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決断

数時間後………

私の家に一族の者が皆、集まった。

「皆、集まってくれてありがとう。」

感謝を伝えると、皆がそれに応えてくれる。

それがとても嬉しい。

「今日集まってもらったのは、これから、私たちがどうしていくべきか、についてお話をしたかったたからです。」

私はいきなり本題に入る。

「私は今日、国の会議に参加してきました。そして、国の幹部の方々に魔物の力が強くなってきていること。魔物との戦いで死者が出ていること。森に勝手に入る者たちがいること、などを全て話しました。そのうえで、私たちと国の者が協力し会うべきだと訴えました。しかし、帰ってきた返事はあまりにもひどく、彼らは死者を罵り、私たちが仕事をさぼっているのだと、根拠のない噂をたてられました。」

「なんだと!」

「我らに興味も示さないくせに!」

私の説明を聞き皆が怒りをみせる。

「私は、もう、自分勝手な人間を守る必要はないと考えます。それに、彼らは言いました。私たちは魔物への対策を考えるのに忙しいから関わってくれるな、と。私は警告をしました。私たちが国を守らなければ大変なことになる、と。しかし、彼らはそれを嘲笑った(わらった)。ならば、守る必要はない。これが、私の考えです。」

誰も話すことなく、私の話を聞いてくれた。

(やっぱり私は、わがままな街の人たちよりも、私の話を聞いてくれる人を守りたい。)

国を守らなければならない者として、私の考え方は間違っているのかもしれない。ここに集まったものたちなら必ず間違いを指摘してくれる。だから、話した。ここの皆がこの考えに同意してくれるのなら、私は、自分の心に従う。

「………朱莉様のお考えは理解しました。わたくしも、死者を罵る彼らは許せません。それに、最近、勝手に森に入るものがいるのも事実。しかし、守らないと言うのは具体的にはどうするのでしょうか。」

沈黙を破って小次郎が言う。小次郎は昔から私のことを気にかけてくれている。集まったメンバーの中でも高齢な部類だ。

「私は、先ほど森から出てきた魔物たちと話しました。そこで、魔物たちに協力をもちかけました。」

「協力、ですか?」

「私は、森に入り、勝手なことをして、魔物たちの穏やかな暮らしを邪魔する人々が許せません。昔から、魔物は恐れられていますが、それほど狂暴で危ない生き物ではないことは皆様もよく分かっていると思います。」

魔物、何て言われるから狂暴で人を襲う、危ない生き物のように思われるが、実際は全然違う。

ある程度人の言葉を理解してくれるし、用がない限り森から外にでない。最近は怒っていて狂暴化しているが、普段はかなり温厚だ。

知らない人間が騒いでいるだけだ。

「確かに……」

「私は、昔から森に住む者たちと良き関係を築きたいと思っていました。そして、今日私は人間に失望し、森の者たちと協力を誓った。だから、皆様の意見を聞きたくて集まって貰いました。」

私は正直な気持ちを話す。ここにいる者は皆、私が信頼できると考える人たち。幼い頃からずっと私を見守ってくれて、親代わりのような人たち。だからこそ、自分の気持ちを正直に話すし、皆の気持ちも正直に聞きたい。

「………そうですか。朱莉様がそういうのならわたくしたちに異論はありません。」

しばらくの沈黙を破り小次郎が応える。

そんなにすぐに私の考えに賛成してくれると思わなかった。

「いいの? 怒った魔物との戦いで、死者も出してる。私はみんなに慕われていいような器じゃない。私が一条家は筆頭だからって、無理して私にあわせなくていい。私の力が足りないせいで今までたくさんの迷惑をかけた。今日だって、国の者と仲良くできなかったのは私の力が足りなかったから。」

気がつけば一生懸命、否定していた。せっかく小次郎が賛成してくれたのに、自分でそれを否定してしまった。

「全く、いつまでも手のかかるお嬢様ですね。わたくしどもは、朱莉様にたくさんよくして貰いました。そのご恩を返すのは辺り前のこと。朱莉様だけでなく、あなたのお母様やおばあ様にも、よくしていただいた。朱莉様は好きなように生きていいのです。」

「小次郎………」

「ホント、弱っちいお嬢だな。朱莉さま、あんたは俺らのボスだ。なにも心配しないで好きなように生きていいんだぜ。」

「我ら一同あなた様と共に!」

「みんな……」

皆が口々に励ましてくれる。

「朱莉様、私はずっとそばにいますよ。」

「薫……」

(ここは、あたたかい。私は一族の長でなくてはいけないと思ってた。でも、そんなに細かく考えなくていいんだ。)

「みんな、ありがとう!」

「ふふ、やはり朱莉様は笑顔が一番似合いますな。」

小次郎の一言に皆が笑う。私はこれからは、ここにいる皆のために力を使いたいと思った。

「では、これからは森の者たちと仲良くする、ということでよいのですね。」

薫が確認を取る。

「えぇ、そういうことになるわ。それと、森の者たちを魔物というのもやめましょう。仲良くする者たちを魔物と呼ぶなんて失礼だもの。」

「では、なんと呼ぶのです?」

(確かに、考えてなかった……)

「おそらく、数日中に森の者のなかでも、強い力をもつ者がここを訪ねてくると思います。そのときにどう呼べばいいか、聞いてみようと思います。」

「分かりました。では、そのときまで待つとしましょう。」

「えぇ。皆様、今日は長く話し合いに付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。今日は我が家に泊まっていっていただいて構いませんから、ゆっくりやすんでください。」

私は、皆に休むことを進め、話し合いは無事終わった。あとは、森の者と良き関係を築けるよう頑張るだけだ。


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