あなたが何よりも大切だってことに
「鈴音……」
「?辛気臭い顔してどしたの?」
「昨日斎藤に告ったら、俺の好きなのは斎藤じゃなくて鈴音だって言うんだよ。いくら違うって言っても納得しねぇんだよ……」
「ははっ、あたしらに良くある誤解パターンじゃん。私からも誤解解いとくよ。」
「ん。さんきゅ」
まだ、成立してない2人に安堵する。
でも、邪魔するつもりもない。
けど、彼が好きだ。
「(今更気付いたってどうしょうもないのに……)あ、斎藤さん!」
「鈴音さん……。どうしたの?」
斎藤さんはふっくらとしていて、私から見ても優しい女の子だ。
「成宮の事なんだけど…」
「くすっ、誤解だよって言いに来たの?」
優しく包むように笑う。
「…分かってるんだね。」
「……鈴音さんが成宮君のこと好きってこと?それとも、成宮君が鈴音さんに後ろ髪引かれてること?」
あぁ、この子は賢い子だ。
「そのどっちにも…。」
「察しが良すぎるのも考えものだよね。私ね、2人に憧れてたの。だから歯止めかけるけど………私も成宮君が好き。鈴音さんが意地を張ってるなら、成宮君の告白は承諾するよ」
本当に良い子なんだこの子は。
「……、」
なのに私は何も選べない。
こんに臆病な子だったっけ?
「……。」
何も言わない私の横を斎藤さんは通り過ぎた。
きっと彼女は成宮にとっていい彼女になるだろう。
「なにやってんだろ……私。」
彼が、彼女が幸せならと偽善者振って。
結局見抜かれてはこの無様。
「っ、」
ううん。違う。
ただ私が意地を張り続けてるだけ。
でも、どうすればいいの?彼は、もう私を好きじゃない……。
もう、…もう私を目で追ってない。
もう私の些細な変化に逐一気付かない。
1番に気づくのは私ではなく、彼女になった……。
「それが、こんなに辛いなんて……」
あなたを好きになれてよかった……
あなたは他の人を好きになってしまったけど……
それでも気付けて良かった。
『あなたが何よりも大切だってことに』