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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
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「歌舞伎者の街」 第3話

誰か解らぬ人間にペラペラ話す程、お喋り好きな病院はあまり無かった。




「失礼した。 私は修の友人だ。 今朝、修が怪我をしてここに運ばれてきたと連絡を受けたので、駆けつけてきたのだが・・・」


「身分証を提示して下さい」



受付の看護婦は、あくまで事務的に対応した。


今、ここで揉めても時間のロスなので、言われた通り免許証を提示した。



「・・・ありがとうございました。 高橋 修さんは、只今集中治療室で治療中ですので、面会できません」


「!? で、容態は?」


「申し上げる事が、出来かねますが・・・」



この看護婦が事務的なのは、普通な事なのだろうが、無償に腹が立った。



「あのな・・・・・!?」


「失礼・・・。 私はこういう者だが、高橋 修の担当医に会わせて頂きたい」



斜め後ろから口を挟まれ、腹立ちついでに後ろを睨むと、ヨレヨレのベージュのコートに、やや白髪混じりのボサボサ頭・・・、聞き覚えのある嗄れ声。


そこには、警察手帳を提示している石神警部が立っていた。


俺に目を合わせず、ただ受付の看護婦にだけ話しかけている様子だった。



「・・・少々お待ち下さい」



看護婦は受話器をとり、何処かへ連絡を入れた。



「はい・・・はい・・・いえ、警察の方が・・・・・はい、承知致しました。 そのように致します。 ・・・・・警察の方、どうぞ・・・先生がお会いになるそうです。 西館4階の集中治療控え室へ行って下さい」



石神警部は、看護婦から経路を聞いて、俺に背を向け歩き出した。


その背中越しで、ただ立っている俺に向かって一言言った。



「来ないのか? 探偵?」



(!? 哲さん、ありがとう)



心の中で呟き、哲さんの後を追った。


先生の話はこうだった。


修は今晩がヤマになるだろう。


通報が早かった為、海水にはそんなに長く浸かっていた訳では無く、水もそんなに飲んでいない。


ただ問題が1つ、覚せい剤を大量に打っていたらしく、身体が拒否反応を起こしていると。


生死をさ迷っているのは、それが原因だと言っていた。



「覚せい剤・・・・・」



石神警部が、何か俺に話し掛けているようだったが、俺はその時、修と出会った時の事を思い出していた。




1年前・・・、夜の歌舞伎町。



「待てーーーっ!! この野郎!!!」



コマ劇の前の広場から、一番街通りを曲がって俺の方へ、3人の派手なスーツを着た男達が走って来た。


その前を、彼らに追われるように、痩せ面の1人の餓鬼が走って来る。


俺とすれ違う瞬間、その餓鬼が俺を避けようとしたのか体を捻った・・・が、肩がぶつかって、その餓鬼は路上に倒れ込んだ。


すぐさま立とうとしたが、追って来た3人組に抑え込まれてしまった。



「てめぇ!!! 誰に許可取って商売してんだ~ぁ! あぁ!!!」



紫のスーツの男のエナメルが、餓鬼の腹に刺さった。


もう1人の黒のスーツの男が、餓鬼の頭を地面に押し付ける。



「グフォッ! オェエエ~~ッ」



この3人は、質問をしておきながら、答えられないぐらいに暴行を続けている。


歌舞伎町では、良く見る光景だった。


ここでは、これくらい日常茶飯事、野次馬も集まらない。


放っておけば良かったのだが、何故か気になってしまった。



「おいっ! もういいだろう。 この餓鬼が何をしたか知らないが、これじゃあ口の中に血が溜まって何も喋れない・・・」



一言挟んでしまった。



「あ~~~ん? 爺ぃ!!! てめぇ!! こいつの連れかぁ???」


「・・・いや・・・・・」


「だったら黙ってろ!!!」



黒と紫はまた、暴行を始めた。




                   ・・・つづく

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