訪問者
ネリアは暗いうちに目を覚ますと、顔を洗い服を着替えて簡単な朝食をとった。
誰もいない教場で剣を振った。毎日の習慣だ。
心が研ぎ澄ませていく。迷いも何もない、白くて何もない世界で、ただ剣を振るう。
一通り剣を振ったら、汗を払って鎧をきて、一般兵の兵舎に赴いた。従卒が馬の準備をしていた。彼女専用の馬だ。
数人の兵士で兵舎を出ると領地入口の兵士に達に異常はないかと尋ねて回った。いつもの朝の巡回だ。
赴任したころには、夜盗や不審者の話、山賊とみられる集団に襲われたかかった旅人を保護をした話など、日常茶飯事だったが、今では世間話が出るくらい平和だ。
赴任したころは、考えることもなく、兵を集めてそのまま森に駆けだして、山賊狩りをしたものだった。
懐かしささえ覚える。そして、あんなことをして、私になんの見返りがあったか。そうも思った。
不意に当直の兵士が「そういえば、あなたと同じ剣士さんが入られましたね。」といった。
ネリアは一瞬、はっとした表情を浮かべた。すぐに兵士にどんな格好だったか、何か話しかたと矢継ぎ早に尋ねた。
兵士はその勢いに少々、面食らたが冷静に答えた。「古びた長旅用の外套をきていました。黒髪の小柄な女の子で、面は外してもらい、顔を確認しました。歳は若く、右のほほに傷がありました。目的は旅とのことでした。通行証は持っていたので通しました。」
「てっきり、ネリア様をお訪ねになられるものかと。」
ネリアはその剣士の名前を聞いた。別の兵士が兵士は台帳をめくって言った。
「ルカ」
いつもは見ないネリアの表情に兵士は困惑した。それに気づいたネリアは、「同郷かもしれない。久しぶりに会いたいと思う。見かけたら教えてくれ」
そう兵士にいって、踵を返して次の巡回場所に向かった。