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レインズ・カレッジは歴史あるエスカレーター式のスクールだ。だから、見知った顔も多いが、カレッジ生になれば、編入生も多く見受けらる。
「スノー、おはよう!……何でそんなにキョロキョロしてるのよ。落とし物?」
レインズ・カレッジの入り口である門の前で、辺りを見渡し続けるスノーウェルに、エポニアが声をかけた。スノーウェルはエポニアに得意げに言った。
「落とし物というよりも、探し物。探し人、かな?」
「あー、フロスティーナ・パンテラ・ユニスね」
「ふふふ、そう!フロスティーナ・パンテラ・ユニス様!あのカフェに来たんだもん。フロスティーナ様も絶対にここに通ってると思うの!」
「ここからカフェってそう遠くないもんね。……でも、どうかな」
「ここはこの国で最難関といわれるスクールよ。私はフロスティーナだからといって、簡単に編入出来るとは思わないわ」
「それに、私は特別フロスティーナが賢いとも思わないしね」
「エポナは昔からそう言ってるわね。……まあ、確かにフロスティーナ様はどちらかというと努力の象徴みたいな方で、その努力が全て実るって言うのは、難しいかもしれない」
「だけど、それでもね、私は信じてるの」
「きっと、今世でもフロスティーナ様は決められた枠にはハマらずに、その上を目指して頑張ってるんじゃないかって」
「……そうだったら素敵だなって思うから、私も頑張ろうってなる。……そう思うのは可笑しいことかな、エポナ」
「ううん、可笑しいことは無いわよ。……変わらないわね、あなたへのフロスティーナの影響力は」
「それが、良いか悪いかは、まだ分からないけれど、スノーが楽しいなら、私はそれでいいよ。……ところで、そろそろ一限が始まるんじゃない?」
「新学期早々サボるのも良い思い出になるかもしれないけれど、どうする?」
エポナの言葉にスノーは目を見開き、慌てて時間を確認すれば、冷や汗が出始める。
「行こう!エポナ!」
スノーはエポナの手を掴んで走り出す。
「走るな!」と遠くの方から声が聞こえた声は知らんぷり。2人は笑いながら校舎の中へと駆けて行った。
その笑い声は、校舎の奥へと消えていく。──────同じころ。
「クロウィア君、2年間の留学お疲れ様」
「ありがとうございます」
「さあ、簡単ではあるが、校舎を案内するよ。行こうか」
「ご丁寧にありがとうございます」
労うように伸ばされた手。フォグ・クロウィアは、にこりと微笑み、その手を握り返した。────故郷に戻ってきて、はや一週間。
新生活とはいえ、見慣れた街並みに心が躍ることはない。……どうやら、どこぞの幼馴染は違うようだが。
「行こう!エポナ!」
校舎を繋ぐ風通しの良い外廊下を歩いていると、ふとフォグの視線は、学園を囲う重厚な門の方へ吸い寄せられた。日が出ているとはいえ秋口の空気はまだ冷たい。それだというのに、さっさと室内へ入るでもなく、門のあたりで誰かと屯している姿が見える。その立ち姿だけで、フォグにはすぐに誰かが分かった。
「変わらないな、お前も」
「どうかしたかい、クロウィア君」
「いえ、別に」
淡々と、始まった新生活。だけど、彼女がいるなら、少しは面白みが生まれるだろう。
そんなことを思いながら、フォグは自身の視線が彼女に気づかれる前に目を逸らした。




