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銃と少女と紅い百合  作者: 彼方リカ
私がいたいのは
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92/120

10-2 始まる


 凛々奈は早足で唯牙のデスクの前に移動すると鋭い目で唯牙を睨みつつ口を開いた。


「何処の、どいつ?」


「り、凛々奈さん・・・!」


 その鬼気迫る様子にみいなは少し後退りする。


「落ち着け、二人とも命に関わる怪我じゃない、ただまだ意識は戻らないそうだが」


 睨みつける眼光を意に介さず唯牙はもう一度スマートフォンを操作しようと手を動かした。


「何処のッ!! どいつだッ!!!!!」


 ダァン! 


 凛々奈が拳を机に叩きつけ叫んだ。拳の下から唯牙に向かってヒビが入る。


「落ち着けって言ってるだろ」


 ドゴォン!!


 また激しい音が部屋の中に鳴り響く。先程よりも重い音。唯牙が凛々奈の顔を殴りつけた音だった。勢い良く壁まで吹き飛ぶ凛々奈。


「相手の正体は不明だ、分かってたらもう殴り込んでる」


「凛々奈さんっ!!」


壁に叩きつけられ倒れる凛々奈にみいなが駆け寄って抱え起こそうとする。


「・・・・・おっけ、頭冷えたわ ありがとセンセ」


 すると凛々奈は口元から流れる血を拳で拭いながら立ち上がる。


「ごめんねみーちゃん、びっくりさせちゃったね」


 少しぎこちない笑顔でみいなに笑いかけるとまた唯牙の前へ立つ。


「私はハル達の所へ向かう、それからシエルの所に巻き込まれた一般人が治療の為に入院してるらしいからな、とりあえずシエルに連絡を・・・」


 唯牙がまたスマートフォンを操作しようとすると手に持つスマートフォンが振動を始める。着信中の画面を見ると唯牙の顔が歪む。画面には非通知の表示。1拍置いた後にそれをを耳に当てる。


「・・・・・・・・・」


 電話の相手の声は凛々奈達には聞こえない。しかし唯牙が相手の声を聞いた瞬間に口から出た大きな歯軋りの音だけは凛々奈達の耳に届いた。


 暫く相手の言葉を聞いた唯牙は一言だけ「分かった」とだけ呟くと通話を切った。


「・・・・誰?」


 通話が終わったのを確認すると凛々奈が声を掛ける。


「・・・悪いが急用だ、少し出る」


「ハァ!?」


 ハルさん達がこんな時に! と言いかけた凛々奈は唯牙の顔を見て口を噤む。長い間共に暮らしていて数回しか見た事のない唯牙の本気の怒りの表情を。


「りょーかい・・・」


 凛々奈の返事を確認すると唯牙は玄関の横にかかっている自身のコートを羽織り事務所を後にした。


「凛々奈さん・・・・ 二人とも大丈夫なんでしょうか・・・」


 みいなは幸せな日常を過ごしていた筈のいつもの部屋が、暗く殺伐とした雰囲気に変わってしまい不安に泣き出しそうになる。


「みーちゃん、大丈夫だよ」


 凛々奈は膝を曲げて屈んでみいなの視線に自分の顔の高さを合わせると優しく頭を撫でる。


「凛々奈さん・・・・」


 撫でられて少しだけみいなの不安が和らぐ。


「さて! 私達もじっとしてらんないね!!」


 言って凛々奈は勢い良く立ち上がった。


「シエルさんの所に巻き込まれた人が居るって言ってたわね、無駄かもしれないけど聞き込みに行くわ!」


「あ! もしかしたらハルさんとサクラさんを襲った人の事知ってるかもですね!」


「うん! ただ此処にみーちゃんを一人に出来ないからね、一緒に来てもらっていい?」


 凛々奈がみいなに手を差し出す。その顔はもういつもの元気な笑顔に戻っていた。


「はい!」


「それが終わったら二人の所にお見舞いに行こうか!!」


 みいなは差し出された手を握る。


 その手を繋いだまま二人も事務所から飛び出した。



 

 


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