく兵庫(鳥居景近)殿も私と同じく先陣を願うでしょうな」


「お、頼もしいね。君達が居れば地獄も悪鬼も怖くない。じゃあその勢いで織田の大鬼を退けて十郎左衛門(真柄直隆)殿と共に討とうじゃ無いか。先ずは勇戦した友人達に帰ってきて貰おうか」


 その頃の今庄、織田家陣営。本願寺勢を軍事的な壊滅に追いやった、即ち半数以上を討ち取った後始末を終えた内藤家と丹羽家の諸将が並んでいた。彼等の視線の先には燧城に備えた防衛陣地から来た伝令が跪き状況を伝えている。


「真柄勢、撤退致しまして御座います」


 凄い疲れた顔の将兵。


「何回目コレ……?」


「えーと、五度になりますかね」


 勝三の呟きに伝令の山内伊右衛門一豊が答えた。


「それは凄い。あんなのよく木下殿は凌げているなぁ。援軍は必要ですか?」


 凄い顔で感嘆する勝三に代わり与三が問えば山内伊右衛門一豊は一考し。


「御気遣い有り難く。近々願う事になるかと存じます。何分、若武者から老武者まで強い事強い事。その時は是非に」


 答えが帰らずアレって顔の勝三の脇を与三が肘でつつき。


「良いね?勝三」


「あ!うん、おう。では伊右衛門(内藤一豊)殿、何時でも頼ってください。備の一つくらいなら此の山間の地なら送れますから。余計とは思いますが唐の頭を被った十郎左衛門殿には御気を付けて下さい」


「重ね重ね忝く」


 山内伊右衛門一豊が一礼して去ると入れ替わる様に伝令が。前衛から 小笠原(上田)甚左衛門重元がやってきた。


「物見で確認致しましたところ本願寺勢は完全に撤退する模様です」


「それじゃあ明日か明後日には真柄殿と決着を着けれるな。丹羽殿には引き続き此処を守って頂こう。藤吉郎殿には申し訳ないけどこればっかりは譲って貰おうか」


 そう言って勝三が金砕棒を握り武者震いと喜びで震えながら立ち上がる。


「勝三殿、気持ちは分かりますがそれは少々危険では?」


「燥ぎ過ぎだよね勝三」


 が、普通に丹羽五郎左衛門長秀と与三に正論言われた。何かはっちゃけてるけどコイツ(勝三)総大将だからね。何を嬉々として一騎討ちしようとしてんのって話。勝三はヒョットコみてーな顔でショボーンと座る。


