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リバーシブル  作者: 八百長
1/1

雰囲気ってのは大事だよね

この世の中全てのモノゴトにはウラオモテがある。

あまねく人類に可視、可侵なオモテ。

対してウラは不可視、不可侵。

全てのモノゴトと言ったがこれは人間にもっとも顕著に現れる。本音と建前という奴だ。ただし本音がオモテで建前がウラとは限らないのがこの世の中。いや、むしろ建前がオモテの人間ばかりだ。

ここにひとつ、オモテとウラに関する小話がある。お聞き願おう。あ、もちろんこれは可視可侵のオモテのハナシ。


と、だいそれた前置きをしておけば人々は食い付きお話は小説化され印税ガッポリってなわけですよ。

あ、失礼しました申し遅れ。私の名前は...えと...決めてなかった...。どうする...?え?ブル?タイトルとも絡んでるって?あぁ...まぁいいかじゃそれで。私の名前はブル。ブル=トカチェフ。そうブル=トカチェフ。ん?え、なに?トカチェフってなにかって?

ダサい...?はぁ...。じゃいいよブルで。"="とかカッコいいから使ってみたかっただけ!はいこの話おしまい!

というわけで、現在私は犯人追跡の真っ最中!真っ最中にこんな事考えてるのかって、そりゃあ人の考えは不可視不可侵なにがあっても問題ない。

ところで、この犯人という奴。私に三年間も金を無心し続けた挙句今度は部屋まで貸して欲しいとねだって来やがった。私はもうハラワタ煮えくり返る思いですよ。もう。久しぶりの犯人の訪問にちょっとでも期待した私が馬鹿だった。

さくっと捕まえて東京湾に沈めてやりましょう。おーいそこの犯人、私の金を返しやがれー。

「わかった!わかったって!来月、来月返すから!だからそのブルドーザーなんとかしてくれ!」

来月?何をのたまう?お前は、三年間も金を返さず無心し続けたんだ、今更ひと月も変わらんと申すか。浅はか。それにブルドーザーって。ハハ笑わせてくれる。ブルって名前はこっからとったんじゃあ無いよ?

「許して...許してくれ。金は本当に無い!家はまだ残ってるがこれもすぐに売りに出す!そしたら...。それが来月だって話だ。来月には払う...払う...。うぅ...。」

売りに出す。はぁ...、だから突然部屋を借りたいだってなるほどな。ここで私は都合よく不動産を経営してるってそれがオモテの顔なんで。なるほどなるほど。いやいや、そんな都合がいい事あるか。そーれ、一振りぃ!どーん!

「ひぃ...!やめ...やめてくれ。本当にわかったってもうやめてくれ。骨身に染みた本当だ。許して...。本当だ...。」

あぁ...本当って何回言うんだコイツは。もう本当がゲシュタルト崩壊して意味わかんなくなってきたぞおい。さっさとお縄お縄。ほーい。

と私は手早く慣れた手つきで怯える犯人を確保したわけだ。

放り込むのは私の管理してる不動産の1つ。人気のない、どうせ誰も借り手の付かないゴミみたいな物件だ。まるで牢屋。ちょうどいい。1部屋くらい俺が個人的に使ったって問題ない。あぁ、これじゃあ結局犯人に部屋貸してるじゃんって、まったくその通りで。その時私は目標を達成した喜びとかでもう舞い上がってて。細かいところまでいたらなかったというわけです。このミスが私の進退裏表を決める事になるとは夢にも思わなかったのです。


と、伏線張り張り。いいね楽しいね執筆作業ってのは。次行こう次。



私の名前はブル。チマタでは噂にならない不動産業を営んでおります。噂にならないというのは本当でして、いやまぁ、なってもらっても困るのですが。なにせ私の扱う物件はすべて字のごとく不動な物件ですから。おっとお客さんだ。

「あの...部屋を借りられると聞いて...。あ、これ...紹介状...。」

あーはいはい、どうもどうも。これは綺麗な客人だー。ここ座ってー。はいはい。で...今日はどんな物件をお探しで?

「えーと、とにかく防音防振防臭がカンペキなところを探してまして...。」

ほう、なるほど、ご予算は?

