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クライメット・ホープ  作者: 狐面 十夜
1章 6月 雷雨のラプソディーと骸の花嫁
3/4

1節 揉み消した過ち

名前:リュンクス

刻印を受け継いだ年齢:20歳

(グレースとして生きた年数500年強)

瞳の色:右がサファイアのような濃い青色で

左が血のような濃い赤色

髪色:金(少し薄め)

性別:男

性格:冷静で気まぐれ、人見知りで基本的にマイペース

本能に忠実。理性は蒸発している

──人は何故罪を犯すのだろう。

人は一時の激情に身を任せて罪を犯す。

そこには自らの破滅しか無い事を、罪を犯した後で気付く

それを償うのか、揉み消すのかは人による。

全ての人間が罪を償う事を選べば、同族で殺し合うなんて馬鹿げたことをしなくても良いのに、と…オレは思う。


それでも、権力者は自らの身を守るために躍起になってその罪を揉み消す、それがいつか露呈するものであっても……。───



雨の中、ぬかるんだ山道を歩く。

南側の土地は今雨季で、オレは南下しながら街から街へ向かっていた。

相変わらず酷い傾斜だ


「滑らないように行かない…とっ!!?」


独り言を言ったそばからぬかるみに足を取られて傾斜を滑り落ちた

だいぶ落ちた…かっこ悪いし痛い。

腕を折った気がしたけど治るので問題なし


「いてて…泥付いちゃった」


土に砂利とか石が混ざってなかったので幸いにも傷はない、良かった

腕折っただけで済んだ

良くないな…泥まみれだよ、この雨で流れるかな…?


『お兄ちゃん、大丈夫?!』


立ち上がって泥を払ってたらこの雨を降らしている天候の化身(シード)、リーヴェが声を掛けてきた


「大丈夫大丈夫、ちょっと泥が付いただけ……?」


ふと、足元を見ると白い何かが泥の隙間から見えていた。


『そっか、良かっ……?どうしたの』


「いや、なんかあるなぁって…なんだろ」


ちょっと屈んで泥をよけてみる……。

立派な太い骨だ、動物の物では無さそう

人間の骨、かな…?


『お、お兄ちゃんそれ…人間の骨じゃ……』


「よく見たらあちこちに散らばってるみたいだね……何人分だろ」


『ぼ、墓地が土砂崩れにでも遭っちゃったのかな』


「うーん…最近この辺りで大規模な土砂崩れが起こったみたいだからあながち間違ってないかも…でも」


『でも?』


「墓地なんて『ここら辺には一つも無い』筈なんだよねぇ」


『え…それじゃこれは一体……』


「……そのままにしておこうか。

この雨でまた土砂崩れが起こったら土に埋もれるか完全に出てくるかするでしょ」


『お兄ちゃん、これそのままにするの?!』


「下手に隠したら隠蔽したって捕まるってば」


『ここら辺の自警団なりに連絡しないのも不味いと思うのだけど!?』


「ここ丁度前の街と次の街の中間だし面倒くさい。」


『お兄ちゃん!』


「………。

先に進もう、あと1日も歩けば次の街着くよ」


『リーヴェ、いい加減になさい。確かに通報義務はあるかもしれませんが、亡くなった人間が骨である事を考えると…だいぶ時間の経った物と思われます、捜査だとか捜索が打ち切りになっている筈です…それが今更出てきたとなっては…大変な混乱を産みます、主様の判断はあれはアレで間違いはないかと。』


と、身につけている魔石の中から風のシードのプレーステールがリーヴェにそう言う


『で、でもぉ…』


「…おっと。

…ネブラ、誰か来るから適当に誤魔化して」


リーヴェが反論しようとしたものの…やや遠くに人の歩く気配を察知したので、魔石の中にいるであろう霧のシード、ネブラに声をかけて自分は近くにあった木の上へと逃げ込む。


『お任せ下さいお父様。

雨宿りしてる小鳥に見せます

足跡も消しておきますね。』


魔石から出て来て俺の肩に乗る(実体が無いのでそれっぽく浮いて近寄ってるだけの)ネブラ。

別に小鳥である必要は無いんだけどね…まぁいいよ

リーヴェも慌てて俺の後を追って息を潜めた


濡れた木の幹を登ったから服もびしょびしょになってきたので早く立ち去ってくれ…


どうやらやって来たのは男のようだ、レインコートを羽織っているので服装は良く分からないが…地面に散らばるモノを見て必死こいて濡れた枯葉や土を被せている。


『…犯人、でしょうか』


「(……めっちゃ隠してる所見ると、たぶん?)」


恐る恐るポツリと呟いたのはプレーステールだった

オレはそれに念話で答える

…おや、動きが止まったぞ…何処見てる?


