勇気の種 【月夜譚No.97】
記憶の欠片が、きらきらと輝いて見えた。それは優しくて、温かくて、大切で、愛おしい、自分にとって宝石のような存在だ。
これを捨てることはできないし、忘れようとしたってきっと、心の中に居座り続けるのだろう。記憶喪失になったって、この記憶だけは覚えているような気さえする。
大きな壁にぶつかって挫けそうになったことが、今までに何度もあった。そんな時はいつも、この思い出が支えてくれたのだ。この記憶があったからこそ、今の自分がいると言っても過言ではない。
実体がなく不確かで、儚いもの――それが記憶だ。時間が経てば経つほど記憶は薄れて、それが本当にあったことなのかどうかさえ怪しくなる場合もある。
けれど、それでも良い。たとえ嘘の記憶だったとしても、今の私にとって、それが助けになっていたのは事実なのだから。
だから、今回も大丈夫だ。
私は拳を握り、その第一歩を踏み出した。