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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
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「歌舞伎者の街」 第38話

俺は、守氏が喋れないように捲し立てた。




「この事は、事件の全貌を見る上で大事な事だ。 この事が解かれば、きっと黒幕も見えてくる。 そのルポライターが社長に話した事を、教えてくれないか? 資料は俺の手にあって、調べれば解る事なのだろうが、時間が惜しい。 今日の晩、24時に中井にある緑荘まで来てくれ。 住所は中井3丁目だ。 これで今晩中に黒幕が掴めるな。 ・・・ん!? 携帯が鳴ってる。 これで切るよ!」



ガチャン



この嘘で、守氏には悪い事をした。


資料なんて物はありはしないし、守氏も何も知らない。


でも、相手がこの会話を盗聴していれば、きっと俺の所へ来る。


守氏も危険に曝される。


この資料があれば、守氏が居なくても黒幕が解る・・・という会話を盛り込んだのは、相手の興味を俺に向けさせる為だが、守氏が危険な目にあう可能性は0になっていない。


だが、俺には時間が無かった・・・・・茜が姿を消した以上・・・。


相手を罠にハメる。


罠といっても、完璧な罠では無い。


相手を疑心暗鬼に掛けた・・・、ただそれだけの博打的な罠だ。


相手もきっと罠だと思っている・・・、でももし資料が実在したら・・・という疑心暗鬼。


等々力病院の名前が出ている以上、確かめに来ざるおえない。


形振り構わず、警官で押し寄せて来たら俺の負け。


指名手配されている俺には、どうする事も出来ない・・・。


しかし、もし隠密に始末しようとしてくれたなら、俺にまだツキは残っている。


この勝負・・・どちらに転ぶ・・・・・。



23時半。


もう、この車の中に隠れてどれぐらいが経つのだろう。


龍マスが貸してくれた車・・・、そして緑荘の入口が一望出来る駐車場。


緑荘の爺には、“ここをダシに使わせて貰った。 危険だから、何処かに身を隠しておいてくれ”と言ったのに、“わしも退屈じゃったから、たまには刺激が欲しいぞい。 それにわしがここにおった方が、ダシとしてより完璧になるのではないかぇ?”なんて抜かしやがった。



(・・・本当にすまない・・・・・爺・・・)



約束の時間、10分前。


あたりには人影も無く、静まり返っている。


街灯はあるものの、ここが東京の街中だとは思えなくなってきていた。


遠くから車の音がする。



(・・・すごく静かだが、シーマだなこれは・・・。 社長が来たか・・・)



白のシーマが緑荘の前で止まり、後部座席から1人を降ろして立ち去った。


緑荘の引き戸がガタガタと音を立てて開き、中から出てきた爺と何やら話した後、守氏ごと建物の中へ飲み込んだ。


それから、3、4分が経ったか・・・、緑荘の引き戸の前に、4人の人影が浮かんだ。



(来た!!)



まだ、ツキは残っていた。


警官では無い・・・、私服かもしれないが、もしこれが公務なら、ガサ入れするのに4人は無い。


朗らかに、俺達を始末しに来た奴らだと思った。


4人とも、手には拳銃らしき物を持っている。


この4人も、本当であれば忍び込みたいのであろうが、引き戸の立て付けが如何せん悪い。


諦めたのか、やはり引き戸をガタガタと音をさせながら、中へ雪崩込んでいった。


俺も、腰に刺さっている拳銃を抜き、4人が中に入るのを見計らって車から出た。


銃声はしない。


4人が入っていった引き戸は、口を大きく開けていた。




                    ・・・つづく

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