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剣士の国  作者: quo
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来客

リリスは、夜明け前に起きると、まだ寝ているミストラの額を指ではじいた。

唸り声を上げたが起きない。今度は力いっぱい弾いてやった。

さすがに効いたのか、ミストラはゆっくり起き上がった。


リリスが宿を出ると言おうとしたとき、ミストラの平手が頬に入った。

油断していたとはいえ、頬を平手打ちされたリリスはミストラから後ずさった。

そっとしておこう。


リリスは荷物をまとめると、剣の鞘で慎重にミストラを突いて起こしにかかった。

意外にも、今度はすんなり起きた。

ミストラは額を押さえて押さえながら、リリスに何かあったかと聞いてきた。

覚えていないのか。


ガーランドは先に出たそうだ。みんな朝が早い。宿を出るとき、主人が追加料金を払えと言ってきた。

リリスはミストラを一瞥すると大人しく支払った。


ミストラはリリスが距離を取っている感じがする。金の補充をせねば。


町を出ると、リリスはティファニアの屋敷の様子を見てから、エンデオに向かうと言った。

確かに、ローレリア領がどうなっているか気になる。

国の者が見張ってい入るだろうが、顔見知りの我々が行った方が接近しやすい。


そして、拠点に居ればアリアに何をされるか分からない。

ミストラはリリスに同行すると言うと、いいんじゃないかとだけ言った。

ただし、自分で起きろと言われた。


当たり前の話だ。子供ではない。


そんなことより旅支度をしていない。拠点に帰る必要がある。

一旦分かれて合流するのは効率が悪い。アリアが好きにしろと言ったのだ。

連れて行っても構わないだろう。


リリスに拠点の事を言うと剣士が居るかと聞いてきた。

分からないと答えたが、なぜか悪い予感がした。


森の手前でミレイラが前に出て案内を始めた。そこら中に罠があると言うと、リリスは器用に避けながら進んだ。

案内など必要ないようだ。


屋敷が見えてきた。相変わらず辛気臭い外見をしている。

事が終わり次第、爆破した方が良い。


アリアとミストラが屋敷に着くと、剣士の姿があった。

二人しかいない。先遣隊か何かか。


若い剣士がこちらに近づいてくる。そして、何者かと誰何してきた。

「事務員のミストラです。こちらは協力者のリリスです」

若い剣士は胡散臭そうに見ている。敵性勢力の人間なら、罠にかかって宙吊りになっているだろう。

早く上に確認しに行け。


若い剣士は、事務員が拠点に来るわけがない。そして、リリスに対しては部外者である以上、一旦拘束すると言い出した。


かわいそうに。異国の地で果てるとは。


リリスを見ると、大人しくを装備を全部はずしていく。

罠だ。近づいてはいけない。


案の定、近づいてきた剣士は膝に蹴りを入れられ体勢を崩した。

そこに首筋に一撃を打ち込まれ地面に沈んだ。

生きてはいる様だ。リリスは溜め息を突きながら装備を身につけ始めた。


そこにナタリアが現れた。転がっている剣士には目をくれず、毒の提供の礼と検査結果を伝えた。

「それなら心当たりがある。さっき通り抜けてきた森に生えていた草の球根だ」

「狩りをす時に、すり潰して矢じりに塗るそうだ。一撃で仕留めそこなってもいいから動きが鈍くなるそうだ。私は使わないがな」


それを聞いたナタリアはルカを呼ぶと、ルカが何故か鎌と籠を持って現れた。

そして二人は森に消えていった。


一体何があったのか。


ミストラが荷物を取りに屋敷に入ろうとしたときアリアが現れた。

リリスと共同でアウロラを追う。途中でティファニアの達の様子も見てくると言った。

ついでに、さっきのルカの話をすると首を傾げた。アリアも知らないとは。


ミストラはアリアとリリスを残して屋敷に入った。


アリアは「手合わせなんかしないわよ」というと、リリスが「じゃあ斬り合いだ」と返した。


リリスが先手を取ろうと剣の柄に手をかけると、すでに抜かれたアリアの剣が腕を狙ってきていた。

アリアの剣は、その速さを落とすことなく次々とあらゆる角度からリリスを襲う。

リリスは抜刀する間もなく、身をかわしながら下がるのが精一杯だ。


追い詰められる。リリスは抜刀することを止め連撃の隙をみてミストラの背後に飛び出た。

その瞬間、すぐに体を変換したアリアの剣が、リリスの背中を襲う。

リリスは体を回転さながら抜刀すると、間近に迫っていたアリアの剣を受け流した。


流された剣はさらに弧を描いて戻ってくる。腰のナイフで引き抜き、それを受け止めるとアリアの胸元めがけて剣を突き出した。

ナイフで受け止めた剣の重さで姿勢が崩れる。リリスの剣は空を割くだけに終わった。

リリスはそのまま地面に突っ伏すと足払いをした。後ずさって避けるアリアに連続して放って追い詰める。

リリスは地面から回転しながら立ち上がると、アリアを剣とナイフで交互に突き刺し切り裂く。


アリアの幅広の大剣はその腹でナイフの突きを弾き、斬りかかる剣を刃で受け流し打ち弾く。

リリスの剣とナイフは、一向にアリアを捕らえきれない。



ミストラが屋敷から出ると、目の前の光景に唖然とした。

なにやってるんだ。


地面に沈んでいた若い剣士が青い顔で座り込んでいる。

聞けばミストラが屋敷に入って間もなく斬り合いが始まって、一刻も止まっていないそうだ。


荷物をまとめて補給部に資金の補給をお願いしたら、用途を詳しく書けと書類を書かされて、やっとここに来た。

その間、ずっと斬り合っていたのか。そして、まだ終わる止めるつもりは無い様だ。


若い剣士に止めて来いと言うと無理ですと言う。確かにそうだと思う。


唖然としているところにナタリアとルカが帰って来た。

アリアとリリスの斬り合いを横目に屋敷に入ろうとしている。


なんで平気なんだ。


危うく何事もないように屋敷に入るルカを引き留めて止めて来いと言うと、剣より才があるものを探していると言う。

訳が分からない。


ナタリアがため息交じりに仕方ないと言うと、こぶし大の石を幾つか持ってきた。

何をするかと思えば二人に次々に投げはじめた。


二人は、はじめは斬り合いながらも飛んでくる石を避けていたが、そのうち面倒になったのか斬り合いが終わった。

アリアは早速剣をしまい込んで屋敷に戻ろうとする。リリスは邪魔をするなとナタリアに言う。


リリス。さすがに危なかったよ。


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