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「歌舞伎者の街」  作者: 光鬼
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「歌舞伎者の街」 第1話

「先生、大丈夫ですか?」




俺は、二日酔いで潰れていた。


二日酔いなど滅多に無い事だが、今回は参った。


俺の二日酔いは、頭は痛くならないものの、体のだるさと気持ち悪さが前面に出る。



(・・・日本酒と焼酎のチャンポンは、止めた方がいいな・・・・・)



「先生、お水とお薬を持ってきました」


「あぁ、ありがとう」


「先生、あまり無理しないでくださいね・・・。 特に今時の若者と張り合うなど・・・」


「め、面目ない・・・」


「わ、私はいいんですけど、先生のお身体が心配で・・・。 私、事務所で書類整理してますんで、気分が良くなったら顔出して下さいね」


「あぁ・・・」



彼女は小林 茜。


俺のパートナーになって3週間になる。


俺がほったらかしておいた書類の殆んどが、この3週間で片付いてしまった。


俺には勿体無い優秀なパートナーだ。


そして、二日酔いで潰れている俺は、不動 武。


歌舞伎町で、しがない探偵稼業を営んでいる。


まっ、今風の言い方をすれば、ダメダメな人間である。


何故、そのダメダメな人間にそんな優秀なパートナーが付いたかというと・・・、長くなる、止めておこう。


【不動探偵事務所事件簿・空・参照】



(もう昼かぁ。 あまりだらしなくもしていられないな・・・)



茜がくれた薬を飲み、軽く身形を整えて事務所に出た。



「あら、先生。 大丈夫ですか? もう少しゆっくりなさっても・・・」


「いや、大丈夫だ。 何か変わった事はあったかい?」


「いえ、何も・・・・・あっ!! そういえば、朝早くの留守電に、変な数字が吹き込まれてました・・・、はい、オレンジジュース」


「あっ、有難う。 で、何て入ってた?」



俺は、茜が作ってくれたオレンジジュースを1口飲み、煙草に火を点けた。


茜が来てからのオレンジジュースは、殊更に美味い。


何でもジューサーミキサーで作ってるらしい。



「えーっと、メモメモっと・・・。 あった! 15、3、73です・・・・・何でしょう? 悪戯かしら?」


「何時頃入ってた?」


「朝、5時38分です」


「解った」


「!? わかった・・・ですか?」


「あっ、すまん。 伝えてなかったな。 茜は若いから、解らないかもしれないが、ポケベルの打ち方だ。 そうだな~・・・!? そうだ!! 携帯のメールを打つ時に、間違えて文字選択が数字になってたらどうなる?」



茜が瞳を斜めに上げる瞬間、今にも目の球が零れ落ちそうなくらい眼を見開いた。



「そっかぁ!! 1が5回で“お” 3が1回で“さ” 7が3回で“む” ですか?」


「そっ、良くできました。 修が連絡を欲しがっているみたいだな・・・」


「なるほど・・・でも何でこんなややこしい事を?」



茜は、わからないといった感じで、目をパチクリとした。



「実際、留守電というのは、プライバシーが無い。 誰にでも聞かれてしまうという事で、こんな子供騙しを約束事にしたんだ。 簡単だが、まずまず効果あるだろう?」



俺は携帯電話を取り出し、修の短縮に掛けた。


高橋 修。


歌舞伎町でホストをやっている。


昔、ちょっとしたいざこざから救った事があり、今では俺に情報をくれる仲にまでなっていた。


底抜けに明るい奴である。



「・・・・・出ないなぁ。 呼び出してはいるんだが・・・」



一抹の不安を感じた。


今は12時過ぎ。


普段のホストであれば、寝てて出ないのは普通のこと。


でも、何か引っ掛かった。




                    ・・・つづく


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