【精神障害者保健福祉手帳】という呪いの刻印
筆者は精神科の看護師をしていた人間です。福祉制度の専門家たる精神保健福祉士とは少し受けた教育が異なり、誤った点があるかもしれないことを始めにお詫びいたします。ツッコミ所が御座いましたらコメントをお待ちしております。
さて、前置きはここまでに致しまして、日本には【精神障害者保健福祉手帳】という制度があります。1~3級までに分類され、当然手帳を取ることで恩恵が御座います。全部挙げてもキリがないので、交通助成や税金の免除・生活保護の加算(2級以上)が大きいでしょうか。
福祉手帳ですが、よく誤解される点として【手帳の取得】=【障害者年金受給】とはなりません。全く別の手続きが必要です。よくネットで見る「精神障害者は若くして年金暮らしして良いご身分」というのは全くのデマですので、ご留意ください。
この手帳は【障害者雇用枠】で働く分には大きなメリットとなります。しかし民間の【精神障害者の雇用枠】そのものが、マスコミの求人倍率並に高いため、正直言えば社会に復帰する上では烙印となる……というのが悲しい現実です。
そもそも精神障害の診断を受けている人間が 平成30年で約392万4千人、手帳を所得している人間が約59万人と、本来受けられるサービスを受けられていない方が多い状況が御座います。それはケースワーカーの不足で福祉の手が伸びていないという問題もありますが、それだけでもありません。
精神障害というのは厄介なもので、見た目では判断出来ません。血液検査をしようが、X線を掛けようが、ピッケル反応を試そうが健常者と身体的には変わりないのです。
ですので〝健常者のフリ〟をしようと思えば出来てしまいます。症状が緩解し、本当に社会に復帰、仕事を始めようと思った時に【精神障害者保健福祉手帳】なんてものがあれば、もう隠しようがありません。
それ故に、軽度の方で「手帳を申請したい。」と言われた場合、今後のライフプランを考えると一概に「いいですね、そうしましょう。」と言えないのが現状です。上記のように生活保護では加算が付き、交通助成も出るため、社会復帰の前段階としては良い制度かもしれません。しかし〝普通の生活を送る〟という夢は手帳を持つことで潰える可能性すらあるのです。
かつて武見太郎という日本医師会会長が「精神科は畜産業だ!」と発言したことが御座います。夢野久作著「ドグラ・マグラ」をご存じの方も多いかも知れません。
もはや100年前の著作、50年前の発言にも関わらず、そこには今も日本精神科医療の病巣を現す心理が御座います。




