白ウサギ
母が休日なのに少しだけ化粧をしている。
この化粧というのは凄い。人の7割ぐらいの顔を変えてしまうのだ。
ピーンポーン
玄関のチャイムが鳴る。やって来たのは…誰だ?
「あら〜!しょうまくん?大きくなったわね。こんにちは。ほら、有沙もご挨拶。」
「……」
「…あら?ごめんなさいね。恥ずかしがりやなの、ふふ。」
前に一度来た子と母親か!思い出した!
「こんにちはー。ママー!」
私は母を呼びにリビングに走る。準備を終えた母は、有沙ちゃんの母親とおしゃべりを始めてしまった。
「あーそぼ!おえかき!」
「やる!」
有沙ちゃんはお絵描きが好きなようだ。良かった。犬や猫、花や鳥、家族を描いた。もちろんミユキさんも描いた。
家族の絵は母にあげた。すごく喜んでくれた!
有沙ちゃんも似た様な絵を描いていたが、家族の絵には母親しか描いていなかった。
なるほど、有沙ちゃんの父親はもう…いや何でもない。
お絵かきが終わったら、絵本を見たり、テレビの子供向け番組を見たりした。
もちろん字は読めないし、子供ウケがいい奴なので、私は面白くはない。ただ見ているだけだ。
そんな番組より、動物や植物などを紹介してくれる番組の方が好きだ。
有沙ちゃんが私の白いウサギのぬいぐるみを気に入ったらしい。
あれは私のお気に入りだったんだけどなぁ〜しょうがない。
「そのうさぎあげゆ。」
「ほんと!?あいがとう!」
有沙ちゃんの笑顔が眩しい!
まだ何個かぬいぐるみはあるから大丈夫だ。
「ごめんね、ショウマくん。あのぬいぐるみショウマくんのだったんでしょ?今度来る時はプレゼント持ってくるわね。」
「しょうくん。うさぎさんあいがとう!ばいばーい、またね〜!」
「ばいばーい。またねー!」
子供だが、子供のフリをするの大変だ。
「しょーちゃん良かったの?あのぬいぐるみ、結構お気に入りだったんでしょ?」
少しは有沙ちゃんと仲良くなれたのでぬいぐるみにも感謝しょう。




