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1話 時の静止《クロック・フリーズ》


最高の錬金術師、若き賢者、根源者、その言葉が指す者はただ一人。

それはオレの事だ。

馬車に揺れ薄暗い空の下、崖続きの山道をの景色を眺め、ちょっとした昔の思い出を思い出していた。


そんな事を気にもせず、眼前の男はそう言葉を掛けて来る。

「いやぁようやくだね、アルム・()()()君、レベルシステム理論の本格実現」



メガネを掛けても尚細目のその男は漆黒で身を包み、白い手袋の両手を組んでいる、それこそがオレの研究のスポンサー、シェリット・バートンだ。

新出若手の平民上がりの実力貴族、聞こえは良いが、実際は煙い噂が絶えないだいぶ危ない男だ。


それでもこの男が居なければ、この研究(レベルシステム理論)の実現は成り立たなかった、誰も自身の才能、強さを具体的な数値として表すと言っても信じないのだ。

実に阿呆ばかりで呆れる。しかしまた一風変わった物だからこそ、この男(シェリット・バートン)の目に止まった。


しかし、


「バートン様、私の名前はアルム・()()()()ですよ、そろそろ覚えて下さい」

「ハハハハハハ、すまないやはり名前を覚える事だけは苦手でね」

もう半年程にもなる関係なのにまだ名前も覚えて無いのだ。

今も軽く笑うばかりで真面目に覚える様子は無い。


「そう、それにね……」

「?」

「これから死ぬ人間の名前を覚える必要は無いからね!!」

バートンの腕が伸びる、黒い衣、白い掌、そしてメガネのレンズの奥に見える真紅と蒼穹のオッドアイ。

それはオレの首を捉え、確実に殺すという勢いを感じる。


馬車が大きく揺れて止まり、窮屈の空間が吹き飛ぶ、一瞬にして天板が消えて無くなり薄暗い曇りの空が顕になる。


抵抗をしようと構えるが、そんなこと虚しく、高く飛んだ勢いにより無に帰す。

「私はね、力が欲しいんだ、金、武、知、全てのね、そして気付いたんだ、君を取り込めば、錬金術による力を手に入れれば、それ以上に無い程、力を大量に手に入れれる!!」

「馬鹿な、事言うんじゃ……ねぇ、ッ…」

睨み付け、呼吸の音すら潰れて聞こえる喉から声を吐き捨てる。


「うるさいなぁ、………君は死ぬんだよ、君という存在は消えるんだよ、もう諦めろよ、」

バクリ、とバートンの体が裂ける様に広がる。

オレを体で喰らう様な姿、到底人の体ではない。

握力だって、人間のオレの腕でどうにか出来る筈が無い、それでも首から手を引き剥がそうと足掻く。


「残念だが、……オレは、諦めが悪い、人間なんだよぉ!!化物!!」

叫びと共に首から下げた一つのクリスタルを取り出す。

それを握り砕くと共に、バートンが静止する。


いや違う。

世界が静止したのだ。

オレ以外の世界の全てが、時の静止(クロック・フリーズ)を込めたクリスタルにより静止した。

碌に実験もしていない力だが、無事に使えてよかった。


今ならば、この化物(バートン)に攻撃を喰らわす事も出来るが、どれだけの化物なのか分からない、なら今は逃げるべきだ。


そう首に尚も圧をかけ続けている腕を引き剥がし、空から落ちる。

下は山岳、そして崖、転落は続くが問題は無い。


指で円を描くと共に法陣が描かれ、体を中に浮かせる。

「全く、煙どころか業火の真っ只中じゃないか……」

呟きを吐き捨て、早急に立ち去ろうとする、もうじき時の静止(クロック・フリーズ)の効果が消える。


危なかった、あの一瞬の、抵抗の様に見せかけた一瞬がなければ、本当に死んでいただろう。



「なんだ………、!?」

地面へ降り立つと共に、身体が強張(こわば)る。

全身に糸が走る様に身体が張る。


今までに感じた事の無い感覚。

「まさか……、時の静止(クロック・フリーズ)の、副作用か…!」

そう理解したと同時に右腕が無感覚と共に不動の物と化す。


マズイ、実にマズイ。

このままでは副作用で静止した体を晒してしまう。

早急に体を隠さなければ。


崖から飛び降り、着地の衝撃を術で消す。

壁面をなぞり、再び法陣を書き上げる。

壁に隙間が出来、その中に入り込む。

術で入り口を埋め、暗黒に身を潜める。

身体が徐々に凍てつく様に動かなくなる。

まるで死ぬ感覚に近い。


これで、奴の目を誤魔化せれば良いが………

そう思いながら(まぶた)を閉じた。



◆◆


ただ、一瞬のまばたきできない程の一瞬。

その内に手で首を握っていた男は消えていた。


「………、なぁ、奴がどう消えたか、見えたか?」

「いえ、私如きでは捉える事もかないません」

シェリット・バートンという化物の問に答えたのは、馬車を動かしていた御者の老人だった。

人当たりの良さそうな、まるで田舎の農家の様な、ほのぼのさすら漂わせる老人。

彼もまた、化物に仕える化物。しかしそんな事は彼等にとっては如何でもいい話だ。


「いかがなさるのですか?」

「まぁ良い、目的の半分は達成可能だ。(アルム・セィリム)の研究、レベルシステム理論。これがあれば財力も、貴族社会の地位も、社会的力は、今よりも確かな物となる」

「……作用ですか、しかしそれにしては残念そうな顔をしていらっしゃる」

100年以上も仕えて来た主人の顔を見て、老人はそう言った。その男が言うのであれば、それは合っているだろうし、実際に合っていた。


「ん?あぁ、そう見えるか?ククク、いや奴は実に賢いな同族(魔族)であれば配下としていた程にな。奴は、天才と呼ばれた錬金術師、そして多方に精通した知識、そして判断力、あのタイミングで我が手から逃れたのだ、攻撃のチャンスはあっただろうにな、逃げる事に集中したのだ。勝てないと理解出来ていたからな」

「でしたら、早急に見つけるべきでは?」

確かに老人の言う通りだ。そんなみすみす逃す様な真似、しなくても本気を出せば補足出来る筈だ。

だからこそ今の内に手を打つべきだと、


しかしシェリットは首を横に振り、

老人──従者ベルにこう言った。

「おいおい、ベル?勿体無いじゃあないか?研究を奪われ、名誉も地位も貪られ、怒りに、復讐に燃える者が居れば、まさに人生は彩られるッ!!何時寝首を欠かれるか?何時襲撃されるか?何時毒が盛られるか?それだけを考えるだけで人生に色が溢れるじゃあないか!!」

口角を釣り上げ、化物は高笑いした。


そして、

「それでも、何年、何十年、何百年、彼じゃあ、私を殺せはしないんだよ、そして復讐の為に更に強くなったあの力。それを喰い、私の力は絶対と化す」

同時に冷酷に事実を吐き捨てた。


それが最初から彼の狙いだったのか、逃げられた強がりか、ベルには分からなかった。

何故なら、それ程に彼の”力”に対する執着だけは未だに理解出来て居ないのだから。



「では、そろそろ参りましょう」

「ん?あぁ、レベルシステム理論の貴族報告か、コレに遅刻しては全てが水泡だ、急がねばな、……そうだ、アルム・セィリムは野党に襲われ死んだ事にしておこう」


そう二人は馬車で山岳を進み始めた。




久しぶりの小説執筆ですので違和感の感じる描写があったら修正しますので、コメント等をよろしくお願いします。

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