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勇者と魔王とプロローグと

 この城は、どうもおかしい、

 普通、城の中からはしゃべり声やら、

 兵士などが1人位いるはずなのに、

 この城からは人の気配すらない、いや、生き物の気配もしているかも危うい。

 廊下は暗くて、血生臭い、だが死体は1体も転がっていないのが不思議でならない。

 その廊下を亜人のリザードマンが、ドタドタと慌ただしく『何か』から逃げるように走っている。

 リザードマンが汗だくになりながら、恐る恐る後ろを振り向く。


 後ろからは、ゆっくりコツンコツンと歩く足音が廊下を響き渡っている。

 リザードマンは足音に恐怖し、ひたすらに王の間を目指した。

 『何か』はリザードマンを追っているようだが走っては来い、走らなくても追いつける自信があるという表れとともに、そこまでしなくてもいいという余裕が伺える。


 リザードマンは一心不乱に走り続け、ようやく王の間の前に着いた。

 だが、王の間にたどり着いたからと言って安心するにはまだ早い、『何か』がいる限りリザードマンの身の安全が危険なことに変わりはない。

 リザードマンはすぐさま後ろを振り向き、目を凝らし耳を澄ます、五感すべてを使い少しでも自分の生存率を上げようと試みる。

 廊下は真っ暗で何も見えなく、あの恐怖の音も聞こえない。


 リザードマンはひとまず安心し、胸をなでおろした。

 しかし、リザードマンの目的はまだ完璧には達成されていない。

 リザードマンもそのことをしっかり理解している。

 早く自分の目的を達成させなければ。

 リザードマンは思いを胸に王の間の大きな扉を勢いよく開ける。


 扉を開いた先にはいかにも王が鎮座しているような空間で、ゴージャスな絨毯、シャンデリア、そして奥には大きな玉座が一つだけ置いてある。

 だが、どれもこれも古びていて少し埃を被っている。

 どうやらだいぶ年季の入った城のようだ。

 

 玉座には玉座に見合った体格の真っ黒な魔獣が足を組み、頬ずりをしながら少しつまらなそうに座っている。

 魔獣は頭に大きな赤い捻じれた角を生やし、背中には真っ黒翼が生えている。

 その魔獣の元へリザードマンはゆっくり近づいていく。


 王の間に入ってからリザードマンは震えが止まらなかった。

 自分の目的が今達成されようとしているのにも関わらず少しも震えが収まらない。

 リザードマンは黒の魔獣の目の前にたどり着き膝を地面につける。

 何の用だと言わんばかりに黒の魔獣がリザードマンを突き刺すようにじっと見ている。

 早くしゃべらなければ。

 恐怖の感情が強くなりつつも、リザードマンは震えながらも重たい口を開いた。


「ま、魔王様…や、『奴』がやって来ました…そ、そして魔王軍は全滅いたしました…」


 リザードマンの目的は達成された。


 そしてどうやら玉座に座っている魔獣が、魔王らしい。


 リザードマン個人の失態でないにしろ我が軍が全滅したというこの大きな損害を我が絶対的な王に伝えるという、誰がどう見ても外れくじ。

 たとえ『奴』に殺されなくても魔王に殺されるもしくは殺される以上に酷い苦痛を与えられるとリザードマンは考えていた。

 結局のところ『奴』に殺されようが目的を達成させようが結果は同じだった。

 まるで、怖い上司にミスを報告する部下のようにリザードマンが恐る恐る魔王の表情を伺う


「ふむ、『奴』は、それ程強いのか」


 魔王の第一声。

 魔王は少し考えるように、手を顎に当てて静かに言葉を発した。

 魔王は別に怒るわけでもなくましてやリザードマンに危害を与えるなんてことはしなかった。


 リザードマンは自分が生きていることに驚き、安堵する。

 だが、リザードマンの震えは止まらない。

 心は冷静になっても体は正直だ。

 リザードマンは魔王の問いに答えるべく震える口を開く。

 

「は、はい、とてつもなく強いです。気づいたら軍がもう全て消されていました……」

 

 リザードマンは今発した言葉が自分で言ったにも関わらず嘘くさく話を盛っているいるように感じてしまった。

 実際、もしもリザードマン自身にこのようなことを言ってきたやつがいたら絶対に信じないだろう。

 だが、リザードマンの身にそのようなことが起きてしまった。


 つい8分前の出来事だ。

 『奴』は城の正面に突如現れ、城の外にいた兵士たちが一瞬で消された。

 武器を持っておらずそして、魔法さえも使っていなかった。


 そしてそのまま、まるで自分の家かのように城に入ってきた。

 城内に入ってからは本当に悪魔のようだった、魔王幹部たちは一瞬で蹴散らされ全ての兵士が消された。

 だが、大半の兵士は自分が消されたことにも気が付いていないだろう。

 それほど速かったのだ。

 この所業にかかった時間僅か3分。

 なぜいまだに、リザードマンは自分が生きているのかが分からない。

 そして、あの惨劇を思い出しただけで冷や汗と震えが止まらない。

 

