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剣士の国  作者: quo
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城下町

ルカは朝の匂いで目を覚ました。

静まり返った森の向こうが、少しだけ白みがかっている。


焚火の前にリリスが座っている。

こちらに気付いて、顔を上げると、湯を沸かしに水を汲みに行った。


ルカは川で顔を洗うと、魚の仕掛けをつくり、川の中に沈めた。

ブーツを脱いで、川の水で足を洗い、良くほぐした。

上着を脱ぐと、傷の状態をみた。化膿していないのを確認すると、傷口が開かないように体を拭いた。


川の水は冷たく、汗ばんだ体を冷やしてくれる。

一気に体中の血液のめぐりが良くなり、頭が覚醒するようだ。


リリスは、水の入った鍋を火にかけると、馬の様子と周辺の見回りに森へ入っていった。

ミレイラは、まだ眠っている。


ルカがミレイラを起こすべきかと思案していると、リリスが帰ってきた。

リリスは、何の迷いもなくミレイラの額を指ではじいた。

思いのほか痛かったらしく、飛び起きた。

額を押さえて、何が起きたの分からないミレイラをみて、リリスは笑いをこらえていた。


ミレイラは川の水の冷たさに震えながら、顔を洗った。

ルカは、あまりの冷たさに、顔だけで済まそうしたミレイラを捕まえて、抵抗するミレイラの靴を脱がせ、川の水で洗った。


ミレイラは小さく悲鳴を上げた。

ルカは「足は出来るだけ清潔にする。休ませておくときは揉んで、筋を柔らかくする。濡れていれば、出来だけ乾かす。」

「敵中でも、安全が確認できれば、少しブーツを脱ぐくらいすると良い」


足は大事。高くても合った物を選ぶ。


ミレイラは、分かったと言うと自分でやり始めた。

ルカが体を拭いてあげようと、上着をはぎ取ろうしすると、激しい抵抗にあったのでやめた。



仕掛けた罠に入った魚を、リリスが手早くさばいて焚火で焼いて食べた。

魚を食べ終わると、人のいた痕跡を消すように焚火の後を片付けた。


いつでも出発出来るようにするのが基本だ。


リリスが地図を広げて、大まかな周辺地域のを把握し、ルカとリリスに、逃走経路や、はぐれてしまった時の集合場所を打ち合わせた。


出発には時間がある。

ルカはミレイラに剣の訓練をしようと言った。


そういえば、そんな約束をしていたな。リリスが、「素振りか型か」と聞くと、「打ち合い」と言って、ルカは自分の剣を取ったので、慌てて止めた。


ミレイラが危ない。


真剣で打ち合う練習なんで、使い手同士がやる事だ。そもそも、ルカに寸止めの概念があるかさえ怪しい。

仕方ないので、リリスが程度の良い木を伐りだした。ナイフで削って、即席の木剣を作って二人に渡した。

リリアはルカに木剣を渡す時、耳元で「お前は絶対に打ち込むな。絶対にだ」と、ルカに言い聞かせた。


リリスは、ミレイラの剣技を見ていなかったで、ちょうどいいと観戦することにした。

二人は向き合うと、木剣を構えて打ち込みを始めた。


ミレイラの剣の型はきれいに整っていて、正確で速い。

さすがは騎士様だ。しかし、ルカの木剣にすら当てられない。

さぞかし驚いているだろう。


太刀筋が読むことが出来れば、剣をあてて隙を作る軌道も読める。当てられないから、相手を崩せずに攻撃が出来ない。そして、体が崩れる。

「天性の剣士」か。初めての相手に一刀から太刀筋を読む。

かわいそうだが、ミレイラが弱いのではない。ルカが強すぎるだけだ。


ミレイラの息が上がってきている。大振りが多くなっている。

影法師を相手にしているようなものだ。


リリスは、ぼんやりと音のない打ち合いを見ながら思った。

これが実戦だったら、ミレイラは何回斬られた。


騎士同士ならいい。しかし、実戦では相手は選べない。私は二刀流、カインも二刀流だがナイフ使いでもある。ガーランドは槍だ。懐に入られたところをみたことが無い。

ミレイラは、人を斬ったことは無いと聞く。


出来得る限り戦いは避けねば。訓練するなら、護身の短剣の方がいいだろう。


打ち合いは、ミレイラの息が上げって終わりとなった。

ミレイラは、息が整わないまま、うなだれている。

ミレイラの剣への自信を、また傷つけたかもしれない。鈍いとはいえ、ルカは酷なことをする。


リリスは、森の中での剣士同士の斬り合いを思い出していた。

ルカは仮面を被っていた。見えていたのか。


リリスはミレイラの敵討ちといって、打ち合いを申し込んだ。

ルカは頷いた。


「私は真剣。ルカは木剣な」


納得がいかない顔のルカとリリスは、正面に向き合った。

リリスは、二本の剣を抜くと、斜めに構えた。ルカが居合の体制に入っる瞬間、リリスは足で砂利をとばして、ルカの目を潰した。


見えていなくても、あんな打ち合いが出来るなら、私の一閃をかわせるはずだ。

リリスは、右手の剣でルカの木剣を弾き、左の剣でルカの首元を狙った。


狙おうとした。


ルカの木剣は弾かれる前に、リリスの太ももをとらえた。

そもそも、目潰しをする前に居合は完成されていた。なんの検証にもならなかった。

リリスは崩れおちて、太ももを抱えて悶絶した。


ミレイラはルカに駆け寄ると、顔の砂利を払ってあげた。

リリスは、「寸止め」と、うめいた。ルカは「したけど」と、言った。


出発の時間になった。


山道を下り、街道に合流すると、三人ともフードを被った。

日よけで、行き交う人々のほとんど被っている。顔を見られないにこしたことは無い。


途中で衛兵とすれ違ったが、誰かを探している様子はない。

何度か止まって、追って来る者がいないか確認しながら、街道を進んだ。


昼になりかけたところで、城下町に着いた。

町の規模は、これまで立ち寄った町の中で、一番の大きさだった。


ミレイラによると、エンデオでは中規模らしい。

辺境で戦いに明け暮れていたリリスは、唖然とするばかりだった。


門前町はエンデオ領内に入る前に一休みする者や、領内での営業申請をめんどくさがる行商人、職探しの傭兵。それらの人を相手にする商店や、宿屋、酒場の人々で賑わっていた。


三人は、早めに宿を探しに町に入った。


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