9歳
1
「見てぇ、お兄ちゃん」
詩音はくるりと一回転する。
フリルのついたスカートがふわりと翻り、白くてほっそりとした太ももが露わになる。
「可愛いでしょ。さっきお母さんと買いに行ったの。お兄ちゃんに見せたくて、すぐに着替えたんだよ」
9歳になり、詩音は女の子らしく振る舞うようになってきた。低学年の頃は服装も男の子のような半そで半ズボンばかりで、動きやすいものばかりだった。
しかし最近は体のラインが出るようなぴっちりとしたシャツに、スリットが横に入ったスカートなど、詩音にはまだ早いんじゃないか? と思うような服装が多い。
オシャレに興味が出てきたということなのだろうか。
それもまた詩音の成長の一部だと思えば、喜ぶべきことなのかもしれない。体も子供特有のぽってりした体格から、華奢ですらっとした体格になってきた。
しかし、こうやってだんだんと少女から女へ変わっていくのだと思うと、やっぱりちょっぴり悲しかった。
「お兄ちゃんはこういう格好、好きだったのかな?」
詩音はちょこんと座り直した。
声にも、なんだか男を惑わすような媚びというか、甘いものが無自覚に混じってきている。
願わくば、可愛いままの詩音でいてほしい。
すれたり、グレたりすることのないように祈るばかりだ。
ずっと、僕のことを好きなままの詩音で……