『あ』

「あ…」


ネブラが声を出し、オレも思い出して思わず声を出してしまった

足を滑らせて落ちた跡を消し忘れていた。

男は慌てた様子で辺りを探し回るように動き回る


うわぁ、誰かに見られたと思って探してるじゃないですかやだー(棒)


『ごごご、ごめんなさいお父様ぁ!!!落ちた所忘れてましたのぉ!!(´;ω;`)』


「(ネブラ、どうどう…騒がない騒がない、俺の耳がやばいから、ねぇ…ちょっと、ねぇ)」


ヒステリックにピーピー泣き出すネブラ


耳がー


『…追っ払うなら1発ドカーンと鳴らすか?』


魔石からヒソヒソ声でそう言ったのは雷のシード、エクレールだ


「(まだその決断は早いと思うな…もう少し待って。)」


『へーい』


「(いい子、後で皆よりなでなでしてあげよう。)」


『いらんからそれ』


エクレールは自分の連れ歩くシード1のやんちゃ坊主だが、根は真面目なので大事な時はふざけたりしない良い子。


『ふえぇーん!!』


『ね、ネブラ落ち着いて…今の幻覚維持しててね…お願いだから、これで見つかっちゃったら面目立たないよ』


『わ、わかってますのリーヴェ…ネブラ、これ以上の失態は許されませんの……(´つω;`)』


あまりにわんわんネブラが泣くものだからリーヴェもネブラに声をかける、ちょっと落ち着いたっぽい、良かった。

しかし、どうしようかな…探しながらそのまま去ってくれないかな……


『あ、お…お父様!あの男……気付け薬持ってるみたいですのよ…!』


「(不味い、エクレール)」


『任せな!近くの木に落してやらァ!!』


気付け薬というのは、魔術や幻覚…それに準ずるものの効果を一定時間打ち消す『魔療薬』(まりょうやく)という魔術を用いた薬の事だ、ネブラの霧もこの薬を飲まれると全く意味が無い。

すぐエクレールに声をかけ

エクレールは空へ飛び立ち、男の近くにある木に急降下して雷を落とす

近いから凄い音と若干の衝撃がこっちにも来た

男は驚いて薬を落とし、尻餅をついたようだ


「(ネブラ、ソルのぬいぐるみ出して

逃げよう。

姿消すのもよろしく)」


『了解ですの!』


「(ソル、お願い)」


『ルキャン!』


すぐに俺は木から飛び降り、ネブラにソルのぬいぐるみを出すように言って魔石で待機してるソルを呼び出す

ソルはすぐにぬいぐるみに潜り込み、ぬいぐるみの姿からオレが乗れるくらいの大きさの獅子に化ける、そのまま地面から少し浮いたまま木から飛び降りたオレを乗せて駆け出す

。そうすれば音は立たないからバレずにいける…はず。


人が通れるような道を避けて木々に紛れるように駆け抜け、しばらく経ってから…雷をゴロゴロ唸らせながらエクレールも追い付いてきた


『リュンクス、あのオッサン馬走らせて帰って行ったぜ

でもお前がこれから向かう街方面に撤退してったみたいだから気を付けねーとな』


「そう、分かった。ありがとうエクレール」


『オレそのまま外出てて良いか?』


「構わないよ、雷雲の出現が早まっただけの話だし…誤差の範囲」


『ひゃっほーう!!祭りだ祭りだー!!』


「はしゃぎ過ぎないでね。」


オレの言葉に周りを飛び回るエクレールにそう言う、エクレールはまだ力を加減出来ないシードだ

だから、落ち着きが無く力を使いたくていつもウズウズしてる…有り余る力を放出したくて仕方ないからだ

力を使う事を覚えたばかりの幼いシードに良くある徴候だ。


注意しないと雷で街一つ半壊させる事もあるからオレの手で制御出来るようにしてある


『ルーン』


「うん、面倒だしこのまま行こうか

君が走ってくれれば半日で着くしね」


『ルーン!』


俺は俺は?と言いたげに鳴いたソルにそう答えるとソルは嬉しそうに尻尾を振りながら鳴いた

犬かよ、可愛いなホントに君は


ソルは晴天のシードで、晴れを司る。

普通は各地を複数の群れが巡って晴天をもたらすのだが、どういうワケかソルはどの群れのシードでも無くたった1匹『余分に生まれた』シードだったらしい。

まぁ、この世界を監視してる女神様が持ってきたので真相はどうか分からないけど。


正直なところ、オレはあの方がちょっと苦手だ、嫌いではないんだけどね。

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