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銃と少女と紅い百合  作者: 彼方リカ
血に染まる百合と私の出会い
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1-2 忘れかけてた普通の時間

「みーちゃんお肌つるつる〜」

 

 少女の背中を流しながら言う。


「くすぐったいですよ」


「お人形さんみた〜い ぷにぷに〜」


2人で体を流し合ってから向い合わせに湯船に浸かる。


 凛々奈はみいなの体を見る。みいなの体は年相応の体で、傷や何か実験の痕の様な物が無いのを確認して少し安心した。


「はぁ〜気持ちーね〜」


「は、はい・・」


「なぁにー? みーちゃん照れてるの〜??」


「え、いや、だって知らない人とお風呂なんて入ったことなくて!」


「ちょっと〜! もう知らない人じゃ無いでしょ〜! それに女の子同士だしー!!」


「そっそうでした、ごめんなさい」


「うっ、そこで謝られると私がとんでもないセクハラ女な気がしてくるわ」


「?」


「いやいや、こっちこそごめんね馴れ馴れしかったね」


「そ、そんなことないです! ちょっと緊張しちゃってて、でも、お姉さんが私の事心配してくれてるのはわかるので・・」


「みーちゃんはいい子だねぇ、こっちおいで〜」


 抱き寄せようと両手を伸ばしてみる。


「そっそれはッ!」


「冗談冗談!照れてるのも可愛いよ、えへへ そろそろ出ようか」


 2人で体を拭いて着替える。みいなが目を覚ましたのが夕方だった為、日も沈んで丁度良い涼しさで心地の良い夜。

 

 みいなの着替えは目を覚ます前に用意してあり、年相応のパジャマを着てもらう。

 凛々奈はいつも自分が来ているジャージを着る。


「みーちゃん、ここおいで」

 

 トントンと化粧台の椅子を叩くと頭にハテナを浮かべながらとてとてとみいなは小動物のように寄ってくる。


椅子に少女を座らせドライヤーのスイッチをいれる。


 櫛とドライヤーを使い優しく少女の髪を乾かす。鏡に映る少女の顔は最初は戸惑っていたようだが段々と落ち着いた表情になっていた。


「はい!OK!いやーみーちゃんの髪キレイだからうっとりしちゃったよ」


「あ、ありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げて言う。


「うん! 私もすぐ乾かしちゃうからさ、その後に夜風も気持ちいいしちょっと散歩しようか」


「えっ!は、はい」


日が落ちて人通りも少なくなった道を2人で歩いていく。


「もう少し行った所に大きな公園があるから、そこの自販機でジュース買って帰ろ!」


「・・・」


 みいなは下を向いたまま黙る。


「どうしたの?」


「お姉さんはどうして私を助けてくれたんですか??」


 不安そうに此方を向く。

 少し言いにくそうにしていたが凛々奈はゆっくりと口を開く。


「みーちゃんがいた所はね子供相手に悪いお薬を使っていろんなことを試す為の所だったの、人間をもっと強くする為なんだって、訳わかんないよね」


 あまり不安にさせない用、できる限り明るく続ける。


「実はさ、私もみーちゃんと同じだったんだ」


「・・?」


「私もみーちゃんと同じようにあいつらに捕まっててさ、センセに助けてもらったんだ、でも私はみーちゃんと違って最初から一人だったからね、寂しさは無かったんだ」


 あまり思い出したくない事らしく、自然と目線が下がる。


「私は生まれた時から親が居なくてさ、ずっとそんな子たちが集まる所で暮らしてたんだけど、あいつらはその施設にお金を出して、都合のいい体質の子供を探してたみたい、だから多分売られちゃったのかな?」


「まあ別にあそこの人たち好きでも嫌いでもなかったからいいんだけどさ、はは」


 乾いた笑い。


「私の時は悪い奴らの所に私以外にも何人か子供がいてさ、初めて大切な友達もそこで出来たんだ、あの子に会えた事だけは・・・」


 少し声が震えている。


「まあ皆センセが来たときに証拠隠滅だー!って施設の奴らに殺されちゃったんだけど。」


「私もその時危なかったんだけどね、死ぬくらいならやってやるー!って死に物狂いで足掻いてね、なんとか助かったんだ」


 凛々奈の頭に浮かぶ記憶、真っ赤な景色。


「それでね、この世界には酷い事を平気で出来る人がいる事、私でもそんな奴らをやっつけられる事を知ってさ」


「センセのお仕事はそんな悪い人達に困らされてる人達の為に戦うお仕事だったから、センセに弟子入りしてやってきてたんだけど」


「私を捕まえてた奴らの研究をまた始めた悪い奴らがいるって知ってね、私みたいに捕まってる子がいると思ったらいてもたってもいられなくて」


「君が無事で良かったよ」


 少女の髪をやさしく撫でる。少女は涙を流しながら聞いていた


「そんな、事が・・・」


 数日前まで自分が酷い目にあっていたのに他の人を思って涙を流せる、優しい子だな。いいご両親と暮らしていたんだろう。


 自分の身の上話をするのは初めてで同じ境遇の子が泣いてくれて、なんだろう別に今更悲しい訳じゃないけど。目頭が熱くなった。


 ふと前をみるといつの間にか公園の近くに来ていたみたいだ。


「長話しちゃったね、着いたよ!行こう」

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