 そりゃ正論だもの。勝三は溜息一つ自分を入れ替えて顔をキリっと。


「じゃあ俺達は控えておくんで援軍が必要になったらすぐ呼んでください」


 それは数秒前にド正論を叩きつけられてなければ勇壮な表情だった。


「じゃあ与三、藤吉郎様の方を頼むわ。俺は此処で陣営整えとく。さて——」


「敵襲、てきしュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」


 陣幕に迫る声、陣中に広がる鐘、諸将が兜の緒を締め得物を握る。


 天幕を跳ね上げ幌を付けた伝令が跪き。


「伝令ッ!敵勢接近ッ、数不明ッ、尚増加中!!」


「御苦労!!」


「御免ッ!!」


 端的に現状を伝え勝三の返事を聞いて即座に一礼し走り去る。


「……誰アレ」


 勝三が感嘆と共に言えばムキムキが凄い嬉しそうな顔で後頭部を掻きながら前屈み。


「儂の子です」


 マジすっげぇハードボイルドな声。やばいバリトンボイス。バリトンボイスってかブゥアアリトゥンヴォイス。


「ああ弥兵衛さんの。そりゃあ通りで逞しい訳だ。端的な通達もそうですけど随分と出来るでしょう」


 勝三が言って内藤家の諸将が全く同感と言わんばかりに頷く。ブゥアアリトゥンヴォイスが八の字眉の下で目に喜色を宿した満面の笑みを浮かべ。


「勝三殿にそう言って頂けるとは息子にとり望外の栄誉ですな。私も鼻が高い」


 彼は丹羽家の家臣で鬼弥兵衛と呼ばれる豪の者。大谷弥兵衛吉秀と言うムキムキマッチョマンだ。丹羽五郎左衛門長秀が背に構え彼が鋒となる。


 丹羽家の腹心中の腹心だった。


 そしてまた母衣衆が天幕へ入り込んでくる。


「で、伝令!!敵、先頭に牛車!!」


「牛車……?」


「は、その、何故か牛車が先頭を走っております。それも随分と大きな物が」


「御苦労、北の京(一乗谷城の事)とは言うけど牛車?」


「……牛車。勝三、マズイ!!」


「どうした与三?」


 同時に聞きなれた重音。


「大筒か!!!」


 勝三達は外に飛び出る。丹羽五郎左衛門長秀が苦虫を噛み潰した様な顔で。


「柵が破られている……。弥兵衛!!」


「は!!」


 敵の軍勢は続々と、しかし整然んと流入してくる。柵が打ち倒され陣営の中に敵が入り込んでいた。陣営は混乱するが丹羽家の即応。


「丹羽様」


 勝三に視線が行く。


「丹羽家は敦賀を守っている北の守りの要。俺達が背に布陣したら直ぐに入れ替わってください。此処は俺達が殿を勤めますので大鶴目に布陣を願います」


 丹羽五郎左衛門長秀が勝三に鋭い目を向け。


「死んではなりませんよ勝三殿。貴方に万一があれば織田家そのものの危機となる」


 勝三は笑う。


「まぁ逃げるくらいなら問題ないです。それより俺達を塞ぐ真柄殿が問題ですよ。あの人は戦わず退く事さえ難しい」


「分かりました。御武運を」


「丹羽様も。一先ず敵の気勢をヘシ折ってきます。与三、布陣を頼む。馬廻は全員俺に続け!!」


 勝三が金砕棒を担ぎ天幕を出た。


 織田軍陣営にに乗り込んだ朝倉軍最先鋒は富樫弥六郎長繁だ。あの自称樊噲である。


「オラオラァッ!!早く柵を倒して敵を殺せェッ!!死んででもダァッッッ!!!!!」


 槍を振るその顔は焦燥、彼等の背に並ぶのは砲口と銃口、何故なら寝返りの書状見つかったから。早い話が織田家に降ろうとしたのだ自称樊噲。


 バリバリにバレてたのだ自称樊噲(笑)。


 だからまぁ、おもっくそ背中から銃砲の弾丸ブチ込まれてしゃーない。


「早くしろブッコ——ヒッ??!」


 自称樊噲の真横にいた馬廻がパァンなった。腰から下だけ残った人だった物がグシャリと落ちる。残ったのは臓物と共に飛び散った血の赤だけ。


 前からか後ろからかも分からない鉛玉によって。


「チ、チクショオオオオオオオオオ!!!」


 眉庇から垂れる赤い肉を掌で拭い富樫弥六郎長繁は吼えた。ただただ前に前に進んで漸く見えた柵の合間に槍を突き出す。


 が、鳴動。


 馬が過剰な恐怖で嘶き前足を上げ跳ねる。


 富樫弥六郎長繁は落馬したが何とか立つ。


 足元が揺れて見上げれば目の前には大鬼。


 そして咄嗟の判断で得物の槍を突き出す。


「な、な、なンだコイツは……」


 ハッとする。己の槍が握られている。引く、が微動だにしない。


 ガっと頭に血が昇った。


「何だデカブツゥッ!俺は今樊噲だぞ!!」


 腕に力を込める。


 でもやっぱり動かなかった。


 次の瞬間にはフワリ浮遊感が全身を襲う。


「あ?」


 黒鉄の鉄柱を担ぐ鬼に片手が掌が見えた。


 腕一本で飛ばされたのだと。


 分かって落ちた。


「さて、一踏ん張りするか」


 なんか槍を突き出して来たのをポイってした勝三は馬廻が周りを掃除する中で柵の合間から前を見る。


 朝倉兵の銃口と砲口。


 愛馬大黒が蹄を鳴らし立髪を揺らして嘶くのに笑みを浮かべ勝三はその首元を撫でて金砕棒を前方へ。


「突撃ィ!!!!!」


 マジで誰か殿って何か教えてやれよホント。コイツ馬周りだった頃から何も成長してねぇもんコレ。相対する敵兵マジ吃驚して戦闘中に自分の目ぇ擦ってるって。


 敵兵も思わず間の抜けた事をしているが他の敵と違うのは真柄十郎左衛門直隆と言う人物を知り彼の口から織田家の内藤三と言う男の委細を聞かされている事だ。


「来たぞ大鬼だ!!大筒鉄砲は後ろへ、防ぎ矢急げ!!長柄前に!!!」


 勝三が金砕棒を振り回して作る黒い円と大黒の顔を守る厚い馬面が矢を弾く。当然、勝三に続いて先頭を走る馬廻達も同様に重装重防御の馬鎧を纏っていた。砲撃銃撃となれば怪しいが弓矢如きでは最早この質量兵器とも言うべき突撃は止められない。朝倉軍前衛主力に向かって突っ込んで行く騎馬隊を先頭にした内藤家本備え。


