3話 遡る5年と過ぎる50年
「5年位前か、成人して少し位か」
顔を引っ張り、夢では無い事を理解する。
これも”時の静止”の副作用なのか?まさか若返るとは、考えもしてなかった。
21歳から、役5歳位か?
若返る事が出来るなら、疑似人体に続く、”不死身の再現”に役立つだろう、
「いやそうじゃなくて、……面倒だな」
この2つの副作用がある限り、”時の静止”は闇雲には使えない。
自我も無く、存在が消える事にすら気付けない。
そんな恐ろしい事、使える筈も無い。
「チッ………」
「片付け、終わりました」
「あぁ、すまない目的以外の事をさせてしまって」
暴走した突風による散らかった部屋中の掃除を彼女に任せていたのだ。
「構いません、私は万能型がベースですので、この位は出来ます」
「…そうだ、あの時皇歴七十年、九月、二日、その日から何年経った?」
ようやく、落ち着いて目的の事が聞ける。
”星読み”の特性、時を確実に、間違い無く刻まれる。
この”カストル”のみが絶対時計なのだ。
「……約、五十年です、今は皇歴百二十年、八月、二十日、ほぼ正午です」
「何……?五十年?」
それを聞き、頭痛がする。
確かに数年程度は予測出来ていた。
しかし五十年も、とは思っていなかった、ほぼ全てが変わっているレベルだ。赤子だって老人に、苗木も立派な大樹に、それ程の時が過ぎたのだ。頭痛ぐらいする。
「………どうするか」
「お茶を入れて来ます」
「……頼む」
カストルはすぐに部屋を出て下のキッチンへと向かった。
数年と高括っていたので、バートンに復讐でもと考えていたが、五十年となると、逆に生きているのかわかりすらしない。
それでも奴の事は気になる、一応情報は集める。
その前に、現状がどんな状況なのかを知らなければいけない。
「やっぱりコイツか」
椅子に拘束したドレスの少女を見ながら思う。
姿身から、何処かの貴族の令嬢なのは理解出来る。
拘束なんて行動、普通は打ち首もあり得るだろうが、貴族なんて金で顔を叩けば黙る連中だ、どうにでもなる。
「おーい、いい加減起きろ」
「ふはっ!?」
静かに眠る顔を軽く叩き、目覚めさせる。
「──、アンタ!何、コレ離しなさい!!」
ガタガタと椅子を揺らし、暴れる少女。
「身代金?錬金術に関する本?何が目的?」
「いや、金は作れるし、錬金術は一人を除いて負けない自信はある」
「……じゃあ何よ、アンタ」
睨み付けるその目は今にも飛び掛かって来そうな獣にも見える。
「ここはオレの屋敷だ、キミにどうこう言われる事は無いと思うけどね」
「……ぷっ、何を言ってるの?ここはアルム・セィリム様の屋敷だった物、半年前に正式に私の御父様が私の為に買って下さったのよ、アナタの物の訳無いじゃない!」
そう笑う彼女は勝ち誇る顔を見せる。
「……じゃあ、このカーペットの下に何が有るか知ってるか?」
「………?そんな事知るわけ無いでしょう」
「地脈接続用の法陣だ」
「そんな物、有る訳無いわ、ちゃんと調べましたもの」
フン、と顔をそらす彼女にカーペットを剥いで見せる。
そこにはただの木の床があるのみ。
「ほら、やっぱり何も無い、」
そう笑う彼女を横目に、指を鳴らす。
それと共にその床から光が溢れる。
その光は法陣を形成している。
「普通は地脈の力は見えないからな、無理は無い、ついでに言っておくとこの陣はそのまま周辺に魔払いの結界を張っている、ここら辺で魔物を見ないのはそのせいだ」
「……………、な、なんでそんな事知っているのよ!私も知らない事を!」
糾弾する少女、それに告げる。
「察しが悪いな、オレがアルム・セィリムだ」
「─────、」
それを聞き、彼女は俯き、震える。
「ふざけないで!!私をコケにした挙句、敬愛する師匠、アルム・セィリム様の名を騙るなんて!!」
叫び立ち上がる少女、手足を拘束していた縄は赤色粉に変わり空気に流れていく。分解したのだ、錬金術の基礎で。
そのまま彼女は空間に手を突っ込み、一本の杖を取り出す。
空間保存術。
隣接する異空間に物を収納する術だ。
「中々やるな、」
「お褒め頂くのは嬉しいですが、本気で殺しますわッ!!」
少女は一歩下がり、杖を構える。
円をなぞり、法陣を展開、要素を取り込み、術を放つ。
慣れた動作、素早く、正確。
どれも準一流クラスの錬金術師の仕草に近い。
しかし、
「禁縛布・五連波!!」
叫びと共に床を叩けば、そこから5枚の無地布の帯が少女目掛けて飛び掛る。
放とうとした術、法陣、それ等を無力化し、彼女を拘束する。
「中々やるな、けれど甘い。何故戦いの中で棒立つ、それでは狙って下さいと言っている様なもんだろ、それに要素付与はもっと短縮出来る、確かに最も重要だ要素が足りなければ術が不発に終わる事が有る、だが、戦闘においては別だ、素早さを第一にしなければ相手の剣筋によって水泡に帰す。理解出来るだろう?」
「何を…、ッ言って…あっ、」
「あぁすまない、キツく締めすぎた様だ。解いてやる」
カラン、と杖と共に床に倒れる少女。
「確かにいきなりで悪かったと思っている、だからこそ話し合おう」
「っ……」
コチラを見上げ睨み付けるその少女、しかしどうしようも格上なのは僅か数秒で理解させられたのだ、ただ静かに従うのみだった。