「そうか、それは楽しみじゃ、仲間のためにも勝たねばな」


 魔王は、震えるリザードマンを見て安心させるためなのか余裕を見せ笑顔で答える。


 どうやらリザードマンは魔王の事を勘違いしていたらしい、この魔王は仲間思いで仲間には危害は加えない、確かに顔は怖いがただのリザードマンの先入観だったらしい。

 そう思うとリザードマンの肩の力が抜け震えも徐々に収まってくる。

 だが、問題はまだ解決したわけではない。

 余裕を見せる魔王には悪いが『奴』の強さを直で見たリザードマンにはどうしても魔王が勝てる未来が見えないのだ。

 むしろ、リザードマンの野生の感では逃げろ、と言っている。

 この優しい魔王には消えてほしくない。

 リザードマンはそう思い、立ち上がり、自分の思いを口にする。


「ま、魔王様逃げましょう、流石の魔王様でも勝てま……」


 言葉を言ってる途中にリザードマンは倒れた。

 首からは血が噴き出し、頭が消し飛んでいる。

 リザードマンの体からは光の粒子が飛び、やがて体は消えた。


 リザードマンがいた場所の一歩後ろには、小さな少年が血まみれで立っていた。


「!?…そうか、貴様が『勇者』か」


 魔王は状況を瞬時に理解し玉座から腰を上げ臨戦態勢になる。

 頭からは、リザードマンや仲間の事はもう考えていない。

 戦闘に必要のない事を脳のメモリーに割きたくはないためだ。

 消えていった仲間の為にもこの戦いは絶対負けられない。


 勇者は魔王を前にしても構えず、ただ佇んでいる。

 それほど余裕があるのだろうか。


「勇者よ、覚悟しろ!!」

 

 最初に動いたのは魔王だった。

 魔王は勇者に向かって真っ黒なブレスを放つ。ブレスの範囲は縦に王の間の扉位あり横には部屋の端まであった、とても躱せられる範囲ではなく

 このブレスに当たった壁や、絨毯は、綺麗さっぱり無くなっている。

 どうやらこのブレスに触れてしまうと消えてしまうらしい。


「どうだ殺ったか?」


 ブレスを止め、ブレスを放った所を見る。流石の勇者でも、至近距離のブレス攻撃は避けれなかったのか、勇者の姿は何処にもない。

 魔王は、それでも警戒を怠らず、辺りを見渡す。

 だが、その瞬間魔王の左腕に激痛が走る。


「ぐっ…!!」

 

 どうやら勇者はあの至近距離のブレスを瞬時にシャンデリアの高さまでに跳躍してかわしたらしい。


 そして、左腕を見てみると左腕の肩から指先までリザードマンの頭のように消し飛んでいた。

 左腕がなくなって驚くが、魔王は冷静に、攻撃方法を分析する。

 まず考えられるのが武器なのだが、勇者はなんと武器を持っていなく、武器では攻撃出来ない。

 もしかしたら隠して武器を持っているかもしれないが、今装備してない為その線は薄い。あと考えられる攻撃は魔法だ。

 だが、リザードマンを倒した時は魔力を感じなかったし、そして何より今回も魔力を感じなかった。

 魔法でも無いなら、あとは体術しかない。


 一体どんな体術を使ったんだ、と魔王は思考するがそんな暇はなく『勇者』からの第2撃が始まった。

 『勇者』は、右手親指の腹を中指に付けて魔王に突き出す。

 魔王は、とりあえず回避するように思考するが、そんな考え虚しく魔王は消し飛んでいった。

 魔王は壁を貫通して体から光の粒子が飛び、やがて光と共に消えてた。


「よーし、仕事しゅーりょー」


 さっきまでの異質な雰囲気とは裏腹に、今はただの無邪気な子供の様に、

 勇者は両腕を上にあげて伸びをする。


「う~ん、まさか魔王でさえもデコピンで倒せるとはな~」


 少し不思議そうに自分の右手を握って、開いてを繰り返し眺めている。

 どうやら勇者が行った攻撃は体術なんて大層な物ではなくただのデコピンだったようだ。

 もし魔王がこれを聞いていたら人間に歯向かうことを止めていたかもしれない。

 いまの魔王と勇者にはそれ程の力の差があるようだ。


「…いや、体に撃ったからデコピンじゃないかな?」


 いや、そんなことよりも、もはや僕のデコピンは兵器だなと顎に手を当てクスクスと笑う。


「あれ? これ魔王より僕のほうが敵っぽくない?」


 うーん、と少し考える様子の勇者だったが、最後には、まあいいやと呟き勇者は青い光と共に消えていった。

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