「要求に沿う物件ならいくらでも大丈夫です...。」

わぁ、これは驚いた。なかなかそんな方いませんよ、いやいやこれは悪い意味ではなくて。素晴らしい方だって本当です。ほとんどのお客様...普通のお客様は予算を考えてから動く。そして予算内の妥協した物件に住み着く。あぁ...こちらも悪い事では無いですが...。どちらかと言えば私はあなたの様な人に部屋を貸したいですね。あ、いやこれ別に口説いてる訳じゃないんで本当。素直に思っただけだって。

「はぁ...そうですか...。それで...そんなお部屋ありますか...?無茶を言ってるのは分かりますが...すみません。」

なんで謝るのです?あなたが要求の通りの部屋を望むなら、ここはピッタリの環境です逆に...ここではそのような物件しか取り扱っておりません。いや、紹介状を書いて下さったこの...あ、読めない。えと...ゴンドウさん...?あ、うなづいてくれた正解だやった。そうこのゴンドウさんいい方ですね本当。ところでゴンドウさんとはどういった関係です?私の記憶によると彼は...人付き合いが苦手な方だったような。特に女性とは。

「あぁ...。そうですね...。彼とは仕事仲間...です。」

仕事仲間ですか。いやいや、あまり詮索するのはよくないですね。私もされるのは嫌ですし。ですがすみません業務上これだけは聞かなければならないので申し訳ない。時に...あぁ...お名前を聞いてなかった。すみませんまずは名前から。

「清水...清水玲子です。」

シミズさんですか。そう、で、業務上聞かなくてはいけない質問。シミズさん、あなたは借りた部屋を何に使います?

「......。言わないといけませんか......?」

あぁ、いや別に強制してる訳ではありませんが。うちも人気店なので、他の理由が明白な方にお譲りしないといけないですね。いや本当。ですが...防音、防振、防臭。となれば邪推してしまうのも仕方ないでしょうか...。大丈夫ですよ、既にこの建物があなたの要求を満たしていますここでの話は誰にも伝わりません。もちろん私以外にはですが。


「い、いや言います。その...殺人です...。」


まぁ、なんと...!...でしたら何も問題ありません。いやぁ、つくづく素晴らしい方だ自分の欲望に忠実である。殺したい奴を殺すそれをオモテに出したあなたは本当に素晴らしい。いやね、私は人間のあれやこれやで部屋が汚されるのが嫌なんですよ、あっちの隣人達も嫌がりますしね。ところがどっこい、あなたのソレはむしろ歓迎されるべきところ。あちらの方達もこれから毎夜パーティとシャレこむ事でしょう!いやぁいい方だ是非この後お茶でも。いや、別に口説いてる訳じゃないって本当に!

「あの...お茶の誘いは嬉しいのですが...。で、その...あちらの隣人っていうのは...?」

あれ?ゴンドウさんから何も聞いてないのです?まぁ、確かに彼は口下手なところがあったような気がします。手が出るのも速かったですしね。あぁ色んな意味で。そうですね説明は必要でしょう。我が不動産メビウスはウラの世界にある物件をご紹介しています。

「ウラ...?」

そうです、私たちが今普通に生活してる世界はオモテ。個人が個人の都合のいいように飾り立てた世界。といえばかっこよくもなるでしょうか。まぁ、目に見えるとこって事ですよ。対してウラの世界は不可視不可侵。いや別にこのフレーズ気に入ったとかそういうのでは。ウラは普通の人間には見えない触れない認識できないってなもんです。ね、お客様の要望には図らずとも全室対応ってわけですよ。

「はぁ...。でその隣人ってのは...?」

そうですね、ウラにはウラの住人がいます。それは別にマンションの隣の住人とかお向かいさんとかいう訳ではなくて。ただウラにいる。とそのように認識しております。そいつらは何もしなければ無害ですが。それこそ人間のあれやこれや日常に満ち満ちたことに敏感に反応します。悪魔的な所業例えばその通り殺人などですね。それに対しては嬉々とした反応を見せます。可愛いですよ。

「はぁ...まぁ...危険が無いのならいいです。契約お願いします。」

かしこまりました。ではここにサインを。


と、ここまでが昨日の話。長くなってしまったがここまでが前置き。これから彼女が起こす事件。まさか私まで利用されているとはね。ハハハ、次へ次へ。



私の名前はブル。いつまでこの書き出しでやっていけるのだろうか。ところでうちの事務所名、決めてなかったんだけど。先日いいのが浮かんだ。メビウス。これ!めっちゃいいでしょこれ!世界のウラとオモテを繋ぐメビウスの輪的な!あ、イマイチ?いやでも私はこれしかないと思うね!え、ダサい?てか、自信たっぷりに説明してるのがダサい?そっかそうですか分かりましたよやめまーす。はいこの話終わり!

