辛かったのは同じだね。
「卒業おめでとぉ~!」
「おめでとう」
賑わう教室。
切ない日々はこうして考えると、長いようで着々と進んでくれた。
胸の痛みは相変わらずだか、2人を見て装うのは上手くなったと思うし。
あの後悔の海から溺れ出た時は、割と素直になれた時だった。
……今でもよく考えるが、何が正しかったのかは分からない。
「鈴音、だいぶ綺麗になったよね」
「ん?そうかな?」
「一時期はやつれて皆んなに心配されてたよね」
「あ~あったねぇ。ダイエットにハマった~って言ったら成宮に馬鹿にされたなぁ」
「成宮君呆れてたね。…………あたしさ、てっきり成宮君に彼女出来て自暴自棄になったのかな?って思ってたの」
鈴音は何も言ってくれなかったけど…
と寂しそうに続く言葉に驚くが、次第に胸を暖かくする。
「…茜ってよく見てくれてるよね。」
「なによ今更ぁ!ほんとっ!……ほんとにこっちが泣きたくなるほど、あんたやつれたんだからね!最後までっ、何も、っ、言ってくれなかったけどぉ~」
「ほらほら泣かないで?可愛い顔が狸になっちゃうよ」
「あんたが泣いてたのだって知ってるんだから!何も言ってくれなかったけど!」
「…ふふっ、茜って優しい。そんなとこも好きだよ。3年間ありがとう、これからも仲良くしてね」
泣きじゃくる茜を優しく抱き寄せる。
「私ね、成宮が好き。」
「うん…」
「成宮が私を好きだってことに甘えて、成宮の大切さに気付かなかったの…」
「うん」
「成宮に彼女ができて、彼のことすごく好きだって気付いて、でも成宮はもう私を好きじゃない。私も意地っ張りだし…隣にいない事が悔しくて悲しくて泣くことしかできなかった」
「うん、…ぐずっ」
泣きじゃくる茜の背中を撫でる。
「成宮の幸せを願うことが、どうしょうもなく苦しかった…でもね、ずっとずっと苦しんで、今は少し素直になれたの」
「うんっ、うん、鈴音変わったもん!柔らかくなったし、誰よりもっ、誰よりも素敵な女の子だよぉ~うわぁーん!」
「泣きすぎだよ。これから卒業式なのに、今からこんな泣いてたら集合写真の時顔変わっちゃうよ?」
ハンカチが手元にないから、セーターの袖で拭ってあげる。
「洗ったばっかりの綺麗なセーターだからね」
「そんなこと気にしないよバカぁ」
「ほらほら泣き止んで?」
「鈴音の代わりに泣いてるのぉ~」
「あはは、もう大丈夫。人生で一番泣いた学生時代だったから」
「うう~」
「言葉にして言えるまで時間がかかったの。ずっと話せなくてごめんね」
「そんなことも気にしなくていい~うえ~ん」
泣き止まない茜に笑いながらも、苦しんだのもいい思い出、とまではまだ言えないけど……意味のあるものだとは思えるようになった。
「ほら、行こう?」
「うん…ぐずっ、」
まだ君のことが好きだけど。
まだ眩む事はあるけど。
まだ幸せを全力で願うことはできないけど。
しっかりと自分を見て歩き始められました。
同じように辛い思いをしていた友達がいました。
『辛かったのは同じだね。』