3歳
1
「大きくなったら、にぃにと結婚するね」
それは詩音とおままごとをしている最中のこと。
突然の結婚宣言に、僕はぎょっとする。
「にぃに、好きなの」
純真な笑顔で、なのにちょっと照れ臭そうに詩音は言う。
女の子は成長が早いというけれど、もう色恋の感情が芽生えているのか……
それとも、家族への好意を好きという言葉でくくっているだけの、勘違いというだけなのかもしれない。
まあ、なんにせよ、僕と詩音は兄妹なのだから、結婚なんてできるはずがない。
「にぃに、詩音のこと好き?」
好きに決まっている。
もしこの先、詩音が美少女に成長して、どこかの馬の骨と結婚することになったら、と考えたら、今から怒りが沸々と湧いてきそうだ。
詩音が彼氏なり婚約者なりを連れてきた時、僕は冷静でいられるだろうか。もしもその男が詩音を泣かせたら……
「にぃには、好きな人いる?」
いるに決まってる。
「誰、誰?」
詩音だよ。
2
「にぃに、遊ぼ」
休みの日は朝から晩まで詩音にかかりっきりになる。高校では帰宅部に所属(?)して土日がフリーなのと、母が休日にパートに入るようになったからだ。
兄妹二人きりという状況は嬉しいが、ちょっと疲れる。
「にぃに、今度はゲームしたい」
詩音を膝の上に乗せ、テレビゲームに熱中する。
子供特有の柔らかい匂いがたまらない。
「やったー、勝ったー」
詩音は子供のくせに目ざとい。分かりやすく手加減をされると不機嫌になってしまうし、負ければそれはそれで不機嫌になる。なので、ギリギリの接戦を演じながら勝たせてあげるのだ。
「にぃに、よわーい」
詩音が満足そうでなによりである。