表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士の国  作者: quo
79/144

謁見の日

ミレイラはミストラが部屋を出た後、ベットに横たわった。

自分自身が、ばらばらになっていく感じがした。


母と別れて、エンデオに向かうときに言った、「剣に誓って」とは、何だったのか。


ミレイラの部屋の扉ががノックされた。

開けると執務官が立っている。執務官はミレイラに至急、執務室に来るように言われた。


部屋には、ティファニアとミレイラ、執務官、ペレスが集まった。

テーブルの上に、開けられた手紙が置いてある。

封緘には、太陽と麦の穂がかたどられている。ティファニアの生まれた家の家紋だ。


ティファニアと執務官は、沈黙している。

ミレイラが手紙を取って中身を読むと、震えが止まらなくなった。


そんな馬鹿な。


ティファニアの父から、家に戻るようにと書いてある。

エルンストとは、離縁して。

そして、ミレイラが領主となり、エンデオから摂政が派遣される。


その理由をガレスが謁見に来た際に言う。それを、その場で受け入れよと。


ミレイラはティファニアに嚙みついていった。

「どういう事ですか!」

ティファニアにも分からいと言う。とにかく、早馬を出したと言う。

エルンストにもだ。


執務官は、ティファニアを排除し、傀儡をすることで、ローレイラ領をエンデオ領の支配下におくものと説明した。

ミレイラは、その言葉に「そんなことなど分かっている!」激高した。

父エルンストは、と聞くと、執務官は首を横に振る。


ミレイラは「早く連絡をつけなさい!」と、声を荒げて言った。

そもそも、執務官が理由が分からい事に腹を立て、なじり始めた。

「おやめなさい!」

ティファニアがミレイラをたしなめた。執務官はよくやっていると。


ミレイラは、自分が感情に歯止めが利かなくなっているのを分かっていた。

だが、我慢ならない。

領地を、領民を捨て、母を追いやり、人形になれと。


ミレイラは、ガレスに問いだしてくると、部屋を出てようとした。

ペレスが立ちはだかる。「おやめください」。


静かに言った。その顔は苦渋に満ちている。

子供のころ、騎士道を説いたペレスの顔。いつも凛と騎士の模範を示してきた顔が、感情でゆがんでいる。


ミレイラは、落ち着きを取りもどすと、椅子に腰かけた。

執務官がお茶を出したが、手を出す気になれなかった。

見れば、テーブルにある、他のお茶もそうだった


沈黙の中で、お茶がさめていく。


執務官がガレスに使いを出していると言った。

理由はガレスしか知らない。母への手紙にも書かれていない。

まわりで何かがが、知らないうちに動いている。それは、おそらく悪意そのものだ。


ミレイラは、理由の如何にかかわらず、城に入り徹底抗戦をするべきと言ったが、誰も何も言わない。

執政官は、エンデオとローレイラの力の差は歴然としている。と言った。

そして、理由如何では、中央。王朝に対する反乱とみなされれば、賊軍として、ティファニアの親族にも害が及ぶと。


その通りだ。どうしようもない。


ティファニアが、ガレスを待ちましょうと言うと、扉がノックされた。

執務官が扉を開けると、ガレスに送った使者からの報告だ。


執務官は言った。ガレスが、一週間の後にティファニアに、報告をしに参上すると。

一週間。それはその間に荷物をまとめておけと言うのか。

ミレイラは、血が出るほどに、拳を握りしめた。



アウロラはエンデオの町の隠れ家にいた。

そして、あの老人がいる。


アウロラは、この町にいた間者を消したと、老人に報告した。

ルカ達がローレリアに戻ったと報告したことを伝えた。


老人は、良くやれている。育ての親として誇らしいと言った。


間者は泳がせていたが、この町で軍が動き始めた情報を握った。

要らぬ事をしてくれた。おかげで、私は一生涯、国から追われる身になった。

私の店は、何事も起こっていないように偽るために開けておくが、いずれ失うだろう。


老人は、事が済めば、ここに店を開くといいと言った。

気休めだ。この老人は知っている。もはや国は東国内に人を送り込むことに躊躇しなくなった。


「ここは、当面は大丈夫だ。ルカの動向を報告するのだろう。お行きなさい」

老人は、「愛し子よ」と言うと、部屋を出て行った。


もうランプの灯をともす時間だ。最近はランプを消さないで床につく。

老人は、安住の地を手に入れると言った。

老人の幻想に付き合ってはいられない。どうにか逃げないと。


アウロラは膝を抱えて、座り込んだ。

気の早い家々が、ランプに灯りをともし始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