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ゆっくり休む
夜もふけるといいうのに、外は慌ただしかった。
役人ののる馬車が走り、兵たちが列をなして街へと入っていった。
外出を禁じる命令を叫んで回る兵士たち。
宿屋の主人も何事かと、外の様子をうかがっていた。
街はずれでこの騒ぎ。領主のところで何かがあったのか。
これ以上、外を見てもしょうがない。戦が始まったわけでもなさそうだ。
明日には、いろいろ分かるだろう。
そう思うと、カウンターに戻って酒をちびちび飲み始めた。
明日には何かわかるだろう。
不意に宿の扉がノックされた。
白面の剣士の少女が立っていた。いつもの無表情だったが、何となく疲れた様子だった。
ランプの光のせいか、彼女の顔の傷から血が滲んでいるように見えた。
少女は部屋の鍵を受け取ると、階段を上がって行こうとして立ち止まって言った。
「こんな夜更けに申し訳ございませんが、湯をいただけますか。」
主人は用意するというと、白面の剣士の少女は、階段を上がって行った。