小夜曲“セレナーデ”
今日もあなたはそこにいる
ヴァイオリンを手にとって
世界で一番大事なことと言わんばかりの
表情を顔に浮かべて
空を見る
貴女の目に写るのは
月と星と暗い夜空のはずなのに
なぜか私の姿が写る
私の姿を見つけると
歓喜の色で顔が染まる
そして楽器を手にとって
ゆっくりゆっくり引きだすの
悲しく楽しく辛く苦しく
奏でるの
私のために弾いている
最初は自惚れかと思ったのに
こんな私に曲を弾いてくれるのは
誰もいないと思っていたのに
そんなことは露知らず
あなたはそこで奏でるの
いつでも楽しそうに奏でるの
鉄仮面を顔に張り
氷で心を凍えさせ
そんな私に何であなたは
毎日毎日奏でるの
あなたの奏でる小夜曲は
氷を溶かして私の目からこぼさすの
ほんとにあなたは嫌な人
ほんとにあなたは嫌な人
私のことなどほっといて
そんなことを毎日思うの
でもあなたは知らず存ぜぬを貫いて
毎日私の心を溶かしていくの
あなたは明日も来るかしら
あなたはいつまで来るかしら
あなたは空と心に響かせて
今日も音色を響かすの
〝ほんとにあなたは嫌な人〟
〝私はあなたが大嫌い〟