時に私は散歩中。どこをってそりゃあ公園を。あぁ、穏やか穏やか。まだ肌寒いそよ風で冷えた体を暖かな日差しが溶かしてくれる。素晴らしいな春というのは。もう9月だもんな陽気陽気。こちらの公園、遊具は1つ、1つだけだが人気が高い。いつも子供たちで賑わっている。それは滑り台。みんなもやったよねあの滑る方から登るヤツ。それが大人気、なにがそんなに楽しいのか。おっとおっとそこらの大人まで参加しだした。コイツは巻き込まれそうだ早々に退散っと。

さて、事務所メビウスに帰還して一服を取る。アテはコーヒーとココアシガレット。タバコは禁止なんだってさツマンネ。いかにもな雰囲気、落ち葉でオレンジ色の昼下がりだ、コーヒーも旨い。ふと不特定多数への発信型SNSアプリを開くとチマタでは滑り台逆から登ってみただってさ。それ面白いと思ってやってるの?いやまぁ、確かに子供の頃は普通に滑るのに飽きてさ登った事もあったけど。って、返信見ると酷い荒れてるな。これひでぇ...。フフッ笑える。あぁ...暇暇暇暇...。眠気が...。ヤバイヤバイ勤務中勤務中。ふぅ...そういや...さっきの公園で1人だけポツンと...見てた...ヤツがいたような...。あぁダメだ眠い!限界!今日はちょっと昼休み長めに...。

と、眠りについてしまったのが運のつき。我らがメビウスのドアは頑丈には出来ていない。それが蹴破られる音で目が覚めた。

おっとおっとなんだいこれ?器物破損不法侵入でしょおいおい。

「ここは不動産屋なんだよなぁ!」

え、あ、はい!そうですけど!何たじろいでんだ私!いやでもこえぇよこの人!

「部屋を貸せ。」

え?

「部屋を貸せ。っていってんだよ!」

ばーん。机を蹴られた。

ひぃ、わかりわかりましたよわかりました。普通のお客様ってことですね。

「そうだ。防音防振防臭の部屋を頼む。」

そ、そうならはやくそういう態度でいてくれよ頼む頼む。あせ、焦ってなんか無いぞわたしは。調度都合よくうちの物件はすべて完全防音防振防臭です。良かった良かったそれで予算は?

「あぁいくらでもいいが...住むのは俺じゃない1番安いのでいい。」

左様ですか。ではこの3丁目6番地などどうでしょうか。間取りも1LK風呂トイレ別。暮らすには十分です。値段も安い。

「1LK?細かいところは分からんが。風呂もトイレもいらない。もっと安いところは無いか?」

風呂もトイレもいらないと。この文明社会日本でなかなか肝のすわった方だ。ではこちらなど。提示するのは1部屋のみのキッチン併設ガス式窓は1つ水周りは無し。こんな部屋誰が何に使うんだよ。

「それでいい、契約だ。」

あ、はいですがこれは聞かないといけないので...。この部屋なにに使うんですか?

「あ!?なんだテメェ文句あんのかよおい!こっちは金払おうってんだなにが問題あるんだよ言ってみろコラ!」

こっちは貸す立場なんですがね。わかりました別にお答え頂かなくても結構です。こちらにサインを。

「これで良しと。上に伝えろ、調達したとな。」

「へい!任せてください!」

おいおい、なに指示出してんだ。この部屋で何する気だよまったく。あ、そうか。なるほどねなるほど。これで契約は完了となりますので。

「おう、ありがとよ兄ちゃん世話になったな!」

あらあら、なんだ最後はいい人印象づけて帰りやがりましたよまったく。あ、そう言えば名前も聞くの忘れてたわ。あ、紹介状も忘れた。こりゃ管理部にどやされる。まぁでもサインあるし大丈夫だろ理由もでっち上げてと...。て、このサイン...。漢字読めねぇ...。


はいはい、こんな感じで楽な仕事をこなす毎日ですが。いやいや、勤務態度は至って良好見ての通りですよ。何か問題でも?お次の話は...。え?滑り台のくだり?あぁ、私の勘違いだったみたいですよ気にしない気にしない本当本当。お次の話は思いついたらにしますね。では。

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