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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
48/52

「歌舞伎者の街」 第47話

単純計算で、500メートルぐらいありそうだった。




暗がりの中を、倉庫の列にそって歩いて行く。


時間は22時を過ぎようとしていた。


トラックの音も、人の話し声も聞こえない。


遠くで重機が動く音だけが、微かに聞こえていた。


街灯のオレンジ色の灯りが、仄かに倉庫の無愛想な壁に彩を添える。


この黒とオレンジのコントラストが、さっきまでの俺の余裕を食い散らかす。



(・・・8、・・・7、・・・6、・・・5・・・・・・)



携帯の電源を切る。


腰から拳銃を抜き、上着に隠すように脇に抱えた。


倉庫の番号が、カウントダウンを数えてる錯覚を起こしそうになる。



(・・・・・3・・・!? ん?)



3の倉庫の前に来た時、その違和感は感じられた。


今過ぎてきた倉庫は、扉は全て壁のように閉まっていた。


3の倉庫の扉に付いてる人だけが出入り出来そうな小扉だけが、微かに開いていそうだった。



(!? ・・・何だ?)



嫌な感じがする・・・・・、凄く嫌な感じだ。



(・・・先客か?・・・・・それとも誘っているのか・・・・・・・・)



銃を構え、小扉の隙間から中を覗く。


まずはコンテナの壁が迎えてくれた。


3段積みのコンテナは、目隠しをするかのように置かれたいる。


コンテナとコンテナの間に、人一人が通れるぐらいの隙間が空いていて、道を作っていた。


迷路に入る恐怖感に襲われる。


人の気配はしない。


しーんと静まり返る闇の中へ身を沈める。


コツコツと革靴の踵の音が、微かに響いた。


踵の音がしないように靴を脱ぎ、靴下も脱いで素足で靴を履く。


その上から靴下を履いた。


こうすれば踵の音は極力抑えられるし、素足で歩いた時の危険性も無くなる。


コンテナが誘う道順通りに進んだ。


くねくねした1本道だった。


その1本道の出口らしきところまでやってきた感があったので、拳銃を構え直し、コンテナ越しに中を覗き、やはり人の気配を感じない事を確認して1本道を出る。


そこには、もの凄く広いスペースの中に何かの機械が順序良く並べられ、如何にも流れ作業で何かを作る工場を連想させた。


目を凝らして、中の様子を伺う。


ビルの3階はありそうな両方の壁に開けられた窓ガラスから、オレンジ色の灯りが漏れて影を演出していた。



(・・・間違い無い。 写真で見た麻薬の精製工場だ)



機械を横目に壁づたいに奥へ進む。


入口とは逆、1番奥に階段が見える。


階段に沿って上を見ると、部屋らしきものがあった。


コンテナ3段積みの上に作られたようだった。


その部屋からは灯りは漏れていない。


窓ガラスは割れ、廃墟みたいな部屋。



(・・・・・おかしい。 ここでは無いのか。 でも、入口は確かに俺を誘っていた・・・・・・・・!? 誘っていた? ・・・誰が?)



上の部屋を気にしながら進み、倉庫の1番奥のコンテナの角まで辿り着く。


直角に曲がり、コンテナ沿いを歩き出すと、足の裏の感触が変わった。



ジャリッ

ジャリッ



そーっと視線を落とすと、ガラスの破片が散乱している。


その真ん中に、1人、大の字になって倒れている人影があった。


銃口を向けて、ゆっくり近づく。


大の字になって倒れている人影は、目をひん剥いて頭から血を流し、身体にあいた4つの穴からも血を流していた。


死んでいるように見えた。



(!? こいつ、井上か・・・? 権田組の・・・・・)



桐生から貰った写真の中に、こいつの顔があった。


永成会権田組若頭 井上 泰治。


俺を、あの緑荘で殺せと指示を出した張本人。




                    ・・・つづく


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