 勝三の殿戦が始まった。


 勝三の正面の軍勢は河合安芸守吉統の二千。齢五十を超え落ち着いた雰囲気の大将は軍配を握り勝三の軍勢を睨む。弓矢の効果は無く鉄砲の装填は進まない。


「徳川の本多なんとかにせよ織田の内藤勝左衛門だの正気では無いわ。銃口と槍衾の直中に突っ込んでくる輩の相手などしとう無いぞ正直。ゆっくり退くぞ皆の者ォあのまま組み付かれては堪らんわァッッッ!!!」


 法螺響き河合安芸守吉統の軍勢が勝三の突撃を前にしてゆっくりと横陣のままに下がっていく。しゃがめばそのまま槍衾が出来上がる状況を作りながら。


「バケモンか敵将は。佐久間殿じみた事を」


 勝三は大黒の上で漏らす。内藤家の強さとは突撃に在り、その突撃を強化する為に馬鎧を装備した。これは通常なら防御力と突破力の向上と言う極めて高い効果を発揮する。


 では何が問題か。それは体力だ。馬だって疲れる。


 馬鎧は防御力を上げるが相応に重い。とすれば突撃の出来る距離、敢えて言い換えて射程範囲は短くなるのだ。そもそも突撃を受ける直前に軍隊の形を保った後退とかド変態の所業である。


「チッしゃーねぇ退くぞ!!」


 流石に殿戦と言う自覚があれば無理、いや無茶をするには早過ぎる。勝三に続いて騎馬が柵の穴へ戻って行きついでとばかり矢を放って帰った。


「冷静さも失わぬか。これは普通の追撃と思うと大怪我するな」


 河合安芸守吉統が馬上で言った。その眼前では開けた穴に勝三が仁王立っている。たかが人一人を前にして攻城戦をしているような感覚。


 しかし各所の柵が打ち倒され陣営に朝倉兵が雪崩れ込めば眼前から消える。


 引いた勝三は馬上にて金砕棒を振るい東奔西走を始めた。陣営の東に行っては騎馬の突撃で入り込んだ敵を轢き潰す。陣営の西に行っては騎馬で敵を追い散らし敗走させて。


「ガアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 織田勢が追いつかれそうになれば勝三が赤く染まって進み行き味方を追う敵の横腹に突っ込む。また雪崩の様な敵の腑を食い破って粉々にし敵の反撃の前に即刻離脱した勝三は敵の攻撃の下で膝を伸ばす。。


「よし俺達も退くぞ!!」


 だがそれも直ぐの事。味方が退き切ったのを確認して勝三も馬廻を率いて下がる。撤退する渡辺甚兵衛任、可児才蔵吉長、藤堂源七郎高則が率いる本備えの背へと。


「馬を休ませろ!!替え馬を頼むぞ!!」


 勝三が下馬し大黒を撫でて馬丁に預ける。大黒の代わりに勝三の元へ連れて来られたのは青毛の馬。甲斐で勝三が買った定期的に大豆を八升食べないと拗ねる事から甲斐八升と呼んでる馬だ。


 数え二歳(三歳)にして五尺三寸(約160㌢)の巨体を持つ大食漢ならぬ大食馬。


「ちょ?!頭噛むな甲斐八升!!コラ!!」


 特徴としてメッチャ気性が荒い。勝三の頭ガジガジしてる。大黒は気位は高いが紳士的で落ち着いた馬なのだ。


 対して甲斐八升は噛むしタックルしてくるしベロベロ舐め散らかしてくる。


 大黒がブルルと溜息の様に鳴いてから尻尾でベシンってした。甲斐八升が不貞腐れた様な顔をして勝三の頭から口を離す。勝三の兜ベッタベタ。


「助かったよ大黒。ちっとゆっくりしといてくれ。乗るぞ甲斐八升」


 ヘッみてーなリアクションで顔を背けるが乗りやすい様に移動する。大黒がそれを見届けてから馬丁に付いて行った。因みにこの上下関係は大黒の娘に甲斐八升がチョッカイかけてボコられたのだ。


