…オレの事が知りたい?
長くなっちゃうから、少しだけね。
ここで一つ、現在グレースとしてこの世界の天候を司る1人の青年の話をしよう。
その青年は齢4つまでの間は両親にとても大切に育てられて来た。
身体が極端に弱く、よく熱を出しては母親を心配させたりもした
しかし、ある日彼は何も無い雨雲を指差し「あめちゃん来た」と拙く声を出した。
母親と、その周りにいた大人達が彼を見て
「忌み子か」「種狩りを行わなければ」と囁く
母親は思わず彼を抱いてその場を離れ「もう村に入ってはダメよ、貴方を虐める大人が沢山いるから」と言って村の外にある森に彼を置いて去った
彼は置き去りにされて泣く事も、母を追うこともしなかった、村の中が危険地帯になった事を『分かっていた』からだ。
彼には小さな友人が居て、その友人は彼に食べられる木の実を教え、飲める水を教え、隠れられる大きな木の洞を見付け、一緒に過ごした、村でそれなりの権力のある商家の娘である少女が事態に気付き、木の実を取りに行くフリをして彼に食料を持って来るようになる。
やがて数日が経ち
大人達が種狩りを開始する時は刻一刻と近付いていた
そんな中、村に雨を降らせる為にグレースが現れた。
正体を隠し、グレースは少女と彼に出会った
少女は彼を連れて村を出るように懇願する
グレースはそれを快諾して少女と村へ向かう事にするも、村の入口で正体がバレてしまい崖に突き落とされる。
種狩りは開始されてしまうも、グレースはすぐに雨を降らせ彼を保護して村を去った。
彼は『特異体質の子』だった。
小さな友人は雨の化身で、彼はリーヴェと呼んでいた
彼は自分に名などないと言うが、少女がくれた「リュンクス」という名を大切に思っている
別の言葉で山猫という意味なのだが…少女の家の守り神らしい。幼い少女は山猫様が君を守ってくれるように…という思いでそう呼んでいたのだろう。
自分を助けてくれたグレースの跡を継ぎ、リュンクスは世界を巡る。
これから始まる物語は、グレースとなったリュンクスが迎えた幾度目かの梅雨の季節の物語。