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武器強

第二章 何もかもが斜め上を行く


 雫はフロントの人と話始めて何かを作ってもらっている。すぐにできたらしく戻ってきた。

 「はい、お二人さん。仮のルームパスを発行してきたよ。」

手渡された城のカードにはこの学校の紋章が入っていた。

「このカードを持っていると、ここの施設はいつでも使えるよ。だけど君たちはまだ仮だから行けるところが制限されてるけど」

 要はこのカードを持っていないと、ここの施設が使えないということだ。

 「ありがとう、雫さん。で、これから僕らはどうすればいいのかな?」

 すると雫がぐっと距離を詰めてきた。

 「もうこの学園の仲間なんだから敬語はやめてよね。私のことは雫って呼んで!」

 少し頬を膨らませている雫は可愛い。

 「りょ、了解。じゃあ改めてよろしく雫」

 満足したのか今日一番の笑顔になった。

 ゴホン! 後ろから少し強めの咳払いが聞こえた。そういえば新のことを忘れていた。

 「え~、いい雰囲気のとこすまないが俺のことを忘れないでほしいな」

 「君のこともしっかり分かってるって、葉山新君。私のおじさまが君の父上にお世話になってるからね」

 「なら話が早くていい。これからよろしく」

 全員の自己紹介が終わったところで本題に入る。

 「今から私専用のルームに案内するからそこで質問なり、ポジ決めなりしようよ」

 さすがにエントランスでずっと話しているわけにもいかない、人に迷惑がかかる。

 フロントの横にある自動改札にさっき受け取ったカードをカードの表示されているところにかざした。すると素早くバーが開いた。

 「ここは他とは違って色々な機密事項とかあったりするから、ここの警備システムは学園ナンバー1だよ」

 確かに周りを見渡しても防犯カメラや警備員の数が多い。

 改札の奥にはエレベータが四つあり1~4の数字が振り分けられていた。

 丁度四番のエレベーターがきた。

「あ、四番が開いたからこれに乗っていこ」

 すると慌てて左手を雫が引っ張った。

 「違う、違う。このエレベーターは侵入者を捕まえるためのトラップだから、乗ったら捕まっちゃうよ」

 え! 僕と新の顔が青ざめた。想像以上のガッチガチのセキュリティーで身震いをした。

 「乗っていくのは二番だよ。さぁ、私にしっかりついてきてね」

 四番の扉が閉まったと同時に二番の扉が開いた。

 「はい! しっかり付いています」

 二人の切れのいい返事がエレベーターホールに響きわたる。

 エレベーターの中は意外と広く床と天井以外はガラスだ。

 「私のルームは三階にあるから、B1押して」

 「ん? 三階なのにB1いくの? まさか、またセキュリティーとかいうんでしょ」

 「ピンポンピンポーン、大正解! わかってきてるね~」

 もう、いろいろ規格外すぎて驚かなくなってきている自分がいた。

 階を示しているモニターがB1を指し扉が開いた。

 扉の先には薄暗い廊下が続いている。人はだれもおらずどんよりとした空気が漂っている。

 「おぉ、上の階とは雰囲気がガラッと変わったな。ここからどうするんだ。早くしないとみなとが暗いの怖くて今にもしょんべん漏らしそうだから」

 「みなと君って暗いところ無理な人なの? おち〇ちんついているんだから、このくらいでビビらないでよ」

 彼の顔は青く、足元がぶるぶるしていて今にもちびりそうなしぐさをしている。

 「べ、別に怖くないし。ただ急にお腹が痛くなっただけだし」

 どっからどう見ても、薄暗い道を見た瞬間に顔色が悪くなり始めた。

 「そこにトイレあるから早くすましてきてよね。三十秒たったら置いてっちゃうからね~いーち、にーい――」

 雫の地獄のカウントダウンが始まった。

 「う、ちゃんと待っててよ」

 そういってトイレに駆け込んだ。

 「申し訳ない。みなとは昔、親に虐待を受けていて暗いところがだめになってしまったんだ」

 雫は驚いたようなしぐさも見せず話始めた。

 「知ってる。みなと君は父の天川(あまかわ) 紅蓮(ぐれん)に育てられてきた。父はラストサムライとも呼ばれていた凄腕剣士ね。しかし、妻の春さんを亡くしてから人柄が大きく変わってしまった。息子のみなと君にはより一層厳しくなり、なかなか腕前が上がらなかったみなと君を倉に閉じ込めるなどの虐待を始めた。ついに限界を通りこしたみなと君は病院送りになり。一部記憶が消えてしまった。消えた記憶は――」

 淡々と雫がみなとの過去を話していく。

 「な、なんであんたが知っている。みなとの過去は厳重機密になっているはずで、俺や政府のひと……いや、あんたなら知っていてもおかしくないかもな。学園側は何をみなとに求めているんだ」

