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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
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「歌舞伎者の街」 第37話

俺は“かけ直す”と言って一先ず切った。




「・・・龍マス、不動です」



緑荘を出て、ちょっと離れた公衆電話から、龍の隠れ家へ電話をした。



「不動、着いたか?」


「あぁ、着いた・・・」


「不動、聞いてくれ。 今、楠木という方から連絡が入って、おまえの助手さんだったかな? 茜さんというのは・・・。 行方が解らなくなったらしい。 俺は、不動の居場所を知らない事になってるから、探してみると伝えてある・・・」


「!?」



嫌な予感が、頭から離れない。



「お前の良い時に、あっちに連絡してやってくれ」


「・・・・・龍マス、ありがとう。 そうする。 ・・・龍マス、楠木家は盗聴されてる恐れがある。 龍マスにも迷惑が掛かるかも・・・、気を付けて・・・・・」


「フッ、気にするな。 俺は、あの事件の時に1回死んでる。 何が来ても怖くないさ」


「悪ぃ・・・」



電話を切り、公衆電話の場所を変え、楠木家に連絡を入れる。


ハツさんが、会長につないでくれた。



「・・・会長、説明してくれないか?」



一郎会長が説明したのは、こうだった。


俺が出ていって、一郎会長と茜は、俺の手帳を元に病院を調べてみようという話をしていた。


その時、警察が入ってきて、任意同行だと言って茜を連れていったそうだ。


慌てた一郎会長は、知り合いの弁護士に連絡。


午後3時過ぎに弁護士が警察署に着いた時には、“事情は聞けたので、昼過ぎにはお引取り頂いた”と警察は言う。


携帯にかけてみたが、電波が届かないの繰り返し。


今まで待ってみたが、一向に連絡が無い。


危ないのは承知で、俺に連絡したという。



「・・・・・携帯がつながらないのが気に掛かる。 そこに弁護士はいるか?」


「あぁ、いる」


「ちょっと聞いてみてくれ。 うちの事務所から、覚醒剤が出てきた。 そこの従業員である茜が、そんなに早く釈放されるかな?」


「・・・・・・・・・・・・。 弁護士はこう言っておる。 “通常であれば、共犯を疑う。 拘留期限とまではいかないが、暫くは警察の監視下に置くだろう”とね。 わしもそう思うのだが・・・」


「そうだろうな・・・俺も同感だ。 会長、この件は俺に任せてもらおう」


「わかった。 宜しく頼むよ。 それでだ。 茜が警察に行く前に、不動君に調査結果を報告してくれと・・・」


「!? ・・・調査?」


「そうだ。 今、守と変わる」


「不動さん! 守です」


「あぁ、すまない・・・」


「いえ。 病院の事で、調べてみました。 調査結果はこうです・・・・・」



兼ねてから、黒い噂があった等々力病院。


四谷の駅前にあり、かなり儲けている感じだという話が広まっていた。


通常であれば、医師会とかが、調査、指導、監督を行うのだが、この病院には、後ろにでっかい何かがいると・・・、政治家か果ては国家権力か・・・。


その影に怯え、どこの組織も手が出せないのが現状らしい。


でも、あるルポライターが、これは強請り目的だったらしいのだが、徹底的にこの病院を調べた。


そのルポライターは、守氏の友人で、素行は悪いのだが義のある熱い友人だったらしい・・・、だったとは、調査に入って3ヶ月が過ぎようとしていた頃、今から2年前、東京湾に浮いていたようだ。


死因は、覚醒剤により幻覚症状をおこし、東京湾に自ら入水。


急激な体温変化による心臓麻痺。



「!? なんだ! これ! 修と一緒じゃないか・・・」


「そうなんだ、不動さん。 茜と話していて、思い出したんだ。 覚醒剤、病院、東京湾、警察。 不動さんの手帳に書いてあったピースは、全てこの“等々力病院”を指してると思うんだ」


「・・・・・」



考えた。


頭がフル回転しているのが感じられる。



「・・・不動さん?」


「あぁ、聞いている。 じゃぁ、俺が屋敷を出る前に渡してくれた封筒に、そのルポライターの調査資料が入ってるんだな・・・」


「え!?」


「大体読んだが、解らないところが幾つかある」



俺は、守氏が喋れないように捲し立てた。




                    ・・・つづく

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