「歌舞伎者の街」 第6話
六本木でクラブにナンパ、五反田で風俗、新宿でキャバクラなど、遊びという遊びを、そいつらから教わった
で、ある朝。
その男達のリーダー格から、頼まれ事をしたのだという。
頼まれ事とは、1つの封筒を渡され“この封筒を、この写真の奴に渡して、別の封筒を受け取って欲しい”と、いうものだった。
修は、中身が気になったが、封がしてあったので見れなかったらしい。
「その写真は?」
俺は聞いてみた。
「・・・この写真っす」
渡された写真に写っていた人物は、パンチパーマにサングラス、柄の開襟シャツを第4ボタンまで開け、そこから金のチェーンネックレスを覗かせていた。
本人は正面を向いておらず、盗撮に近い状態だった。
「こいつ、お前を知っているのか?」
恐らくノーという答えが返ってくる事は解っていたが、1つずつ確認する事に決めた。
「いえ、知らないっす・・・」
(やはり・・・)
修は話を続けた。
この頼まれ事をこなせば、晴れて正式に皆の仲間入りができると思った修は、頼まれ事を引き受け、封筒を受け取った。
翌日、約束通り待ち合わせ場所である“西武新宿駅中央出口のファーストフード店の前”で立っていたところ、あの3人組に襲われたという。
「・・・あの3人組、永成会岸組の奴らは知り合いか?」
「まっ、まさか!」
修は蒼褪めた真剣な顔をして、包帯を巻いていない方の手で否定した。
「襲われた経緯を、もう少し詳しく話してくれないか?」
修は頷きながらも、あまり思い出したくはない素振りを見せながら話しだした。
「・・・自分がファーストフード店に着いたのが、約束時間の10分前っす。 で、写真を見ながら通り過ぎる人を見てたっすけど、そうだなぁ~、15分ぐらいだったと思うっす。 だから、約束時間を5分程過ぎたぐらいっすか、後ろから“坊主、その封筒の中身を見せてくれないか?”って言われたっすよ。 でも、それって出来ないじゃないっすか。 だから、“出来ない”って言ったっす。 そしたらいきなりっすよ! いきなり腹を殴られたっす! 紫のスーツの男に!!」
「落ち着け。 声を荒げなくても聞こえてる」
「!? 申し訳ないっす・・・」
興奮してきた修を宥めた。
「それでヤバいと思ったっす。 で、ダッシュで逃げたら、兄さんにぶつかったっす・・・」
「・・・奴らは、お前がヤクの売人だと言っていたが、今の話によると、お前は売人役は初めてやった・・・、それも中身を知らずにって事か?」
「そうっす。 俺、何も知らなかったっす・・・」
修は、下を向き後悔の色を顔に滲ませた。
「中身は知らなくても、何かヤバいもんだとは気付いていたな?」
「えっ!?」
「惚けるな。 まずは中身だ。 いくら封がしてあったとはいえ、普通、中身は確かめるはずだ。 それか、何が入っているか聞くとか。 それをお前はしなかった。 中身を知ってしまって、ヤバい物が入っていると、あいつらと共犯になる可能性が高くなる・・・そう思ったからだ。 それから、奴らにも封筒を渡さなかった。 あんな怖そうな奴らに迫られたら、大概渡してしまいそうなもんだが、お前はそうせずに逃げた・・・」
「・・・ただ怖かっただけっす・・・・・」
「正直に話せ・・・。 お前の身柄は、永成会には俺預かりとして話をつけた。 お前は、俺に本当の事を話す義務がある」
俺は、じっと修の眼を見つめた。
・・・つづく




