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市販薬の保険適用外問題

注)筆者は看護師・保健師であり、医師・薬剤師ではございません。〝それは違う!〟という内容が御座いましたらご指摘頂ければ幸いです。

 なんのこっちゃ?何が問題かわからん。 と思う方も多い方も多いかも知れません。


 この一件が有名になったのは2011年民主党政権下で、【事業仕分け】に〝OTC類似薬及び漢方薬の保険適用外〟が挙げられた時でしょうか。OTC類似薬とは、簡単に言えば薬局やドラッグストアのレジで買える薬で、処方箋が有れば保険が適応されるというものです。


 【事業仕分け】の根幹は〝無駄を省く〟です。--そして、漢方薬・OTC類似薬を為政者いせいしゃが〝保険適用はムダ!〟と断言してみせたのです。


 現在日本の医療保険制度では、保険の使えない自由診療と健康保険証が適用される診療の〝混合医療〟を原則認めていません。一部例外を除き、保険適応中に保険適用外の薬剤や治療を行う場合は〝病院が自腹を切る〟又は〝患者に自分で買って貰う〟事になります。


 --まぁ花粉症の薬、湿布や風邪薬を買うくらいなら とあなどるなかれです。


・湿布薬の保険適応金額(3割負担時)が約96円 市販薬では同じ効果の同じものが2551円

・ビタミン剤--保険内156円・市販3974円

・漢方薬 -- 保険内303円・市販4644円

・皮膚保湿薬--保険内330円・市販2448円


 --と、【お金の問題】に絡めれば、〝保険適用外にするから市販薬を使え〟とは患者様の症状により、消費税増税以上の大負担となるのです。月数千円で済んでいた薬が数万円になります。


 入院中になればもっと残酷で、適用外の薬で治療を行う場合、〝病院が全額を肩代わりする〟か〝他の治療費諸々ひっくるめ、あなたか家族に全額・・自己負担〟してもらいます。そしてこのエッセイで何度も言うように、悲しいかな病院とは慈善団体でなく、営利団体です。


 極論ですが、最悪医療の臨床現場で使うことがほぼ出来なくなります。抜け道を作ったとしても〝患者の自己負担〟を大幅に引き上げ、それこそ【金持ちは良い治療を受けられて、貧乏人は死ぬ】という国民皆保険に反する医療の始まりです。


 --【混合治療の是非ぜひ】については、後日別途エッセイに出来ればと思っておりますので、この辺で。


〝え?でも漢方とかビタミン剤・目薬ってそこまで重要?〟


 ビタミン剤ですが、薬局に売ってるビタミンCの錠剤が全てではありません。重篤医療の現場であったり、高齢者医療の現場で行われる中心静脈栄養では、ビタミンB1剤が必ず使われます。使わないとどうなるか?--脳症起こして死にます。また、薬物やアルコールの禁断症状(離脱症状)治療でもビタミン剤は重宝される存在です。


 漢方薬については、今後高齢者が増加する中で問題視される【認知症】の徘徊や暴力といった症状に、漢方薬が重要な役割を果たしております。


 わたくしは最初、問題になった例として【事業仕分け】を挙げましたが、【漢方薬等の保険外適応】は、それ以前の自民党政権でも--更に言えば財務省が虎視眈々と狙っている〝野望〟だったりします。そりゃそうです、国は医療に金なんか掛けたくないのですから。


 上記事業仕分けに〝OTC類似薬及び漢方薬の保険適用外〟が挙げられた時は、92万以上の反対署名が集まり、断念されました。


 ですが、事業仕分けの様に注目を浴びる場ではなく、大ニュースの裏でこっそりと行われた場合……前回のように国民の方が反対の意を示してくれるのか不安だったりします。


 ※  ※  ※


 事実、2019年8月23日、〝花粉症薬を保険適用外とする〟提言が行われています。--お隣の国のジーソミア破棄や煽り運転の話題で盛り上がっている中、問題として挙げている所は酷く少なく思います。


 ※  ※  ※


 【600億円の削減効果あり】と声高に理解を求めていますが、裏を返せば【花粉症のみなさん、600億円国が面倒みるの止めました!あとは頑張って下さいね!】ということになります。


 一度〝適用外〟の前例を作るというのは、恐ろしいことです。失ったものを再度取り戻すのは容易でありません。そして国の方針とは削減を考えると、現場を見なくなります。現場にいるのは医療者だけではありません。明日のわたしかあなたかもしれませんし、あなたの大事な人かもしれません。


 ……筆者は政治のことはよくわかりません、しかし〝いきなり保険適用外を宣言する〟事がある程度には理不尽で、不条理で、後先が考えられない馬鹿なことをする存在だとは認識しています。



 お金と医療--命の問題が秘密裏に動く。これは恐ろしいことで、否定できない現実だったりします。

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