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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
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「歌舞伎者の街」 第8話

修は正座をしながら、怪我のしていない腕と包帯の腕で、身振り手振りをしながら、自分の興奮を俺に伝えようとしていた。




「ふざけるな!!! まずはこの封筒をどうするかだ! いいか? これがもしヤクだったら、売り手か買い手のどちらかに暴力団が絡む。 今の感じだと、永成会は関わっていないようだから、後は桃園連合か黒岩組。 俺は黒岩組を知っているが、黒岩組はヤクは御法度。 余所者が、ちょっかいを出しているとも考えられるが、今の時期ちょっかいを出しても、旨みは少ない。 となれば、桃園連合。 歌舞伎町を半分牛耳る大連合が出て来る。 当然、永成会のシマで桃園連合がヤクを捌いてたとなると、戦争の火種になり兼ねない。 桃園連合が、戦争を望んでいれば良し。 連合の下っ端の連中が勝手にやった事なら、戦争にならないように、お前を始末してこの事実が無かったものとするだろう。 でも、日本人ならばまだ良い。 殺されるだけで済むんだからな。 もし中国マフィアが絡んでいたら、捕まった時点でまず拷問。 誰に頼まれたか吐かす為だ。 お前が本当の事で“友達に頼まれた”と言っても、恐らくは信用しては貰えないだろう。 中国マフィアは、日本の暴力団と戦争をしたがっている節がある。 母国が経済成長して、財力が貯まりつつある今、虎視眈々とこの歌舞伎町を狙っているんだ。 聞き覚えのある組の名前を語るまで、拷問は続く。 指を落され、鼻を削がれ、肉を焦がされて、最後には急所を切られる・・・」



修は黙ったまま、思わず自分の急所を両手で押さえた。


正座したままのその格好に、何だかおしっこを我慢している小学生の姿が重なった。



「・・・それでも息があれば、そのままゴミ捨て場に放置され、今度は日本の暴力団に狙われる事となる。 一生追われる生活が、始まろうとしているんだ。 お前は解っているのか? 事の重大さを・・・?」



顔を真っ青にして俯く修は、一言の言葉を発する気力さえ奪われたようだった。



「お前には、もう1つ道がある。 これを持って警察に行くんだ。 この方法が一番マシだが、マフィアや暴力団に捕まるよりかという意味でだ」


「・・・・・どう・・いう・・・意味っすか・・・・・?」



蚊の鳴くような声で聞いてくる修に、俺は冷たく事実を伝えた。



「いいか修。 世の中は理不尽だ・・・、警察だって色々な人間がいる。 純粋に正義を貫こうとする者、法律が全てだと思い感情を切り捨てた者、政治家とつるむ者、暴力団と手を組む者、様々な警察官がいる。 警察に自首したからといって、100パーセント安心って訳ではないんだ。 お前の罪は確定しているが、初犯みたいだから恐らく執行猶予がつく。 となって、またこの世界に戻されれば、さっき言った事が始まってしまう。 警察とは、刑が確定するまでは保護してくれるが、決まってしまえばほったらかしだ」



泣いているのか、鼻を啜る音だけが事務所に響いていた。


修は、人生の終わりを感じているようだった。



「いいか修、連れに会わせろ。 今話した事が、仮説かどうか確かめて来る。 きっと連れもお前を探しているだろう。 携帯は何処のロッカーの中だ?」


「・・・えっ!?」



驚いた顔の頬に薄く筋が入っていて、目が軽く充血している。


泣いていたのだろう。


やっと自分の過ちに気がついたようだった。




                    ・・・つづく


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