表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
22/52

「歌舞伎者の街」 第21話

それで、ここに来たという。




「1年前の約束ですね・・・」


「その通り! ・・・と言いたいところですが、どうもはっきりしない事がある。 うちの若い衆は、高橋 修には会っていないと言うんです。 じゃぁ、どっから手に入れたかと聞くと、“ヘルスの女だ”と。 となると、高橋 修はなんだ?という疑問にぶち当たる。 女は“高橋 修から仕入れている”と言ったらしいが・・・・・おかしくないですか?」


「確かに・・・・・」



俺は即答で答えた。


売人と客の関係は、薬の売買・・・それ以外に無い。


客の方は、何処から仕入れてようが関係無いし、売人は仕入先をどんなに聞かれても答るはずがない。


仕入先を教えてしまえば、次、この客は仕入先にアポを取り、今よりも安く手に入れ、自分の客を減らしてしまうからである。


なのに何故、高橋 修が仕入先だなんて、その売人のヘルス嬢は客にバラしてしまう?・・・・・という同意の疑問を、俺と桐生は持った。



「だから、不動さんに1年前の約束を守ってもらう前に、高橋 修本人から話を聞こうと探したのですが、昨日の夜からサッパリ足取りが掴めない・・・・・と、言うことですわ・・・」



前屈みで話していた桐生は、腕を組みつつソファーの背もたれに体を預けた。



「・・・成る程」


「どうです? 高橋 修の居場所、教えて頂けませんか?」



暫く・・・といっても2、3秒の事だろうが・・・・・間を取った。



(桐生を・・・信じて良いのか? 桐生達が、修をあんな酷い目にあわせたのではないのか? もしそうなら、何の為に・・・・・。 処罰・・・落し前・・・。 もしそうなら、何故桐生は俺に会いに来た・・・?)



結論は出ない。


俺は覚悟を決めた。



「解りました。 お教えしましょう・・・」



台所で聞いていた茜は、少し驚いたようで、自分の持っていたグラスをコトッと音をさせた。


桐生は、視線を茜に持っていきながらも笑みに戻り、膝に手を付いて頭を下げた。



「・・・ただ桐生さん。 桐生さんのご期待には添えないかと思います・・・」



桐生は、下げていた頭だけを上げ、顔を俺に見せた。


その時の桐生の目は、眼光鋭く何者も凍らしてしまう力があるかのように思えた。



「・・・・・何でですか?」



その凍てつくような目を見ながら、俺は1歩も退かずに答える。



「入院しているからです・・・」


「入院・・・・・だと・・・?」


「はい。 今朝、修は、その質の良い覚せい剤をたらふく射たれ、東京湾に捨てられていました・・・」


「・・・・・・・・」



桐生は、本物の驚きの顔を見せた。


「幸い発見が早く、溺死は免れたのですが、医者の話だと薬の拒否反応が出ていて、意識不明だと・・・」


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


「・・・ちょっと失礼・・・・・」



桐生は携帯を取り出し、何処かへ電話を掛けた。



「・・・・・おぅ、俺だ。 おめぇ達は、今朝東京湾に誰が浮いていたか知ってるか? ・・・・・・・・おぅ、それで?・・・・・・・・・・あぁ・・・・・うん・・・・・・・・そうか、解った・・・・・」



眉間に皺を寄せ、険しい目つきでテーブルの角を見ている桐生は、本物の極道の風格を出している感じがした。



「・・・不動さん、どうやら俺達はヤバくなりそうだ」



桐生は、そう言うとソファーから立ち、自分の横に置いてあったコートを着だした。



「!? 桐生さん・・・、何かあったのか?」



帰り支度を始めていた桐生は、一旦手を止め何かを思考しているように見えた。


桐生が話し出すまで俺は待つ事にした。



「・・・・・不動先生、今日これから予定ありますか?」



(!? 先生?)



頭の中で復唱し、脳に鳴り響く警告音を無理やりねじ伏せ一言答えた。



「無い」


「じゃっ、後でここに連絡入れますわ」




                    ・・・つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