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剣士の国  作者: quo
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王の剣

ミレイラはルカの服が気にってしょうがなかった。


よく見るとドレスに見える。

首元と足を見ると、刃物で切り裂いたような切れ目が入っている。

背中は大きくはだけている。


多分、私の古いドレスを無理やり体に合わせたんだ。


アリアと言う人がどんな人間か分からないが、ルカを雑に扱う人間なのは分かった。

仕方がないので城でまだ使えそうな服を探した。


ミレイラは打ち壊された衣装棚から服を引っ張り出した。

男の騎士見習いが着る、白い制服を見つけた。

黒いズボンに白いシャツ。襟と袖に黒い縁取りをして全体を引き締めている。

ルカに着るようにと渡したが、太ももがきつそうだが意外にも体に合っている。


ミレイラは改めてルカを見てみると背が高いことに気付いた。


忘れかけていたあの背中。一瞬で十人以上の盗賊を斬った時のルカ。

彼女は私が追い求める真の剣士。


ぼんやりとルカを見つめていると、ルカが言った。

「誰か来る。剣を持って」

そう言うと外が騒がしくなっている。


ルカが庭に出る。ティファニアも後をついて行く。


出るとルカの剣を預かっていた剣士が言った。

「憲兵でも近衛兵でもない。たが、確実に強そうなのが向かってきている」

ルカは剣士から差し出された剣をとると、そのまま門外に向かった。


ミレイラも続けて向かおうとすると、ロペスが止めに入った。

危ないから中に入れと言う。

ミレイラは凛とした声で言った。

「ここは我が領土だ。遅れをとるな」


ペレスと他に騎士たちも装備を整えミレイラに続いた。


ペレスは幼い頃のミレイラを思い出していた。

母親の反対を押し切り騎士になった。内心、あの頃は、ただの遊びに付き合っていてた。

いつかは、その熱も下がるだろうと思っていた。


しかし、雨に日にルカとカインと出会った頃から変わり始めていた。

今のミレイラは立派な騎士であり領主の娘だと言える。

そして、大騎士エルンストと向き合う日が必ず来る。そのとき、ローレリアの騎士は何を思うのか。


ペレスは運命と言うものは残酷だと思った。



外に出ると剣士達が整列を始めている。

賓客を迎え入れるような隊列だが、皆が剣に手をかけている。


ルカと女性、隊長らしき剣士が二人、何事か話している。


「あら。初めまして。ローレリアの領主様」

「肋骨が折れたんだって?安静が第一よ」

彼女はアリアと名乗った。ルカに切り裂いたドレスを着せた人だ。

剣士の二人は礼儀正しくそれぞれ名乗った。


ルカによると、こちらに向かっているのはルカの国で政治を預かる人らしい。

王の側近と言うことになる。


そんな人がどうしてここに来るのだろうか。

ミレイラは不安になった。

見渡すと剣士達も落ち着きがない。


アリアが言った。

「おいでなすったよ」



金の文様に縁どられた白い仮面をした者がいる。

長い黒髪を後ろに束ねている。

後ろには剣士が四人並んでいる。


アリアが後ろの剣士についてイーゼルに何者かと聞いた。

イーゼルは、同じ序列の中で最も強い剣士だと言う。それが一番目から四番目まで居るといった。

アリアが勝てるかと言うと、千回やって一回は勝てると言った。


イーゼルがアリアに、仮面の正体は何だと言いうと知り合いだと言った。


仮面の女が馬上から言った。

「ローレリアの制圧、ご苦労であった。後続の軍に引継ぎ後退せよ」

そして、仮面の女はミレイラの方をみて言った。

「その女は国で預かる。護送の準備をせよ」


騎士団がミレイラを守ろうと動くと、剣士が騎士たち取り囲んだ。


仮面の女はアリアに言った。

「何を企んでいるか知らんが、今回は止めておけ」

「反逆罪で斬り捨てるぞ」


アリアは言った。

「あんたも王城をうろついて何を企んでいるの」

「怪しくて仕方ないんだけど」

アリアは剣に手をかける。だが、仮面の女も後ろの剣士も何もしない。


取るに足らんと言う事が。


アリアと仮面の女とにらみ合っていると、ミレイラが言った。

「ここはローレイラ領です。西の国の方。遠路はるばるありがとうございます。」

「我が領内に入った賊を討つのに助力していただき感謝いたします」

「そちらの王への感謝の書状と礼の品は後日、特使に届けさせます」


仮面の女は馬を降りるとミレイラに言った。

「我が王は助けたとは考えていない」

「執政官を派遣する。貴女は我が国に役目が終わるまで住まわれよ」

そして、騎士たちを見ると、

「その者達は必要ない。斬り捨てよ」


騎士は抜刀して、仮面の女に斬りかかろうとした。


「お止めなさい」

ミレイラが言った。

「貴国へまいります。しかし、この者共、そして領民に危害を加えないと約束してください」

仮面の女は騎士たちを見ながら言った。

「勘違いをされては困る。貴女に約束する事などない」


確かにその通りだ。すべては西の国があっての事。

自らでローレイラを守る事は叶わなかった。

私が西の国に行くことは、ただ東国への警告にしか過ぎない。


ミレイラは血が滲むほど唇をかみしめた。


白い仮面の女はミレイラを見降ろしている。


「間者の女がここで何をしている」

ルカが白い仮面の女に歩み寄ってくる。


ミレイラの前に出ると、

「ミレイラはここいる。ここで生まれたからだ」

「ここに東国の兵が来る。守りが薄い。後続の軍を前に出してほしい」


皆が唖然とした。ルカは平然としている。


白い仮面の女は笑った。

「いつも思っていたよ。面白い娘だと」

「王から召還の命が来ている。剣を捨てて従え」

「見よ。この惨状を。そしてこれより起こる事を想像せよ。皆、お前が関わっている」

「国に返れ。そして残りの命が尽きるまで牢獄の中で過ごせ」


ルカは静かに言った。

「そうだと思う。だから王に伝えろ。始末は私が付ける」

「そして、お前は軍をおいて国に返れ」


そう言って、また仮面の女に歩み寄る。

「いいだろう。私は王の剣。王に物申すなら私を斬って見せよ」


ルカは歩み寄るのを止めた。

二人は互いに剣の柄に手を添えた。

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