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【医療の闇】大阪、安田系列病院事件

 毎回医療者側が清廉潔白かのようなエッセイを投稿するのも不公平ですので、今回は【医療の闇】方面で書きます。この事件は立派な【医療者による患者への人権侵害犯罪】です。


 1997年大阪府に拠点を置いていた〝安田記念病院〟〝大阪円生病院〟〝大和川病院〟の3つの系列病院で、医師や看護職員の数を水増し・日常的な虐待・職員不足による身体拘束・医療報酬明細書レセプト改竄かいざんによる医療費の不正請求が明らかになりました。


 〝安田記念病院〟〝大阪円生病院〟は主に高齢者を受け入れる、合計592床。〝大和川病院〟は精神障害者を受け入れる524床の大病院です。


 さて、医師・看護師の配置は医療法によって基準が定められており、医師・看護師の数が多ければそれだけ多く医療費を貰えます。逆に規定された人数を下回れば〝病院〟として認められなくなって【保険適用外】の烙印を押されます。そんな理由があるため、どこの病院も医師・看護師の確保には頭を悩ませているのです。


 しかしこの病院は〝既に退職した職員〟〝看護師資格は持っているが実際働いていない職員〟の名前を借りて幽霊部員ならぬ〝幽霊職員〟を作りだし、看護基準をクリア、診療報酬を不正に受け取っていました。その数は実際に働いている職員30%、幽霊職員70%という凄まじい数字です。


 また医師もほぼ院長ひとりで回しており、カルテには一律に【37.0度なら上気道炎、37.5度なら気管支炎、38.5度なら肺炎、亡くなったら心不全】という大雑把で画一的な指示……もはやマニュアルしか書かれておりませんでした。


 また実際働いていた看護師も看護業務をしていた訳ではありません、本来医師が作るべき死亡診断書や処方箋・医師カルテを記載させることに専念させ、看護業務は無資格のヘルパーがやっておりました。管理栄養士なんて高尚な存在も居るはずが無く、食事も全員一律、ミキサーでドロドロに溶かした流動食です。


 こんな悪徳の塊たる悪魔の病院が存続出来たのは、この安田という院長医師がレセプトのプロフェッショナルであったことがひとつの理由です。元々この安田医師は〝医療審査委員会〟で働いており、〝どう辻褄を合わせれば金を貰えるか〟〝どこを突っ込まれるか〟を熟知しておりました。役人とは〝書類の辻褄が合えば〟金を出すのです。


 また医療の現場には必ず年に一度【監査】が入ります。不正をしていないか、書類の通りに病院経営をしているかの審査です。しかしこれは抜き打ちではなく、一ヶ月前から文章で告知され、系列の場合同一の日付で行うことはありません。


 そこで大胆な手を打ちます。看護師を総動員させ、監査の日にだけ看護師の名前を変え、〝その日だけ本当に看護師の数を合わせた〟のです。大胆極まる偽装です。


 第二の理由、入院患者のほとんどが身内の居ないホームレス、またはどの病院も見捨てた高齢者・精神障害者であった。これも大きな理由です。


 身内がいないのですから、誰かに告知することもありません。例え流動食だろうと、残飯漁るよりマシな生活。屋根があり雨風が凌げればいい……そんな人物を〝患者〟として受け入れていました。

 

 他の病院や救急隊からも【困ったときの安田病院】と言われる俗に言う【必要悪】となっていたのです。疑惑の病院でも受け入れてくれる病院というのはありがたい存在だったという、根深い問題があります。


 他の病院に散々、【ベッドが無い】と拒否され、【警察に保護された】と忌み嫌われ、【救急患者】だと忌避され、行き着く先はこの病院しかなかったのです。


 しかし余りにもやりすぎました。元職員や元患者から苦情や実態告訴が相次ぎ、流石に行政も重い腰を上げて動き出します。そして調査した結果は年間27億円もの不正請求でした。この安田医師は医師法違反・医療法違反・保助看法違反・詐欺罪で逮捕され、裁判の途中で病死します。


 さぁ「ひどい病院の、許されない事件だったね。」で終わらせるのは簡単です。……じゃあ【夜間や休日に急患を】【身体を病んだホームレスを】【身よりの居ない高齢者を】【刑務所を出てきた精神障害者を】何処がとってくれるのでしょう?少なくともこの病院は積極的にとっておりました。


 上記の患者様に治療を施し、社会復帰させるだけの福祉が日本には無いのです。それは事件から20年以上経過した現在も変わりません。むしろ悪化していると言っても良いでしょう。


 医療構造の貧弱を突いた悪辣な事件……。一方的に批判することは簡単です。その背景には何があったのか……ご一考頂ければ幸いに御座います。


 


 


 

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