 「さぁね。私もすべてを知らされているわけではないから。でも彼には――」

 「な、何秒たった? まだ三十秒たってないよな」

 トイレから戻ってきたみなとが息を切らしながら戻ってきた。

 「早かったな。そんな息を切らしてまで急いでしなくても、俺たちは待ってたのに。な、雫」

 「え、私は時間以内に来なかったら置いていくつもりだったけど」

 真顔で返されてさすがに、え! と思った。

 「ほら、雫は置いていくつもりだったじゃん」

 「ごめん、ごめん。嘘だから。そんな意地悪なことはしないよ」

 雫はどこまでが本当かわからない。

 「早くルームに行くよ。あとすこしで着くから」

 そういい廊下を歩きだした。

 歩き進めるとまたエレベーターの扉が4つあった。

 「まさかここもダミーの奴があるんじゃ……」

 恐る恐る聞いてみた。

 「もうトラップはないよ。ルームパスがないと開かないだけだよ。青く光っているところにカードをかざしてみて」

 カードかざすと扉が開き中の光が薄暗い廊下を照らした。

 「もうさすがにないか。これで気が緩めるよ」

 ここまでたどり着くまでそんなにかからなかったが。道中いろいろあり時間が長く感じられた。

 「ここから三階にいくよー」

 エレベーターの扉が閉まり三階へと向かった。

 階を示すモニターがどんどん三階に近づいていく。数字の変わるスピードから、かなり速く上がっていくのが分かる。

 アナウンスが三階に着いたことをお知らせする。

 さぁここから僕たちの学園バトルがスタートする。

「ようこそ、二人ともここが私専用ルームだよ。それと君たちのスタート地点でもある」

 扉が開くとそこには今まで生きてきた世界とは全く違う世界が広がっていた。

 壁には数多くの銃が並んでおり、射撃スペース、トレーニング機械など初めて目にするようなものばかりだ。

 「うお~、こ、これはすごい……」

 すごい以外言葉が出てこなかった。僕と新は空いた口が塞がらない。この部屋に圧倒されてしまっている。

 「そんなところで立ってないでそこに座ってよ。私に聞きたいことが山ほどあるだろうし。着替えてくるから質問でも考えててね~」

 そういって雫は部屋に消えていった。

 「これはすごいな。新もそう思うだろ」

 「あぁ、これはすごい。見たことがない武器が多くあるな」

 辺りを見渡すと今まで優勝したと思われる射撃のトロフィーがずらりと並んでいる。だいたい30近くはある。

 優勝した時の写真だろうか、アメリカの大統領とのツーショット写真がある。こんな写真持っていたら絶対に自慢する。

 「新は何か雫に質問したいことある? 多すぎてどこから質問したらいいか分からないや」

 「俺はとりあえずこの学園のシステムを聞きたいな。そして、これから俺たちはどうすればいいのか、かな」

 新はしっかりしていて役に立つ親友だ。こんな状況でも冷静に状況を整理していく。

 「さすが新は冷静だな。俺なんてまだ頭の中に?マークがぐるぐる回ってるよ」

 「そんなことはないぞ。俺だってまだこの光景に興奮している。すべてが考えをぶっちぎっているからな」

 新はそう言っているが十分冷静だ。長年一緒にいた俺が一番分かる。

 「お待たせ~、はいこれ今缶コーヒー、微糖だから飲めると思うよ」

 さっきまで制服だった雫は可愛いブタがプリントされているTシャツにショーパンのラフな格好で現れた。

 「おー、かわいい」

 は! ついつい本音が口から出てしまった。

 「もー、みなと君はスケベだな。いやらしい目で舐めまわすように見つめないで」

 「そんな風には見てないわ!」

 舐めまわすようになんて見てはいない。しかし、ポニテからツインテ&眼鏡は卑怯じゃないでしょうか。目線が無意識に行くのはしょうがない。

 ラフな格好な雫も椅子に座る。

 「さぁ質問ターイム。なんでも聞いてね。なんでも教えてあげるよ」

 この時を待っていました。これでモヤモヤが少しでも晴れてくれたらいい。

 「え、えーと、まず雫のことをしっかり知りたいな。すごい人とは分かったけど……」

 「そうね、じゃあ改めまして青海雫です。父がアメリカ人で母が日本人。叔父がこの学園の学園長ね。私はアメリカで父に戦闘訓練を教わっていたから銃の扱いは完璧よ。私がこの学園にいる理由は君たち生徒を最強のソルジャーを育成するためにいるの。その代わりに、私たちに専用のルームなどの待遇をしてくれるの。私は学園長の孫というわけでさらにいろいろなことしてもらっているけどね。まぁこんなところかな」

 簡単に説明してくれたおかげで理解できた。

 「ん? ちょっと質問! さっき『私たち』と言ったが他にもいるのか」

 「YES、私含め4人いるよ。書類の写真でしか見たことがないけどね」

 雫級のバケモノクラスの奴があと3人もいるとかしょんべんちびりそうだ。

 「先に言っとくけど君たちだって結果を残せば私たちと同じ待遇を受けることは可能だよ」

 「そんなことが可能なのか! そんな説明は学園のパンフレットには書いていなかったぞ」

 新が少し声を張りあげた。昇格に興味があるようだ。

 「そりゃーそうよ。書いてないもの」

 当たり前みたいなそぶりをした。

 「なぜ記載されてないか説明してもらおう」

 「こわいこわい。ちゃんと説明するから座って……ね」

 新は自分の取り乱した姿に気が付き静かに席に戻る。

 「記載されてなかったのは、これから新入生はふるいにかけられるからよ。新入生は一週間でパーティーを作るように言われてるよね。まずそこで作れなかったものは退学。次はチーム対抗でポイントが一番低かったチーム全員退学の計二回のふるいがあるの。それに残ったものだけがようやく新入生と認められるの。そこでここの学園のシステムがすべてわかるの。はい、これで全部。満足かな、新君」

 新は口が開いたままフリーズしていた。よほどこの話がとんでもないものだったのだろう。

 自分も聞いていて分かったが、もし雫と会っていなかったら退学になっていたかもしれない。

 「まだ俺たちはちゃんとした新入生じゃないとか、マジか……」

 やはりこの学園は地獄だ。この学園で生き残りたいなら、強くなくてはいけないのだ。

 強く、強く………


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