 閑話休題。


 勝三は甲斐八升に跨がり直ぐ。


「撤退!!」


 さて唐突だが勝三の軍の鍛錬として印象的なものは無いだろうか。そう勝三が重視するのは何か担いでメッチャ走る事。現状でその成果が著しく顕ていた。


 何が言いたいってマジクソ早い、足軽さえアホ早い、イカれてんのかってくらい早い。騎馬が並足では無く速歩で進んでも何とかなってる程に。三十六計逃げるに如ずを体現し過ぎな絵面だが敵も迫る事は変わらない。


 それもその筈で騎馬隊だけを集めた追撃部隊だ。在るべき武者の姿の最たる馬上で大弓を握る精兵共。敵の機動戦力主力だろう者達。


「もう迫って来たか。弓を、騎馬隊続け!」


 勝三が翻って弦を引く。馬廻が続き敵もまた弓を構えた。両馬群の馬蹄に大地が鳴動し軍馬の吐息が重なる。


 ギ、と更に引き。


 双方の矢が放たれ交差した。内藤勢の馬鎧が矢を悠々と弾く。対して朝倉勢の数人の人体中心を矢が貫いた。


「抜刀!!」


 勝三の号令で太刀を抜いた。


 矢に続いて馬群が交差する。


 残ったのは内藤家の騎馬隊。


「ハイ撤収」


 応と即答。


 撤退戦で一番面倒な敵が消えて超逃げる。


 マジ脱兎。


「何と言うか。これを繰り返すだけなら訳は無さそうじゃのう。十八町(約1.8㌖)程じゃろうか」


 騎馬を並べた渡辺甚兵衛任が言った。


「ええ、まぁ距離は。問題は燧城ですよね。四半里(約1㌔)が覚悟の決め所ですよ」


 その後は朝倉家の繰り出した騎馬隊を二度ほど撃退までは本備えの背後を守った。だがその二度目の追撃を振り払ってからは騎馬を率いて本備えの前に出た。南の燧ヶ城からくる真柄家に対して第二防衛戦にする予定だった柵を超えて。


「そう、問題は此処だよなぁ……」


 勝三が笑みを浮かべて。


「大黒を連れて来てくれ」


 勝三は乗り換えて前を見た。


「どける気はないか」


 大太刀握る化け物がいる。


 横陣では無く縦陣を取った化け物供。


 その大頭たる真柄十郎左衛門直隆が先頭に。


「ありゃ殺す気だな」


 勝三は手を挙げ。


「突撃!!」


 振り下ろす。


 前進。


 馬蹄が響く。


「ついでだ」


 回る金砕棒。


「こっちも殺るぞ!」


 勝三が先陣を切って何時も通りに突っ込む。


「オラ気合い入れろォッ!!!!!」


 眼前は鹿角生やした赤獅子を乗せる大武者。


 その兜の唐の頭は鬣代わり炎の如く揺れる。


 その双眸は二条迸る大太刀と共に眩く輝く。


 落雷の様に早く土石流の様な勢いの武者供。


 猛々き好敵手たる二つの馬群が獲物を握り。


 衝突する事なく普通に交差して過ぎ去った。


「あれ?」


 勝三が首を傾げる。


「うん?」


 真柄十郎左衛門直隆み首を傾げる。


「止めに来たんじゃないのか?」


「止めに来たのではないのか?」


 二人とも同じような疑問を口にした。うん、まぁ何でや感が割とあると思う。ので勝三は何となく分かるだろうが双方の状況を軽く整理しようと思う。


 内藤家は朝倉家の行動を南北からの挟撃と考えた。要は織田家の先陣主力に出来る限り損害を与えようとしているのだと考えたのだ。そう真柄家が出て来た故に狙いは内藤家の戦力の殲滅が目的だと考えたのである。


 で、真柄家の方。


 真柄家は先ず単純に兵糧物資の補給が不可能になっていた。まぁ当然っちゃそうで何せ燧ヶ城は包囲されていたのだから物資は減るばかり。故に朝倉家の攻撃は実態として解囲が目的だった。


 そして主力の攻撃に対する余りにも早い撤退を見て織田家が戦線の後退、厳密に言えば日野川と言う渡河戦の恐れがある地点。ここで本体との決戦をする為の誘因として戦線の後退を行っていると考えたのだ。とすれば真柄家は本体の攻撃に合わせ包囲を突破し織田軍に追撃をかけたが眼前に内藤家がいたのである。


 これで完全に計られたと思った。


 戦線を後退させ兵力を集め包囲という目隠しの後に内藤家で真柄家を撃滅する気だと。


 故に二人して首を傾げる事となった。


 うん。あれぇ……?って首傾げながら両陣営が後退していった感じ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