過去
誤字とかがないといいのですが…
「私は、双子です。ただ、姉は私が5歳の時に亡くなりました。」
双子は珍しい。特に、力をもつ巫女が双子で産まれることは今までに一度もなかった。
母はとても優しい人で、「双子なら協力しあえるわ。ひとりで出来ないこともふたりなら、きっと助け合って成功させられるわ。」といつも言っていたらしい。けど、私たちは皆が望むように均等ではなかった。私は大きな力をもって産まれたが、姉は力をそれほどもっていなかった。力に差がありすぎた私たちには、『助け合う』なんて出来なかった。
「姉は体が弱く、いつも寝て過ごしていました。森の管理は母に教わりながら私ひとりで行いました。姉は、ごめんね、しか言わなくて、私はどうしたらいいのか分からず、姉を避けていました。」
巫女としての仕事が増えれば増えるほど、姉は私に気を遣うようになった。それが堪らなく嫌だった。姉には、良く頑張ってるね。偉いね。って褒めてもらいたかった。でも、動けない自分のせいで妹が幼い内から仕事をしている。という事実は姉にとってとても重いものだった。
「私が母と仕事をしていたとき、なんというか、力が増えるような変な感じがしたんです。嫌な予感がして、母と急いで家に戻ると姉は冷たくなっていました。そして、姉はすべての力を私に与えてから自ら命をたった──ということにされました。」
「どういうことだ。」
それまで黙って話を聞いていた森の代表が口を挟んだ。本当はここから先は話したくない。でも、そんなことを言って森の者との関係を壊すわけにはいかない。
「私の声はここにいる方々以外、誰にも聞こえませんか?」
「絶対にこの会話が漏れることはない。」
(絶対を信じるしかないよね。)
私は覚悟を決めて、話を続けた。
「姉は、殺されました。毒を盛られたみたいです。」
皆、自殺だと決めつけた。体が弱くあまり仕事をこなせないことにかなりのストレスをもっていたのだろう、と。でも、私は信じられなかった。姉の事を避けていた私が言えることではないかもしれないけど、姉はとても心の強い人で、自ら命を絶つことなんて絶対にしない。
「私は母に話をして、二人で調べました。そしたら、やっぱり姉は自殺じゃなかった………」
私と母が調べはじめて少しした頃、母の料理に毒が盛られた。母はなんとか無事だったけど、私たちが姉を殺した犯人を探そうとしていることに気づいた誰かが毒を盛ったのは明らかだった。
「もし、姉が本当に自殺なら私たちを殺そうとする意味がありません。それからしばらくして、私はある程度一人でも仕事をこなせるようになって、母と別で仕事をすることが多くなりました。あの日も、母と私は別の仕事をしていました。」
あの日、母は森の管理をしていた。少しだけ森に入り、森が傷ついていないか確認していた。私は、書類を書いていて、母と一緒にいることが出来なかった。
「母は突然、森の者に襲われました。街の人間が森の者を怒らせて。母はひどい怪我をしていました。私が駆けつけたときには、もう、ほとんど息をしていないうな状態で、その後すぐに息を引き取りました。………姉と母を殺した人物は同じです。もちろん、母は直接人間に殺されたわけではありません。だけど、あの時、森の者をわざと怒らせた人間がいます。もっと言えば、街の人間を森にいれた人間がいる。おそらく私たち一族のなかに。」
森を守るため、森に入っていいのは巫女だけ。巫女が許可した場合のみ一条家の者も入れるが、森の管理に多くの人間は必要ない。母が森に入ることを許可したとは考えづらい。そして、私たちが森の管理をしていることを街の人間は誰も知らない。あのタイミングを狙えるのは一族の人間だけ。
「犯人は分かっているのか?」
「……いいえ。何人かに絞れてはいますが、まだ分かりません。」
(悔しい……)
「お前が会話を聞かせないようにしたのは、犯人探しをしていることがバレないようにするためか?」
「それもあります。けど、ふたりを心配させたくないから。」
私が暗い顔をしていると、あのふたりはすぐに心配してくれる。それは、嬉しいけど、迷惑をかけたくはない。だから、もう何も気にしていないように振る舞わないといけない。
「そうか………」
森の代表はしばらく考えてから私に言った。
「お前、俺と契約しないか?」