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剣士の国  作者: quo
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騎士とミレイラ

何かが弾ける音がする。


ミレイラはそれを貴賓室で聞いた。

何が起こっている。


まさか騎士たちが。いや違う。騎士たちは火薬など使わない。

音は庭のから聞こえる

ルカ達だ。


呆然としていると衛兵がなだれ込んできた。

後ろには口を塞がれ、首にナイフを突きつけられている使用人が居る。

使用人は抵抗しようともがくが、衛兵はさらに体を締め付ける。


「お止めなさい」


ミレイラが凛とた声で言うと衛兵はそれ以上、使用人を締め付けるのを止め、使用人ももがくのを止めた。

衛兵の一人がミレイラに近寄り、申し訳ございませんと言いながら、手に縄を掛けた。

使用人はその姿に涙している。


衛兵たちは無言でミレイラを取り囲むと、広間へと向かった。

使用人は突き飛ばされるように部屋に入れられた。

彼女は主人の前で何もできずにいた自分を恥じて声を上げることなく泣いた。


ミレイラが向かう先で閃光と共に耳をつんざくほどの音がした。

数人の男たちがなだれ込む足音がした。


衛兵の一人が一瞬怯んだが、

「あいつに任せておけ」

と言って、広間を迂回して裏口へと向かった。


ミレイラは扉の隙間から、見られない甲冑を着た剣士達と、一人の男の背を見た。

男の姿を見たミレイラに悪寒が走る。

あの集会場の男と同じ感覚がする。


衛兵はその光景を塞ぐように歩み寄ると、

「お早く願います」と言って、ミレイラを囲んだまま屋敷の裏手に向かった。



リリスは剣士達が広間から引き上げるのを確認すると、動ける者を伴って出城の方へ向かった。

前から女が走ってくる。リリスの側に付いていた間者が、仲間であることを告げる。


女はリリスに、ミレイラが屋敷から連れ出され、出城へ向かって馬を走らせたと言った。

「出城から少数の一団が、こちらに向かっております」

「こちらで迎え撃ちますが、長くは引き留められません」


遅かったか。


出城から襲撃を察知した連中が応援をだした。

配置したこちらの者は、攻城戦用の爆薬を準備している。

しかも、挟撃される位置にいる。


爆薬を使いたいがミレイラがいる以上、大がかりな攻撃は出来ない。

矢で一人ずつ射抜くか。


リリスたちは衛兵の残していった馬を駆ってミレイラ達を追った。



騎士達は屋敷から聞こえる破裂音と、見張りの衛兵が騒ぎ立てる様子に気付いた。

屋敷が襲われている。ミレイラ様はご無事か。

換気用の小さな窓からでしか、外の様子を覗えない。


しかし、この瞬間こそ好機。ペレスは雄叫びを上げると、扉に体当たりを始めた。

それに呼応して、他の部屋の騎士たちも体当たりを始めた。

詰め所は嵐の中のあばら家のように大きく揺れ始めた。


衛兵は扉から飛びのき恐れおののいたが、鉄板で補強してある扉が体当たり程度で開くはずはないと気を取り戻した。

兵たちを集め、見張りを残したら部隊を編成せねば。


衛兵が振り返ると、そばに居たはずの仲間が倒れている。

そして見知らぬ顔の衛兵がぶつかって来た。

わき腹に激痛が走った。見ると甲冑の隙間から短剣が深々と刺さっている。

それは薄く研ぎ澄ませれ、刀身に見下ろした自らの顔が映り込んでいる。


男は部屋の鍵は何処だと言いながら、短剣に徐々に力を入れ始めた。

恐怖に震えながら衛兵が腰につけた小さな道具箱から鍵の束を取り出した。

男はそれを手に取ると、わき腹から短剣を引き抜き衛兵の首をかき切った。


男はペレスの部屋の鍵を開けた

部屋をでたペレスの肩は腫れあがり、血が流れだしている。


男がペレスに鍵を投げて渡すと、

「屋敷からミレイラ達が出城に向かっている。出城から応援が出ている」

「我らは中間にいる。出城からの応援は我らが足止めをする」

そう言って立ち去った。


ミレイラ様が出城に入れば、救出は困難になる。

急がねば。ペレスは鍵束で次々と部屋を開けてゆく。


「みな武器を取れ!ミレイラ様を救出する」

解放された騎士団はペレスの声に呼応して雄叫びを上げだ。

残された衛兵は気圧されて、剣を捨てて逃げ出していった。


装備品は使用人の情報通りの場所に合った。

謀反を起こしてローレリアを叩く理由の為に置かれていたものだ。

武装していても鎮圧出来ると思っていたのだろう。


騎士達は剣を取ると、ここぞとばかりに衛兵を斬り倒して外に躍り出た。

見れば屋敷から、わずかだが煙が上がっている。


ペレスは辺りを見渡したが、ミレイラを連れ出したはずの衛兵の集団が見当たらない。

すでに城に入ったか。

しかし、城からは何も聞こえない。

さっきの男が足止めしているなら、何か聞こえてくるはずだ。


ペレスは城への迂回路を思い出した。

騎士の一人が馬は十頭しかいないと報告してきた。


ペレスは騎乗すると残りの九人を選抜して言った。

「我らはミレイラ様を救出に向かう。おそらくは遠回りだが、森を抜ける迂回路を進んでいるはずだ」

「我々を助けてくれた者たちが出城付近で敵の応援を食い止めに入っている」

「残りの者たちは、その応援に向かってくれ」


そう言うと、ペレス達十騎は森を迂回する道の出口に向かった。


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