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銃と少女と紅い百合  作者: 彼方リカ
白銀ハルと鋼の蝗虫
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5-3 潰れたトマトと鋼鉄蝗虫

 ハルが車を走らせて辿り着いたのは郊外のビルの建設現場。これから合う相手が管理しているらしく、人払いは済んでいるとの事だった。


 今回ハルは相手からとあるデータを貰う事になっている。それは最近裏の界隈で特殊な武装、鎧殻が出回っている事についてだ。しかし出回っている者は以前に凛々奈が戦った物と比べるとその足元にも及ばない粗悪品、劣化版。さしづめ鎧殻《《もどき》》といった所の物だった。


 しかし出回る量が多すぎるととんでもない大事に繋がる可能性もあるという事で、唯牙とハルは鎧殻もどきの出処を探っていた。


「いい情報だといいんだけどねぇ」


 ハルは車から降りてロングコートを羽織る。今回の相手は顔見知りで信頼できる相手だったので顔を隠すマスクは必要無かった。準備をして車のドアを閉めたその時。


「あらあら〜 これは・・・」


 ハルはスンスンと鼻を鳴らした。


「今日は早く帰りたかったんだけどなぁ」


 血と、鉄と火薬の匂い。


 風に靡くコートを揺らし。ハルは建設現場へと向かった。



 建設現場の中は鉄骨が無機質に遥か上空まで組み上げられている。それはまるで巨大なジャングルジムの様だった。


 そのジャングルジムの中央あたりまで来ると血溜まりの中に何人かの男の死体。その中の一人はハルの知る顔。今夜取引をする筈だった相手。


「ごめんなさいね、多分ご指名は私だわ・・・」


 少し顔を曇らせてハルは俯く。その時。


バガァン!


 激しい衝撃音、咄嗟に音の方を見ると何か大きな物が向かって来ていた。


「ツッ」


 後ろに飛び退いて飛来した物を回避すると。


ドグチャァ!


 それは地面に当たると、潰れて赤い液体と肉片をバラまいた。


 人間の男、死んでいたのか生きていたのかも分からない。


「ひどいわね・・・」


 あまりにも悲惨な光景にハルは顔をしかめる。そして男が飛んできた方向から声が響いた。


「アッハッハッハッハ! 見つけたぞ《《オクト》》!!」


 声の方を見上げる。数10m上の鉄骨、そこには月明かりに照らされた男が一人。短髪の男、タンクトップを着ている筋肉質な上半身。そして男の太腿から下は鋼鉄に覆われていた。それは蝗虫のように逆関節になり、自らの胴体程太い、異様なシルエットを浮かべていた。


「私に何か用かしら? バッタさん?」


 異様な光景にもハルは動じていない様で薄ら笑いで男の見上げた。


「コイツッ!! 忘れたとはいわせねぇぞ!!」


 その言葉に男は激昂し何かを足元から拾いあげた。男だ、周りに散らばっている男達と同じ黒服の。


「死ねオラァ!」


 持ち上げていた男を目の前に放り投げると鉄の足の男は異形の足でそれを蹴り飛ばす。


バガァン!


 さっきと同じ音が響き、《《人間が撃ちだされた》》。


「ちょっと! 貴方ね!」


 受け止める訳にもいかないハルはソレを回避する。そしてまた。


ドグチャア!


 最悪な音と共に、潰れたトマトの様な赤い何かが地面を赤く染める。


「お前のせいで俺の全部はめちゃくちゃなんだよぉ!!!!」


 喉が潰れそうな程の声が夜空まで響く。


「あ〜その声で思い出したわ、貴方あの時の裏切り者君か」


 ハルは思い出した。以前この国の極道と別の国のマフィアで抗争があった事。極道の中から裏切り者が出て身内を全員、金で売った男がいた事を。


「仲間を売った裏切り者なんて恨まれて当然でしょ〜 なに? 逃亡生活でオカシクなった? 番場亮平バンバ リョウヘイクン?」


 そして極道側の穏健派から抗争の調停を唯牙と共に頼まれた事。裏切り者、番場亮平の事を突き止めて報告した事を。


「ちなみに、君が仲間を売って誘き寄せた先でマフィアが一網打尽にする作戦はね〜 私達が介入して死人ゼロで平和に終わらせてあげたわよ」



「知ってるよ!! テメェが居なけりゃあ俺は死んだ事になって金貰って何もかも上手く行く筈だったのによぉお!」


 目を血走らせて両手で髪を掻きむしる。


「それで? 私に復讐する為にそんな足になったわけ?」


 明らかに自分の命を狙っている復讐者を前に、ハルの表情は崩れない。


「ケヒヒッ! 自前のは組の追手に潰されちまって無くなっちまってなぁ〜」


 自嘲気味に笑って男は動きを止める。


「まあそいつらもこの足でそこの奴らみたいにぶっ潰してやったけどなあ!!」


 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャと下品な笑い声をあげる。


「次はお前だぜぇ、気持ちよぉ〜く俺に潰されてスッキリさせてくれやぁ!!」



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